貴方たちには渡さない
僕が聞いているのは、ルチアさんの具体的な罪について。殺す価値があるならばいくらでも出すことができるでしょう。あればの話ですがね。
予想通り、僕たちの退路を塞いでいた兵士や侍女は言葉を詰まらせています。唯一考えているのが、今もナイフを握りしめている侍女ですね。
「罪…王族の癖にマトモな礼儀もできなかった!見ただろう!?あのぎこちない挨拶を!!」
「三歳児ですよ?彼女はまだ勉強中の子どもです」
「だが、外交にあたって他国への無礼は許されないはずだ!」
「大人でも敬語が苦手な方はいらっしゃいます…他でもない貴女がよくわかっているはずですが」
僕が言い返せば、侍女が唇を噛み締めています。正直に言うなら最初のキチンとした話し方と今の話し方が全然違うのでびっくりしています。びっくりしている場合ではないのですが。
ぐぬぬ…と言いたげな顔をしながらも考えることを続けた侍女が大きく指を差しました。まだ何かあるのでしょうか。
「そ、そうだ!王族全体が関与していたからあんな愚策が続いたんだ!あれは先代国王だけの罪じゃない!!」
「『大樹の悪夢』がはじまったのは七年前で、終わったのが三年前ですよね。ルチアさんは三歳です。内戦前に生まれてもいない子どもに圧政が引けると?」
たとえ生まれていたとしても圧政引くのは無理でしょう。お見合いも知らない三歳児ですし。
「他に、ありますか」
声は返ってきません。僕の質問に答える方はとうとういらっしゃらなくなりました。思ったよりも粘られたのは予想外でしたが。
「ルチアさん自身に、罪はない。この認識でよろしいでしょうか」
「違う!王族に生まれたことが!王族の血を引くことが!!そのことこそが、ソイツの罪なんだよ!!!」
ナイフを持った侍女だけがまだ声をあげます。他でもない貴女が、理不尽な苦しみを知っているはずの貴女が、何故そのようなことを言えるのでしょうか。
「ふざけるな!!!」
ルチアさんを持つ手が強張ってしまいますが、もう僕もなりふり構ってはいられませんでした。
「いい加減にしろ!!血筋は罪じゃない!!民が民として生まれることが罪ではないように、王族も王族として生まれること自体が罪なわけじゃない!!!」
つい声が大きくなっていき、ついには叫んでしまいます。僕こんな大きな声出たんですね、知りませんでした。身内にもこんなに言ったことありませんよ僕。
「犯した罪は本人のものだ!!子孫まで続く咎なわけがない!!そんなこともわからないのか!!!」
「うるさいうるさい、うるさい!!」
「彼女はただの、ご飯が大好きな三歳の子どもだ!!その事実すら受け止めないような者に、彼女を引き渡すわけがないだろう!!!!」
つい、最後まで言い切ってしまいました。こちらが興奮すれば相手も興奮するだけです。わかってはいましたが、僕自身こんなに感情を強く出したこともないので感覚としては薄かったです。失敗しました。
「うああああああっ!!!黙れぇぇぇぇぇ!!!!」
彼女がナイフを持ったままこちらに突っ込んできます。咄嗟にルチアさんを抱きしめ直しましたが、痛みも鈍い感覚もやってきません。
目の前で起こったことを説明しますね。
制服を着た女性が飛び蹴りをぶち当てまして、侍女の顔面にクリティカルヒットいたしました。侍女はそのまま倒れ込み、女性がナイフを回収しています。
飛び蹴りに相応しくないような短いスカート、ふわふわの金の髪、まつ毛の主張が激しいお化粧。そして、ルチアさんにそっくりなお顔。
「ルーちゃん!無事!?」
「ママー!」
ギ、ギ……ギャルだーーー!!!??!?
ギャル…?




