視察の目的
読者の皆さん、遅くなってすみません。
体調不良でした。
前回のあらすじ
誠志郎とリコ姫が出会う。
キャンプ地の食堂で、ニャゴ丸が忙しなく動き回っている。すると、不意に呼ばれた気がして周囲の様子をキョロキョロと見回す。
そうしたら、食堂の入り口付近で、手を振り呼び掛けてくる誠志郎と目が合う。
「おーい、ニャゴ丸! 来たよ~」
「ニャ?」
仕事が忙しく正直言って手を止める余裕はないが、誠志郎に声を掛けられたら絶対に無視できない。と思ったニャゴ丸は、急いで食堂の入口付近に向かう。
「お待たせニャ~。それで、何の用ニャ? お腹すいたニャ?」
「いや、ニャゴ丸の方が俺に用事があるんでしょ? えっと、フレアに言伝を頼んだよね?」
「う~ん、記憶にないニャ~。フレア隊長の勘違いだと思うニャ~」
「勘違いかぁ。それにしては必死だったなあ。ものすごい勢いで走って来ると鬼気迫る顔で、急用があるから大至急会いに来てくれ、ってニャゴ丸から伝言を頼まれた! そんな感じで叫ぶから驚いたよ」
「ニャ~、意味が分からニャい。だけど、せっかく来たのだから少し味見をしていくニャ。若鳥の香草蒸しを作っているニャ~」
「あっ、そうなんだ。美味しそう………。う~ん、フレアの事が気になるけど、ありがとう、遠慮なく頂くよ!」
返事を聞いて、ニャゴ丸が元気よく厨房に走っていく。すると、誠志郎の身に着けている軽鎧から心の声が聞こえてくる。
(ご主人様、スイも香草蒸しを食べたい)
(はいはい、それじゃあ、分けてあげるから一緒に食べようか?)
(おぉ、さすがご主人様。感謝! とても嬉しい)
軽鎧に擬態していたスイは、いつもの美少女に姿を変え、強く抱きついて感謝の言葉を言う。
その結果として、スイに抱きつかれた誠志郎の頭から、気になっていたフレアの事が飛んでいく。
一方その頃────
────
誠志郎とスイが料理を待っている時、フレアとリコ姫は緊張感を漂わせ無言で対峙していた。
両者、相手の隙をうかがっていたら、先にフレアが口を開く。
「久しぶりだな…………急な視察は迷惑だから、止めてくれ」
「まぁ、お久しぶりですの、フレアさん。うふふ、今回の視察は、父上様が勝手に決めた事ですの~。ですから、私に苦情を言われても困りますわ~」
「チッ、その気色悪い喋り方を止めろ! 私の前で演技をする必要は無いだろ」
「ふふっ、私は王女。フレアさんの方こそ、もっと丁寧で女性らしい話し方をするべきでは? 王女に対して失礼ですの」
フレアの方が立場的に上だが、越えられない身分の差を指摘され、悔しそうに歯ぎしりをした。感情をむき出しで悔しがる姿を見て、リコ姫は満足したらしく満面の笑みを浮かべて話し出す。
「うふふ、冗談ですよ。友人同士、気軽に話しましょう」
「誰が友人だ! お前のトラップ攻撃で瀕死になった恨み、まだ忘れてないぞ!」
「あらそうですか? それを言うなら、私はフレアの火炎魔法で重症を負った事、未だに根に持ってますよ。あっ、そう言えば戦場で下痢を起こして漏らし────」
「止めろ! 昔の話をするな! そんなことよりも、視察の目的はなんだ? お前は無駄な事をしない。絶対に意味があるはず、それを早く話せ。嫌なら、直ぐにキャンプ地から出ていけ!」
「ふふっ、目的ですか。…………フレア、ずいぶん前に話した私の夢を覚えてる?」
「夢? あぁ、確か絶望の森を全て破壊したい、と寝言を言っていたな」
「寝言ではありません、本気で考えてますよ。絶望の森が存在する以上、国に明るい未来は無いでしょう。必ず全て破壊します! えぇ、どんな手を使ってもね」
「無理だ! この森に生息している魔物は強すぎる。国の全軍で戦っても負けるぞ。無駄な被害を出すから、止めた方が良い」
「はぁ~、情けない、それでも師匠の孫ですか? 敵が強いなら、それを超える武力で制圧すれば良い。…………例えば、誠志郎様たちの仲間は頼りになりますよね?」
「なっ!?」
突然、誠志郎たちの事を話され、フレアが驚きのあまり固まってしまう。
なぜ知っている? やはり密偵が潜入していたのか? などと無言で考えていたら、リコ姫が遠慮なく語りかけてくる。
「鑑定スキルで確認しましたが、彼女たちは素晴らしい。間違いなく、この森を消滅させる事が出来る実力者。うふふ、さすが異世界から来た者たちですね。フレア、そうは思いませんか?」
「チッ、狙いは誠志郎たちかぁ。先に言っておく、彼らを巻き込むな! 無茶な戦いより平穏を望む者たちだぞ」
「やれやれ、相変わらず甘いですね」
「うるさい! お前の狙いは分かった。残念だが、討伐隊の隊長として命令する。今すぐにキャンプ地から出ていけ!」
抜刀態勢を取り、フレアが威嚇をした時、キャンプ地に太鼓の音が激しく鳴り響く。
フレアは太鼓の音を聞いて、顔面蒼白になって声を出す。
「た、太鼓が鳴った!? そんな馬鹿な、早すぎる。もう魔物の集団暴走が始まったのか? …………ありえない、嘘だろ」
「ふ~ん、集団暴走が始まったのですね? 怖い怖い、どうしましょうか」
討伐隊にとって最悪事態である集団暴走。それを知らせる太鼓の音が響く中、フレアは愕然としていた。しかしながら、なぜかリコ姫は余裕の態度で微笑む。
────討伐隊の激しい戦いが始まっていく。
次回予告、誠志郎とニャゴ丸
「ねえ、ニャゴ丸、この若鶏香草蒸しなんだけど…………微妙かな? 匂いが強すぎると思う」
「うニャ~、やっぱり失敗だニャ~」
「えっと、どういうこと?」
「実は、隠し味に栄養豊富な香草を使ったニャ。だけど、その香草…………すっごく臭いニャ! 別名おっさんの靴下と呼ばれているニャ~」
「…………」
「ま、不味いけど健康に良いニャ! だから怒らないで欲しいニャ~ ────んっ!? あれ? 太鼓が鳴ってるニャ。…………太鼓ニャ!!」
「確かに鳴っているなぁ。えっと意味は────」
「緊急事態ニャー! 次回は、討伐隊のキャンプ地が大混乱ニャ~」




