表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

猛虎の来訪

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


 前回のあらすじ


 フレアが事務仕事に追われている。

 書状の差出人がリコ姫と知り、危険を感じたフレアは慌てて書状を床に投げ捨て、少し距離をとって様子をうかがう。


 異変が無いか、慎重に確認しながら危険物(書状)の処理方について、フレアが考え込む。


 (さてと、どうしようかなぁ。狂人(リコ姫)の書状だから、間違いなくトラップが仕掛けられてるはず。今回は爆発かな? いや、毒とか呪いもあり得る。うかつに鑑定スキルを使うのも危険だな。スキルに反応して、ドッカンと爆発するかも…………いっそのこと開封せずに燃やすか?)


 しばらくの間、思案を続けていると、床に放り投げていた書状が突然、炎上して煙を噴き上げる。


 「チッ、これは時間差トラップだ!!」


 煙には強力な催涙効果があるらしく、毒耐性を持っていても少し目が痛い。

 

 「ゲッホゲホッ、いい加減にしろ、バカ姫! ────ゲホゲホッ、今度会ったら、絶対に引っ叩いてやる!」

 

 トラップを回避出来なかった悔しさと目の痛みで、フレアの怒りが高まっていく。


 (くそっ、煙がキツイ。だけど、動転して外に出るのは愚策だな。おそらく、奴が待ち構えてる。煙で外に追い出し、得意の飛び膝蹴りで攻撃してくるはず。はぁ~、あのバカ姫は、本当に昔と変わらない)


 テントの中が煙で充満していく中、フレアは迷惑な友人との出会いを思い出す。


 ────


 今から12年前。


 フレアの実家にある練兵場では、朝から訓練をする多くの私兵たちで、活気に満ちて騒々しかった。


 練兵場の中央付近に、壮年男性と少女の2人が無言で立ち尽くし、訓練の様子をジッと眺めている。壮年男性の目つきは鋭く、立ち振る舞いも隙が無い。誰が見ても間違いなく強者と感じ取れた。


 それに比べ、少女の様子は場違い感が凄い。綺麗なフリルドレスを身にまとい、穏やかな表情で微笑んでいる。どう見ても、荒事と縁がない深窓の令嬢といった感じがして、男臭い練兵場に似合わない。


 しかしながら、練兵場にいる者は彼女の身分を知っているため、誰も気にする事なく訓練を続けていく。


 男たちの激しい声が鳴り響く中、入り口の扉を勢いよく開けて、12歳のフレアが練兵場に入ってくる。


 全身汗びっしょりのフレアは、早足で中央にいる壮年男性のもとに向かい、大きな声で話しかけた。


 「御祖父様! 日課の走り込み、完了です! 本日の指導をお願いします!」


 「おぉ、フレア、今日は遅かったな。ふむぅ、罰として明日の走り込み、3倍走れ。良いな?」


 「っ!? ────は、はい!」


 「うむ、励め。今日、お前に紹介したい者がいる。ほれ、自分で挨拶しなさい」


 祖父が隣にいる少女をフレアの前に押し出して挨拶を促すと、少女は可愛らしくドレスのすそをつまんで、自己紹介を始める。


 「初めましてなのぉ~、(わたくし)、リーシエッタ・コルネス・キャラット、と言いますの。気軽に、リコって呼んで欲しいですぅ~」


 「えっ!? まさか、第1王女様ですか? なぜここに? あっ、いえ、その、すみません」


 突然、王女様と出会い混乱していると、祖父が真剣な眼差しを向けて話し出す。


 「フレア、お前の修行に今日から姫が加わる。共に強くなれるよう、励むが良い」


 「へぇ? …………あの、御祖父様、姫様に厳しい修業は無理だと思いますが?」


 「心配無用。お前より、姫の方が才能に恵まれているぞ。そんなことも、わからんのか?」


 「わからなくて、すみませんでした! 姫様と共に、粉骨砕身の覚悟で修業をします!」


 「えへへ、よろしくねぇ~。(わたくし)、頑張りますよぉ~。えいえいおー、ですの!」


 「…………」


 リコ姫はフリルドレス姿で、可愛らしく拳を握りしめ気合いを入れたが、まったく迫力がない。そんな姿を見ていたら、フレアの心に黒い感情が溜まっていく。


 (チッ、世間知らずの姫様と一緒に修行? 冗談じゃない、バカにするな! 私が死ぬ覚悟で耐えている修行だぞ。ひ弱な姫に出来るわけがない)


 無言で考え事をしていたフレアに、祖父は意外な話をしてくる。


 「フレア、リコ、相手の実力を知るため、今日の修行は2人で練習試合だ。先に失神した方が負け。さあ、武器を持って戦いを始めろ」


 「御祖父様、それは危険です。素人の姫様と私が戦えば、大怪我をさせてしまいますけど、良いのですか?」

 

 「平気ですよぉ~。怪我なんか気にしませんの。ですから、遠慮なく殺りましょう~」


 「姫様、本気ですか? 怪我をしても、私は責任を取りませんよ?」


 「は~い、良いですよ。お互い怪我をしても恨まない、姫の名前に誓いますのぉ~」


 「…………わかりました。それでは、始めましょう」


 ────


 刃を落とした練習用の剣を受け取ると、フレアとリコ姫が向かい合って剣を構えた。


 すると、直ぐにリコ姫が悲鳴を上げる。


 「剣が…………剣が重くて持ち上がらなぁーい。ふぬぬっ、ですのぉ~」


 「はぁぁ~~っ、やる気が出ない。どう考えても、これは弱い者いじめだな」


 着替える事を拒んだリコ姫は、フリルドレス姿で剣を持ち上げようと苦戦している。その姿は、あまりにも隙だらけで、フレアの戦闘意欲を奪っていく。


 (弱い、弱すぎる。そもそも、なぜ着替えない? ドレスで戦うなどバカのする事だろ。構えが悪くて隙だらけ。あ~、無理に重い物を持つから、腕がプルプルしてる。さてと、どうやって終わらせようかな)


 弱い姿を確認すると、フレアは油断をして戦闘中なのに考え事をする。


 しかし、これが良くなかった。


 油断をした瞬間、フレアの顔面を目掛けリコ姫が剣を投げつけてくる。その速さは、まるでオーガが小石を投げるように速く、訓練された戦士でも回避が難しい速度だった。


 ────油断したフレアに、一直線に迫ってくる剣。


 それを驚異的な反射神経と剣術で弾く。しかしながら、無理矢理な迎撃で態勢を崩してしまう。


 何とか反撃を、と考えた瞬間、フレアの顔にリコ姫の飛び膝蹴りが突き刺さった。


 鼻の骨と歯が折れる感覚の中、フレアの意識が遠のいて行く。


 ────


 フレアは後で知ったが、リコ姫のフリルドレスは相手を油断させるための物。剣が重いと言ったのも、油断をさせるための演技。本当の彼女は、筋骨隆々な体を持つパワーファイターだった。


 

 

 

 






 

 次回予告、フレアとワンコ


 「あの、顔色が良くないですけど、大丈夫ですか?」


 「…………平気だ。ちょっと嫌な事を思い出しただけ」


 「それにしても、フリルドレスで飛び膝蹴り? 何というか、変な友人を持っていますね?」


 「あのフリルドレス、実は特殊な糸で作られているから、桁違いに重いんだ」


 「なるほど、脱いだら凄い! という事ですね。ふむふむ、ここで次回予告です。リコ姫と出会ってケンカをする。ですって、フレア殿?」


 「はぁ、しょうがない。久しぶりに引っ叩いてやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ