飯食ってる場合じゃねえ!
「待って待って待って待って!!」
「むー!」
なんとか食事会が始まったのは良いのですが、なぜ僕は花瓶の水を飲もうとする少女を止めているのでしょうか?
・ ・ ・
食事会の準備が終わり、食前酒が運ばれてきて…そう、つつがなく食事会がはじまる……はずでした。
ルチアさんって、すーっごいよく食べるんですね。大人一人分を容易に食べ進めています。ガツガツムシャムシャと音が聞こえてきそうな食べっぷりですが、その割にテーブルや口元は綺麗なんですよね…これが王族クオリティ?
あ、フィンガーボウルの水を飲み干した。僕も昔飲んだことあるな。
こういうときどうしたらいいんだっけ…道徳の教科書とかになかったっけ……えーっと確か真似をすればいいんだったっけ……?
「待って待って待って待って!!」
「むー!」
そんなこと考えていたら、なんだか止めざるを得ない状況になってしまいました。
ええそうです。彼女が花瓶の水を飲もうとしていたからです。流れるように飲もうとしないでください!それは花が飲む用の水です!!
おい使用人今だろ今動けよ!!なんで僕が止めてるんだ!!!そこの侍女も、ヒソヒソしてないでそちらの国のお姫様止めて?!
「スミマセン、お水ください」
「かしこまりました」
そう伝えるとようやく侍女が動いて水を追加してくれた…僕の分だけ。
違うな〜。目の前の惨状わからないかな〜。大樹の王国ってボケ倒したら無視するルールでもあるの?ねえ。
え、いや怒ってないです。ただ現状が理解できないだけです。
「爺や」
「坊ちゃま…」
「水。食事中の水の管理もやって。全部。今すぐ」
「かしこまりました」
爺やだけは僕の意図を汲んでくれた。爺やはルチアさんの分も水を追加してくれたあとに、侍女と話し合ってくれている。何なら爺やもだいぶ困惑してたな……。
あとは花瓶から小さな手を離さない彼女をどうにかするだけですね。待って力が、力が強い…!
「ルチアさん?花瓶の水は花が飲む用の水です」
「そーなの?」
「そうなんです。僕らは水が飲みたくなったら爺やに頼みましょう」
「……」
ルチアさんは宝石みたいな緑の瞳を見開きながら、何やら考えていらっしゃる様子。どうしたんだ…?
「やー!のむー!」
「駄目なんですってばー!!」
「のむー!!!」
くそっ!力が強い!子どもって案外力強い!!
「お花のお水を勝手に取ったら駄目です!勝手に取ったらお花が悲しみます!」
「…ダメなの?」
「駄目ですよ。ルチアさんも勝手にお水を取られたら困りますよね?」
「わかったー。おはなさんごめんなさーい」
そう言ったら唇を尖らせたルチアさんがようやく手を離してくれた。助かった……。
その後は何もなく食事会を終わらせることができましたが、どっと疲れてしまい味については何も覚えていません……。
ああ…せっかくの大樹の王国の料理が……。




