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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第七章 シャーリア特別学術区域
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第四話 シルフ


 アディンを一人学長室に残して、私達は訓練場に来ていた。

 手を振り返してくれたの、嬉しかったなぁ。

 

「聞いてるのかしら、リンカ」

「え?、あ、ごめん、聞いてなかった…」

 

 ダメダメ。

 ちゃんと人の話は聞かないと。

 

「はぁ…、じゃあもう一回説明するわ。ここは仮想空間の中で訓練できる魔道具が置いてあるの。その中で成長は出来ないけど、現在の実力を忠実に再現してくれるわ。リンカとリアはまだホームに帰ってないから説明してあげたのに、聞かないってのはどういう了見かしら」

「ごめん…」

 

 ちょっと言い過ぎだと思うけど、悪いのは私。

 文句を言う筋合いはないよね。

 

「怪我をしても仮想空間ですので元通りとなりす。ですので今からアンナさんと模擬戦でもしようかという話でして」

 

 模擬戦。

 楽しそう。

 アンナは派手だしミシディア先生がどんな魔法を使うのか気になるなぁ。

 

「まずは私について少し知っておいてもらいましょう。その方が楽しめると思います。アンナさんは既に私がどんなことを出来るのかご存知ですよ。あれから月日が経っていますので昔の私のままではないですが」

「それはどうかしら」

 

 挑戦的な物言いは誰にでも一緒なんだね、アンナ……

 

「まず私の魔力は炎です。定型を持たない炎属性の魔力なので火に関することならば何でも出来ます」

 

 それくらいなら私も知ってるよ。

 魔力には剣とか盾、特定の属性の形をしたものとかがあるんだよね。例えば雷の形の炎とか、剣の形をした水とか、波の形をした風とか。

 概念系だと全部できるけど、定型よりはそのものの威力が落ちるんだよね。

 

「次に霊器持ちですね、精霊はサラマンダーです。ジャスミンさんがこちらをチラチラ見ていたのは何か感じていたからですよね?」

「ええ…、同じ精霊に属する人なら分かるよって言われてたけど……」

「霊器持ち同士も多少感じ取れますよ。意識しなければ殆どわかりませんが、シンパシーというものがあるのでしょう」

 

 精霊かー、会ってみたいなー。

 みんなちっちゃい女の子だっていうし、抱きしめてみたい。そんなことしたら魔法で懲らしめられちゃうかもだけど。

 

「勿論霊装まで使えますよ、余り変化はありませんが」

「変化が無い?」

 

 ジャスミンは髪は伸びるし肌は白くなるし金色だもんね。

 

「ほら、先生髪の毛オレンジでしょ?、サラマンダーは朱色なのよ。それに髪はおんなじぐらいの長さだし、元から色は少し褐色だからサラマンダーの変色にもあんまり大差がないのよ」

「いえ、彼女の口振りからするに同化が進んでいるのでしょう。その内戻れなくなるかもしれませんね。その場合更に高い段階へ辿り着きますが」

 

 戻れなくなるって、ジャスミンはどうなるの?

 霊装状態も可愛いけど、やっぱりジャスミンは今のジャスミンが良いと思う。別人になっても変わるつもりはないけど、戸惑っちゃうな。

 

「嫌よ、何か無いの?」

「それは俺に任せてくれ」

「アディン!」

 

 アディンだ!

 何の話してたのかな?

 

「おお…、いきなりなんだ?」

 

 と、飛びついちゃったけど……、うん、嫌な顔はしてないね。

 良かった……

 

「ち、チンチクリンじゃないですよ…!」

 

 誰も言ってない。

 何が琴線に触れたのかな?

 

「先生もう三○越えてるのに一人なのよ、だから焦っ___」

「余計なことは言わないでください!」

「見た目十代なんだら問題___」

「チンチクリンじゃないですぅ!!」

 

 あ、これマスコットだ。

 多分、そう感じた私はおかしくないと思う。

 あと世間に伝わるロリコンと噂されるのが怖くて手が出せないんだと思う、男の人達は。

 『小人族(ピクシー)』としかお付き合いできない気が……

 

「チンチクリンじゃないもん!!」

 

 拗ねた。

 可愛い。

 あ、だめ、欲求が……

 

「可愛い!!」

 

 結局、決壊してしまった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 リンカが嫌がるミシディア先生をこねくり回すのを、俺が拳骨をお見舞いしたところで正気に戻った。

 えへえへと顔をふにゃふにゃにしたリンカは可愛かったです、まる。

 

「き、気を取り直して話を戻しましょう。アディン・ネルヴァさん、任せてくれ、とはどういう意味ですか?」

「こいうことだよ」

 

 手の平を地面に翳し翡翠の魔法円を展開。

 マナを注ぎ、魔力のパスを彼方と繋ぐ。

 向こうと魔力の波長を合わせ、魔法円で空間を短縮する。

 そして___

 

「【来たれ風の精霊、汝が金風は尽くを払い尽くを守り尽くを癒す】___【召喚__『シルフ』】!」

 

 立ち上る翡翠の魔力光と金の風。

 マナが成形していくのは小さい女の子。

 魔法円の中心に姿を現したのは、長い金髪を背中に流し丸い金の瞳を輝かせ、金の風を纏う幼女だった。

 

「よ、シルフ」

「いきなり呼び出すなんてどういうこと?、アンタ何様?、ワタシを誰だと思ってんの?、シルフ様よ!、敬いなさい!」

 

 

 偉そうにもほどがある美幼女が、ここに現界した。

 

 

「無い胸張ってどうすんだよ」

「チンチクリンじゃないわ!」

「チンチクリンじゃありません!」

「私はちょっとぐらいあるわよ!」

「私も無いとは聞き捨てならない」

 

 余計に三人が反応する。

 いや、お前らについては何も言ってないだろうが…

 

「外見的に貶すのは、どうかと思うな」

「俺はある方がいい」

「やったっ」

「私のプロポーションは誰にも負けないわ」

「お前それ競うもんじゃねぇよ……」

「はっはっはっ、貧乳どもよこれを見るがいいぃ!」

 

 リアは火に油を注ぐな。

 

「収拾つかないからここまでな、今のは俺が悪かった。で、シルフ、同化し過ぎるのを止めてくれ」

「フン!」

 

 こ、このガキがぁ……!

 

「レディ、彼の話を聞いてはくれないだろうか。彼も反省はしているんだ」

「何このイケメンちょータイプ」

 

 こいつっ…!

 

「あ、アンタがそう言うなら、き、聞いてやってもいいわ!」

 

 こいつホント何様だよ。

 

「………ジャスミンの同化を緩めてやってくれ、あいつも姿が変わるのは嫌だってよ」

「いいわよ?、でも力が弱くなるけど、それでもいいの?」

 

 弱くなる、か。

 

「嘘吐くな、できるだろ」

「ゲッ…」

 

 そこまで分かりやすいならいっそ清々しいな……

 

「力そのまま見た目元、しょうがないわね」

「メニューみたいに言うなや」

「でもね?、好きな娘には一緒になって欲しいと思わない?」

「それがお前そのままにならないんだったらな。精霊に人間の価値観を理解しろとは言わん。ただ無視するのは止めてやってくれ」

「ええ、ジャスミンの求めることだもの。力が欲しいなら力を貸す、見た目を変えたくないのなら変えない。霊装のときは最大限力を発揮するのに必要だけど、ちゃんと戻すわ。本当は見た目ごと変えた方がずっと力は使えるんだけど」

 

 それはわかってる。

 お前が善意でやってることもな。

 

「要件は終わりだ。気が済んだら呼んでくれ」

 

 ジャスミンと話たいこともあるだろ?

 

「礼は言わないわ」

 

 素直じゃねえな。

 ジャスミンの所へいくシルフ。

 二人が少し離れたところで、俺はみんなに向き直した。

 

「話は終わった、…………固まってどうしたんだ?」

 

 口開いて。

 だらしないぞ。

 

「お前にとっては当たり前、か……」

「ん?」

「いやなんでもない」

 

 どうしたんだ?

 

「で、では少し意味がわかりませんでしたが、アンナさん、模擬戦をしましょう」

「何でもあり、でいいわよね?」

「勿論、そうでないと面白くありませんから」

 

 チンチクリンなのに、好戦的なんだな。

 見た目とは違うな。

 

「戦闘不能及び絶命で決着としましょう。お互い、全力で戦いましょう」

「当たり前よ」

 

 いまので被害妄想確定だな。

 俺がわざわざチンチクリンって考えたのに突っ込まないんだからよ。

 

「炎なんて、すぐに消火してあげるわ」

「蒸発しないといいですね」

 

 それと、魔導師って何でこんな挑発が好きなんだろうな。

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