破談工作…?その1
まずひとつ。このお見合い、問題があります。僕の方からお断りすることはできません。
お恥ずかしながら、父上に逆らえないのです。だから相手から断ってもらう必要があります。この場合だとルチアさんですね。
問題はルチアさんが三歳であることです。どうしろっていうんですか三歳ですよ三歳。誰ですかもうすぐ四歳だからって言った人。三歳でも四歳でもアウトですよ。
そこで僕は、ボイスレコーダーで記録して、なんかそれっぽいこと言わせればいいのではないかという結論に至りました。最悪編集します。
誰が苦言を呈しても繰り返される父上の無茶振りのせいでボイスレコーダー持ち歩くようになったのが、こんなところで役に立つとは思いませんでした。
え?そんなことしていいのかって?三歳と見合いさせられている現状以上にヤバいことを挙げてから言ってください。外交問題?見合いが成立したらしたで大問題なんですよ!!
「一緒に遊びましょう。僕の言葉を真似してください」
ボイスレコーダーをひっそりと用意しながらそう言えば、ルチアさんは目をキラキラさせてこちらを見ています。エメラルドにも負けないくらい綺麗な瞳だ…じゃなくて!
頭をブンブン振りながら邪な考えを振り払います。見合い相手であることを抜きにして考えれば、ルチアさんって可愛いんですよね。ぱっちりしたタレ目も長いまつ毛も、宝石みたいな緑の瞳もとても綺麗だ。大きくなったら美人になりそう。
焦げ茶色の髪が際立つ白い肌にシュッとした頬…あれ、三歳ってこんなに痩せてたっけ?赤ちゃんとかだともっとふっくらしているイメージがありますが……僕は末っ子なので、身近に赤ちゃんがおらずわからないのです。姉上も兄上たちも皆独身ですし。
とにかく、何もわかっていない子を利用している罪悪感はありますが仕方ない。きっとわかってくれるでしょう……十年後くらいに。
ニコリと笑顔を貼り付けて、僕は彼女と向かい合います。残念ですが、遊びだと思っているのは貴女だけです。僕は真剣です。
そうです。真剣に破談にしたいのです。何言ってるんだろう僕。
「行きますよ?」
「うん!」
「『私はあなたが嫌いです』」
「?おにいちゃすきー」
「あああああ」
ダメだった。ルチアさんのニッコニコの笑顔に対し、僕は頭を抱えてうなだれることしかできなかった。
敗因は僕が好かれていたことでした。何これ。
その1、失敗。




