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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第三章 エメラルドラビリンス
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第三話 Floor B1


 アンナにより無理矢理ダンジョンに連れてこられた三人。

 しかしアディンとジャスミンはほとんど迷うこと無しに挑むことを決めた。

 最後まで反対をしていたカイトも二人の言葉に溜飲を下げ、それどころか前向きに攻略へ歩き出す。

 ダンジョンで手に入れられる封器について話していたところアディンとジャスミンが言い合いになり、その声を聞き付けたモンスターが彼らの前に立ち塞がった。

 そのモンスターを連携により難なく沈め、それからも襲い掛かってくる怪物達を払い除け第一層を攻略した。

 そして現在地は地下一階、第二層である。

 

「右三体援護入る!」

「左二体殺った!、正面一体、あと蛙!」

「任せとけ!」

 

 苦戦していたアディンが相手をする三体のモンスターをカイトが倒し、一人で立ち回っていたジャスミンはそのまま二体を滅ぼし、カイトの援護で手の空いたアディンが魔法を放たんとするモンスターと毒を吐きかける蛙を強化魔法を追加し斬り殺した。

 生命活動を停止させた計七体のモンスターはその肉体をマナと化し、三人を残して消え去る。

 

残留物(ドロップアイテム)無しか、さっきから運ないな」

「出ても専用の魔道具がないから持ち帰れない、ガッカリするよりマシだと思うけど」

「てか誰も残すような倒し方してないじゃない」

 

 ジャスミンの言う倒し方とはモンスターの体の一部分を破壊してから命を刈り取るというものである。微細な欠片はすぐにダンジョンに吸収されてしまうため、その目的を持って戦っていなければ何も残らないのだ。

 

「それにしても順調だな、入って一時間ぐらいしか経ってないだろう?」

「多分な、まだ一つしか降りてないし妥当だろ」

「あとどれくらいあるんだろうねー」

「さあな、大体のモンスターが楽に狩れてた。だがもっと強いやつが下にいるんだろうな」

「アディンの言うとおりだ、どうせ嫌でも下に行くしかないんだ、気を引き締めていくぞ」

「そうね、さっさと攻略して三人を驚かせてやりましょ!」

 

 そうして次の獲物を探して走っていると、三人はようやくモンスターの姿を見つけた。

 

「いっち番乗りっ!」

 

 敏捷にものを言わせて突貫するジャスミン、二人を置いてモンスターの前に躍り出た少女は一閃、一体の怪物の首を斬り飛ばす。

 遅れて飛翔する三振りの片手剣。蟷螂(かまきり)型のモンスターはそれを両手の鎌で防ぐも、残る一振りに胸部を貫かれる。

 最後に黒刀が閃いた。袈裟に振り抜き、『小鬼(ゴブリン)』が一瞬にして両断される。

 一気に三体のモンスターを葬った三人が残る二体に対峙するも数瞬、ジャスミンとカイトの放った魔法が容易く絶命させる。

 

「こんなもんね、手応えないわ」

「そりゃあまだカテゴリー Ⅰ しか相手にしてないからな。駆け出しが勝てるモンスターに手こずってたらアンナにどやされる」

「俺も同感かな、いっそのことアディンの熟練度稼ぎにモンスター同士で戦わせたらどうだ?」

 

 ポンっとアディンが手を叩く。

 その手があったと言わんばかりの反応だ。

 抜けているのか何も考えていないのかカイトは苦笑せざるを得ない。

 

「【召喚──『鬼人(オーガ)』『狼人(ウォーウルフ)』『悪魔(マッドデヴィル)』】」

 

 手を(かざ)した先に展開する無色の魔法円からマナが溢れだす。

 棍棒を手にし二つの角が生えた緑の体躯の大鬼。

 片手剣を握る頭狼体人。

 紫の肌に意地汚い相貌で片手斧をクルクルと回す悪魔。

 この三体が三人の前にそれぞれ現れた。

 

「俺達についてこい、敵を見つけ次第殺れ」

 

 簡潔な命令、それにコクリとモンスター達が頷く。

 アディン達が歩き出すのにつれて後ろからモンスター三体も連なる。

 迷宮の灯りに照らされ、六の影が洞窟を進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 ダンジョンを進行していく六の影。

 彼らが目指すのは次の階層へと続く階段。

 現階層は地下一階。

 出現するモンスターのカテゴリーは最弱の Ⅰ 。

 アディン達の前に現れるモンスターはその尽くが命を散らし、彼らを立ち止まらせる存在が視界に入ることは無い。

 足早に通路を抜ける彼らは早々に次の階段へと続く大空間へと到達する。

 一層、つまり零階のときと同じ造りの場所である。

 ここは次の階層に至るための階段がある場所へ行く者の進行を妨げる、階層主の部屋。

 辿り着いた彼らの前に立ち塞がるのは一匹の狼。

 男性平均身長の二倍ほどの背丈で、鋭い爪と牙が怪しく光る。

 モフモフとは言いがたい硬質な感触を思わせる血色の体毛は下手な鱗よりも鋭利さを見せ、しなやかで密度の高い筋が這う四肢は妬ましいほど逞しい。

 その存在を認めた瞬間、三体のモンスターが立ち向かう。

 『鬼人(オーガ)』は棍棒を勢いに乗せ突き出す。

 『狼人(ウォーウルフ)』は跳躍し剣を振り上げる。

 『悪魔(マッドデヴィル)』は片手に持つ斧を回転させつつ投げる。

 三者三様、これまでのモンスターを容易く屠ってきた彼らは、カテゴリーが自分達より下の彼の狼を一瞬で沈められると確信していた。

 その背後に控える三人も、楽勝とはいかなくとも勝つことはできるだろうと踏み、一部始終を達観していた。

 だがしかし、鬼人は棍棒ごと頭蓋骨を砕かれ、狼人は剣ごと切り裂かれ、斧を食んだ口により投げ返された斧が悪魔の頭部に深くめり込んだ。

 自身が瞬殺した三体のモンスターがその身をマナへと化す様子を冷めた瞳で狼は見据えている。

 そして、その瞳が前方で佇む三人へと向けられた。

 どう料理してやろう、そう狼が思考を巡らせた次の瞬間、狼は気付かぬままに肉体を裂かれていた。

 驚愕で思考が追い付かない中、一人の雄がこちらに手の平を向けているのが視界に入る。

 そして背中、後ろ左脚に斬撃を食らい、頭部を狙った刀の一撃をギリギリで躱した。

 続く三振りの剣の攻撃に跳躍、しかし前足と腹部に掠らせてしまう

 

「【ウエポンバースト】」

 

 そして爆発。

 傷口に炎が流れ込み止血されるも、深いダメージを負った。

 

「【向日葵(サンフラワー)】」

「【我が身を喰らえ】」

 

 顔面に強烈な光が照射される。

 それは目を焼くのと同時に火傷まで生じさせた。

 怯んだ狼は後ろ脚を落とされる。

 満身創痍。

 ようやく回復した片目を開き、戦況を確認しようとするも──

 

「止めだ」

 

 ──視認できたのは一振りの大剣が脳天を貫く寸前の光景だった。

 意識が薄れていく命の刻限の中、狼は自身の無力を嘆き続けた。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

「弱かったわね」

 

 一戦を終え、ジャスミンはそう口にした。

 

「流石に階層主はカテゴリー Ⅱ の召喚じゃ無理か」

「あんまり知能は高くないように見えたから、カテゴリーを上げなくてもいけそうな気もしたが?」

「いや、多分無理だな。ダンジョン専用の強化かは分からないがカテゴリー Ⅰ にしちゃ強かった。普通三体も上位モンスターを殺れないだろ」

「私達がアディンの召喚モンスターに苦戦するかって感じだし、それと同じじゃないの?」

「ジャスミンのに一理あると思うぞ、俺は。経験とかそういう段階を一切積まない生まれたてって言えばカイトにも分かるだろ?」

「なるほどな、スキルを一切持ってない歴戦の戦士とスキルだけが取り柄の新人ならどちらが勝つか聞くまでもないのと同じか」

「それはともかく」

「ええ」

 

 一頻り考察を述べた三人は、同様に奥を見据える。

 

「次の階層だ、カテゴリーは雑魚でも Ⅱ になる。気を抜くなよ」

「まだまだ私の敵じゃないわ」

「傲るなってアディンが言ったばかりだろ……」

 

 次へと進まんとする二人は一度は収めていた得物を引き抜き歩き出し、武器を操る少年はいつでも行使できるようにと気を引き締める。

 これまでの容易な進行とは変わって汗を流すだろう、と眼下に伸びる階段を見据えながらアディンは思った。

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