小さな子ども
ずっとギャルのターン。
「アタシの愛しのルーちゃん!怪我してない!?」
「ママー!」
「めっちゃ元気そう!良かった〜!!」
ルチアさんがママと呼ぶギャルさんがニコニコしています。タレ目なのもあって笑顔がすごくふわふわして見えます。でもこの方飛び蹴りを顔面に当てますので…うーん……。
そんなことを考えていれば、彼女のすぐ後ろに兵士が立っていました。装備もしていますし、武器も持っています。危ない!!
咄嗟に目を瞑りましたが聞こえたのは「グエッ」という男性の鈍い声とドゴォッという鈍い音だけです。目を開けますとあれ、兵士が倒れています。そして近くには金属バットが。
ルチアさんのお母様?が金属バットを持ちますと、そのまま兵士たちに立ち向かっていきました。本当なら僕も助太刀しなければいけないのでしょうが、先ほど座り込んでしまったきり身体が動きません。
あ、でもすごい。兵士に負けてません。何なら勝ちました。兵士が全員倒れています。はい。
僕の見立てが間違っていなければ、兵士の脳天めがけてぶち当てていらっしゃっていたような…?もしかしたら、大樹の王国では細かいことは気にしたらいけないのかもしれませんね。
そんなことを考えていれば、金属バットを持ったままの彼女がこちらを向きました。いえ、ズンズンこちらに向かって歩いてきています!?
えっ!?何々!?あっ!僕がルチアさんを抱っこしたままだから!?それならば、ルチアさんがママと呼ぶ彼女に引き渡した方がいいのでしょう。
はい。頭ではわかっているのです。しかし身体が動きません。全く動けないのです。腰が抜けただけならまだしも、ルチアさんを抱いた状態で身体が固まってしまっています。
どうしましょう、そんな発言をする前に温かい感触がありました。ルチアさんの推定お母様に、ルチアさんごと抱きしめられていたのです。近くには彼女が持っていた金属バットが転がっています。
「ルチアを助けてくれてありがとう」
あまりに温かかったのです。誰かに抱きしめてもらうのは何年ぶりだったでしょうか。感謝されるのはいつぶりでしょうか。不思議なことに、疾うの昔に亡くなってしまったお母様を思い出してしまいました。
「う、うああ…うわああああああぁん!!!!」
僕と同年代に見える彼女に抱きしめられたまま、僕は小さな子どもかのようにわんわん泣いてしまったのです。
・ ・ ・
アタシ、クレア!ピチピチの十七歳!ルーちゃんのママやってまーす!他国の学園通ってる二年生でもあるよん。
急に電話来てさ、出たら愛しのばあちゃんだったわけ。学園いるときは、ばあちゃんがルーちゃんの面倒見てくれてるの。そんでさぁ、ルーちゃん知らないかって!知るわけなくてさ〜、もうびっくり!
アタシの愛しのルーちゃんがいなくなったって聞いたときは心臓バックバクだったよ〜。そりゃあもうメイクしてる場合じゃねえ!みたいな?ま、話聞いたときにはメイク終わってたんだけど。
アタシらは学園にいたし?学園からこの国結構遠いし?ルーくんのポケットマネーで最短時間で行けるルートを選んだのは当たり前すぎって話。
あ、ルーくんはアタシの彼ピね。同じ学園に通っててー、二年生でー、留年しててー、ルーちゃんのパパでー、なんか王弟ってやつらしいよ。
そんなわけで故郷に戻ってきたらさ?なんかルーちゃん抱っこしてる男の子いるし?男の子攻撃してるバカがいるし?ルーくん置いてってるのに、思わず飛び蹴りしちゃったよね、テヘペロ♡
ちょっと王宮シバこうと思って持ってきた金属バットがこんなに役に立つとは思わなかったよね〜。やはり暴力、暴力は全てを解決する…!
そんでよーく見たらさ?男の子は怪我してるの、可愛い顔にも傷がついてるし。でもルーちゃん怪我してないの。この子がルーちゃんを守ってくれたんだな〜ってすぐにわかったよ。
だからその子のトコ行こうとしたの。でもその子震えてた。震えてたのに、ルーちゃんだけは絶対離そうとしなかった。どう見たってその子自身がまだ子どもなのに。
だから思わずぎゅ〜ってしちゃった。ルーちゃんを助けた命の恩人は、小さな子どもみたいにわんわん泣いてた。泣け泣け、ルーちゃんのママがぎゅ〜したるからな。




