表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮都市はオコジョびより 〜窓から捨てられた侯爵令嬢は、早く人に戻りたい〜  作者: くすだま琴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/23

第22話 父との対決から従妹との対決へ


 父であるカルッパ侯爵が、獣化固定薬を管理していたのはわたしルミアーナだと言った途端。


「……侯爵、本気で言っている?」


 リステアードの声にはあからさまに怒りが込められていた。

 多分、「オコジョちゃん」と、この家の娘であるルミアーナが同じ獣人だと気づいただろう。

 だから、わたしがそんなことをするわけが(できるわけが)ないと知っている。

 黒髪黒瞳の貴公子は、勝手に触ろうとはするけれど、見ず知らずのオコジョを助けてくれてごはんを食べさせてくれるまっすぐな優しい人だ。

 相手が婚姻の行方の鍵を握っている人物だろうが、不正は許さないのだ。


「ええ、本当のことですからね」

「そうか、それじゃ————法律官、領主家における薬品保存法を守ることができない領主はどうなるんだっけ? ずっと執務を娘に預けていたらしい領主だよ」

「領地を治める能力が疑われますな。即時退位いただきましょうぞ」

「なっ——————!」


 今ごろ気づいても遅い。

 執務をこなしていない名ばかりの領主に、領主を任せておけるわけがない。

 今までは、そのことが表に出ていなかったからまかり通っていたのだ。

 正当な血筋の跡取りまでいるのである。

 領主交代後にじっくりと取り調べられればいいのだ。


「ご本人からの証言があり、見届け人が二人以上。大陸法律官ネゴティム・オーロックがカルッパ侯爵の強制退位を執行する!」


 凛とした声が場を支配した。


「元侯爵の執務能力欠落により、継承手続きを大陸法律官ネゴティム・オーロックが行うこととする。次の侯爵位をアレクサンテリ・エンシス・カルッパ殿が受け継ぐことを、ここに承認する。異議がある見届け人は今ここで申し出るように」

「い……異議、モゴッ——」


 父が何か言いかけたところ、ライノアが口を押さえつけた。

 いい働きをする!


「異議なし」


 リステアードはそう言って拍手をした。

 場が拍手に包まれた。

 わたしも兄の肩の上で拍手……拍前足をした。


「……オコジョちゃん……」

「……かわいいですな……」

「……かわいいですね……」


 なんか生暖かい目で見られているような気がする。

 兄は気にせず、礼をした。


「承認ありがとうございます——さっそく新しい当主として、もうひとり裁きが必要な者がいることを知らせたい。スィリリヤ!」


 みなの視線が部屋の入り口へと向かい、スィリリヤに刺さった。

 護衛のライオン獣人に腕を掴まれ、今にも折れそうなか弱そうな姿で立っている。


「わ、わたし……」


 薄紅がかった髪は可憐に見えるよう巻かれて胸元に垂れており、大きな目がうるんでいる。

 その姿はいかにも庇護欲をそそり、とても悪人には見えない。

 兄はまったく心を動かされる様子なかった。


「まずは私が行方不明になって、これまでどうしていたのか、なぜ今ここにいるのかを聞いてほしい。始まりは獣化したオコジョ姿で川を流されたところからだ」


 下流のカプリコルン公爵領のカプラに流れついて、地下迷宮都市ラビリンスシティに隠れ住んでいたこと。

 カプリコルン公爵に人化薬を融通してもらったことを語った。


「大変なご苦労を……聞けば聞くほど不憫な話ですね……」

「涙なしでは聞けませんな……」

「キュー……」

「本当に大変だったね、侯爵。ほら、オコジョちゃん、こっちにきてなよ——痛っ」


 どさくさに紛れて何、手を出しているのか。

 もちろん魔力で弾いておくけど。

 手をさすりながら、貴公子はスィリリヤを見た。


「それを捨てたのが、侯爵の従妹ということ? それが本当なら魔人よりも悪逆非道だ。川に流したんだろう?」

「な、流してなんていません! わたし、知りません! 何もしていないのに、ひどい……」

「侯爵殿を抱えて川に流すなんて、おまえか弱そうに見えて、結構力あるんだね?」

「違います! リステアード様! わたし抱えてなんていません! 獣化したら小さいから…………っ」


 首根っこつまんで、窓からポイだ。


「それはそうか。獣化したらそのオコジョちゃんくらいの大きさだもんね。簡単に川に流せるか」

「リステアード様! 信じてください! わたしは本当にお兄様を流してなんていません! お、お兄様はわたしが気に入らないから、そうやって嘘を言って陥れるつもりなんだわ……」

「嘘ではないことは、やった自分が一番わかっているだろう? スィリリヤ? 獣化した僕は軽かったよね? どうやって盗ったんだ?」

「やっていません! わたしが薬を盗ったって証拠があるんですか⁉︎」

「……ないな。僕が自分の身に起こったことを述べているだけだよ。直前に出してくれたお茶だろう?」

「薬なんて入れていません! 保管庫に入っているんですよ? わたしが盗れるわけないじゃないですか!」

「キュー!」


 二回。

「薬」とスィリリヤは二回言った。

 兄は薬と一言も言っていないのに、兄が盗ったものを薬だとスィリリヤは言ったのだ。


 リステアードはわたしを見てにこりと笑った。


「盗ったものが薬などと、侯爵は言っていないよね。最初から、獣化した姿って言っている。薬で獣化したことをを知っているのは犯人のみだろうね」

「二人以上の見届け人がいる前での告白あり。ひとまず薬を盗んだ罪を問えますな」


 ネゴティムも目を細めた。

 兄はわざと曖昧な言い方をして、スィリリヤの本当と嘘のブレを突いたのだ。

 宣言に対してスイリリヤはカッと目を見開いた。

 まだどこかで逃げ道を探そうとしている狡猾な顔をしている。

 もう可憐な令嬢には見えない。

 そこにいるのは従兄妹ふたりを害そうとした、魔人よりもおそろしい女だった。








水・土曜 更新予定です!(今日もちょっとだけ遅れた……(土下座))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ