リコ姫の視察
前回のあらすじ
フレアの友人、リコ姫から書状が届く。しかし、トラップが仕掛けられていて、煙を吹き出す。
リコ姫の書状に仕掛けられたトラップが発動して、隊長用テントの中が煙で充満していく。
煙の吹き出す勢いは強く、まったく弱まる感じがしない。
少しの間、煙の中でフレアは過去を思い出していたが、咳き込みながら我に返ると冷静に煙対策を考えた。
(チっ、煙の勢いが収まらない。魔法の力で止めるのは…………ダメだな。逆効果になる可能性がある。やはり、外で待ち伏せされていても、出て行くしかないかぁ)
思案を終え、慎重に外に出ようとしたら、テントの外から落ち着いた女性の声が聞こえてくる。
「フレア様、ピリンです。外の安全は私が保証しますから、早く外に出てください」
(ピリン? えっと、確かリコ姫の専属メイド長だったはず。姫から離れない彼女が居るなら…………はぁぁ~~っ、間違いなくリコ姫が来てる。予想が的中したけど、嬉しくない。そもそも、キャンプ地に何の用だ?)
ピリンを信用するのは少し危険だが、これ以上テントの中にいてもしょうがない、と考えたフレアは慎重に外へ出て行く。
すると、煙で視界が悪い状況から、明るい外に出たことで眩しさを感じ、つい目を閉じてしまう。
(あっ、しまった!)
隙を作ってしまい、急いで目を大きく開けたら、無表情なメイドと目が合う。相手を確認しようと、フレアが口を開くよりも先に、メイドの方から話しかけてくる。
「フレア様、お久しぶりです。煙は大丈夫でしたか? 今回の事で気分を害されたのなら、私が謝罪します。ですが、リコ姫様に悪意はありません。良かれと思ってやった事なので、どうかご理解ください」
「お前はピリンか? あぁ、本当に久しぶりだな。…………ふぅ、怒っているけど平気だ。彼女のやり方は、もう慣れたよ。そんな事より、どうしてキャンプ地に来た? それと────」
「話をする前に、煙で汚れた顔を拭いたほうが良いですよ?」
無表情を崩し、微笑んだピリンがタオルを手渡すため近づいてくる。フレアは、警戒しながらもタオルを受け取り、周囲の様子を確認してから顔を乱暴に拭いた。
(メイドはピリン1人、他に護衛の女性兵が20人以上いるけど…………変だな、リコ姫の姿が見えない。どこに行った? まさか、キャンプ地に来ていないのか?)
顔を拭き終わり、汚れたタオルをピリンに軽くげ返して、フレアが疑問を訊ねた。
「それで、何の用事だ? リコ姫は一緒に来ていないのか?」
「リコ姫様が、キャンプ地を視察するために参りました。申し訳ございません。急に決まった事で知らせが間に合いませんでした」
「視察? へぇ~、今まで一度も無かったのに、どういう心境の変化かしら?」
「ふふっ、邪推しないでください。姫様は討伐隊の皆さんを心配して視察に来ただけです。不満や要望があれば、可能な限り対応しますので、遠慮なく話してください」
「…………ところで、リコ姫の姿が見えないけど?」
「既にキャンプ地の中を視察しております。そうだ、姫様から伝言を頼まれていました。えっと、聞いてくれますか?」
「はぁぁ~~っ、隊長である私の許可なく勝手に動くな。ここでは、王族よりも隊長の方が上の立場だぞ、それを忘れたのか?」
「申し訳ございません。ですが、フレアなら許してくれるから問題ない、と楽しそうに姫様が申しておりますよ」
「あっそ、まあ、大目に見るけど次は容赦なく引っ叩くから、ちゃんと言っておくように。それで、伝言は?」
「はい、かしこまりました。コホン、姫様からの伝言です。フレアさん、相変わらず不意打ちに弱いですわね。何度も言っていますが、人を殺すのに剣は不要、少量の毒で十分なのですよ。この世の中、結果が全て! 過程に意味はありません。油断は死を招くから、気をつけてください。────以上でございます」
「うるさい! 言われなくても分かってる。まったくもう…………それで、どの辺りを視察している? 会って直接文句を言ってやる!」
「えっと、姫様は────」
────
フレアがリコ姫を探している時、誠志郎はフリルドレス姿の美しい女性に呼び止められていた。
「あの、突然すみません。貴方様は誠志郎様ですか?」
「えっ、そうですけど…………」
「まあ、お会いできて光栄ですの~、私、リーシエッタ・コルネス・キャロット、と申しますの。気軽にリコと呼んでくださいね」
(なんだろ、この女性…………凄く胡散臭い!)
誠志郎が本能的に危険を感じていると、土煙を上げて誰かが走って来るのが見えた。
次回予告、フレアとワンコ
「くっ、すまない。全力で走ったが、間に合わなかった。本当なら、出会ってケンカをするはずだったのだが………」
「ふむぅ、体重移動に無駄がありますね。全速力で走った時、土煙や衝撃波などを発せさせるのは、未熟者ですよ」
「っ!? はい、勉強になりました」
「さて、次回は────」
「殴り合いだな」
「違いますよ。あのですね、もう少し冷静に行動してください」
「………13回、食事に下剤を盛られ、寝込みを襲われた事は、数え切れないほど。他にも、奇襲からの関節技で、骨を折られた事が何度もある。後は、痛がらせのトラップ攻撃とか────」
「はいはい、分かりました。要するに不俱戴天の敵なのですね」
「いや、そこまで嫌いではない。無茶苦茶な奴だが、良い所もあるんだ。そうだなぁ、嫌いと言うより苦手かな?」
「はぁ、そうですか。とにかく、次回は頑張ってくださいね」
「………はい」




