異文化交流…?
とりあえず挨拶と自己紹介をしなければ何もはじまりません。僕と彼女…侍女にはルチア様と呼ばれていた小さな子が向かい合います。
「彼女はルチア様。大樹の王国の王弟女殿下です」
王弟殿下の、娘さん?王弟って今18歳とかじゃありませんでしたか?養子?
というか王弟殿下って娘いたんですね。知らなかった。
確か大樹の王国は、現国王が即位するにあたってそれはそれは問題が多かったとか何とか。王は七人兄弟でしたが、今いらっしゃるのは長男の国王陛下と末っ子だった王弟殿下のお二人のみ。だから国王陛下と王弟殿下は親子くらいの年の差があったはずです。
そんなことを考えていれば、目の前の少女がペコリと礼をする。幼い子どもがするには丁寧で、でも淑女のマナーには染まりきってはいないお辞儀だった。
真っ白のフリルドレスに合わせたパンプスも大きなリボンも焦げ茶色の編み込まれた髪型も、お姫様のように着飾られている。でも、着飾られてはいるけれど、どう見ても普通の女の子だ。
「こちらがマイク様。朝露の国の第三王子殿下です」
とりあえず僕も爺やの紹介に合わせて礼をする。僕も僕で見合い用に爺やが準備してくれた正装を身にまとっている。青のコートにフリルタイを合わせ、白いズボンに同じく白いブーツ。世の中の多くの方が想像なさる王子様の格好をしています。
「よろしくお願いします…王弟女殿下」
「?おーていじょ?」
畏まった挨拶は、彼女には理解できなかったようだ。それはそうか。僕が悪いな。だから僕はこてんと首をかしげた彼女に言い直すことにした。
「……いえ…ルチア様、よろしくお願いします」
「よろしくおねがいします!マイクおにいちゃ!」
「ルチア様!!!第三王子殿下になんて失礼な!!」
わあ元気いっぱい…見合い相手(?)のルチア様よりも、隣の侍女が……。しかも後ろにいる使用人たちは、チラチラとこちらを見るだけで動きもしない。そばにいる侍女も侍女でなんだかキツそうなお方……いや失礼か。
「構いません。では僕も、ルチアさんとお呼びしても?」
「いーですよ!」
「……っ!」
唇を噛み締めた侍女なんて露知らず、にぱーっと笑った彼女は年相応の笑顔のまま口を開いた。
「あのね、あのね!マイクおにいちゃ!」
「なんですか?」
「きのうね、アリさんたべたの!おいしかった!」
「!?」
いきなりのとんでも発言に、魂が抜けそうになったのは言うまでもないでしょう。
え、大樹の王国って昆虫食の文化があるのですか?聞いたことないんですが?あ、目の前の侍女がブンブン首を横に振ってるから多分違いますね。この件は聞かない方がいいかも。
「あのー、ルチアさん」
「なあに?」
「ルチアさんって、今何歳ですか?僕は十五歳です」
「さんさいです!」
やっぱり子どもでした。
「あとちょっとでよんさいなります!」
そうなんですね(遠い目)。
何故十五歳が三歳とお見合いしているんですか?父上も大樹の王国の国王陛下も、何を考えてこのお見合いセッティングしたんですか???
「ルチアさんは、誰に何をするよう言われてここに来たのですか?」
それでも今はテーブルに向かい合い、食事の準備をしているこのタイミングが好機だと思って、僕から声をかけました。今は少しでも情報が欲しいのです。いや本当に。
「?」
あ、ダメだ。首をこてんとさせている。可愛い…じゃなくて。ちょっと説明わかりにくかったかな。少しずつ聞こう。
「ここに来てと言ったのは誰ですか?」
「おじしゃま!」
「あなたのおじしゃまはなんて言ってましたか?」
「おじしゃま…おうじさまくるからおはなししてきて、って!」
おじしゃまは多分、国王陛下のことですよね。王弟女なら、国王は伯父にあたりますから。
「ふむふむ、他には何か…」
「ないよー」
「……そうですか」
情報これだけ!?おじしゃま何やってるの!?僕のおじしゃまじゃないけどさあ!!!お見合いでお話してきてって何!?大体あってるけども!!
それに三歳にする説明なら『お話してきて』って何!?大体あってるけれども!!三歳にお見合いさせている一点を除けばね!?!?
「…?」
「あ、いえ…教えてくださりありがとうございました」
「ふふふ」
自慢げな笑顔がめっちゃ可愛い…だからお願い、大樹の王国の使用人の方々そんな怖い顔しないでください……。
主人公の名前がマイク(十五歳)、三歳児の名前がルチアです。名前と年齢だけでも覚えて帰ってください。




