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米と大豆が無くなった

 前回のあらすじ


 問題児2人が酷かった。

 ニャゴ丸たち料理人の朝は早い。今日もまた、蒸し暑い熱帯夜が明ける前から、朝食の準備で忙しく動き回っていた。


 肉を焼く音、食材を切る音、叱責する怒声など調理場は賑やかで、まるで小さな祭りを行っている感じだった。


 体の小さいニャゴ丸は、調理場を機敏に動き回る。しかしながら、きねにとって調理場は狭く動きづらかった。


 その理由は、彼女のふっさふっさな九尾。


 正直言って邪魔、尻尾が当たって痛い。と、思っている者も少なくない。だが、この事を指摘する勇者は居なかった。


 以前、料理手伝いの者が軽い気持ちで、きねに注意した事がある────


 ────


 「あのぉ、尻尾が邪魔ですよ。う~ん、尻尾が多すぎじゃないですか? なんだか、ウザったい感じですよねぇ~」

 

 「くっはっはっ、すまんかった。じゃが、我にとって九尾は誇りそのものじゃぞ。それを侮辱するなら、命無きものと覚悟しておけ。まあ、今回は特別に許してやろう。ふふっ、我は心が広いからのう」


 この時、きねは気分を害したけど笑って無礼者を許した。しかしながら、彼女を慕う者たちの怒りが収まらない。


 その日の夜、尻尾を注意した者は、怒り狂ったオーガにボッコボコにされ生死の境をさまよった。


 これ以降、九尾の話をしてはならない。と、皆が暗黙の了解をする────


 ────


 真剣な表情のニャゴ丸が、ガスコンロの様な魔道具で分厚い肉を焼いていると、料理手伝いの者に指示を求められた。


 「ニャゴ丸さん────」


 「うるさいニャ! 火加減に集中してるニャーー!」


 「あっ、すいません。えっと、野菜を切り終わりましたけど…………」


 「…………了解ニャー。ちょっと待つニャ」


 料理に集中していたニャゴ丸は、火を止めて切り終わった野菜を確認したが、予想以上に出来が悪く、がっかりした感じで文句を言う。


 「誰がブツ切りにしろと、言ったニャ? これじゃあ味が染みないニャー!」


 「あっ、そうですね。えーっと、具体的な切り方は?」

 

 「はぁぁ~~、まず、野菜を縦に四つ切ニャ。それを細かく切れば良いニャ~。これは子供でも知ってる料理の基礎ニャ。まったく、しっかりするニャー」


 「へぇー、そうなんですか?」


 「ニャゴ丸さーーん! スープの味見をお願いします!」


 「んニャ? ────塩辛いニャ! ダメ、やり直しニャー!」


 「えぇっ!? でも、濃い味の方が美味しいですよ?」


 「朝食は、塩分控えめが良いニャ。体が疲れてる夕食に、濃い味の料理を出すニャ~」


 「はぁ、なるほど」


 料理下手の者たちに細かく指導をするが、きっと明日になったら忘れているんだろうなと、ニャゴ丸は思った。


 身振り手振りで指示を出していたら、エプロン姿のきねが困った顔で近づいてくる。


 「ニャゴ丸、米と大豆が無いのじゃが、在庫は無いのか?」

 

 「ごめんニャ~。きね姉さん、もう米と大豆は無いニャ」


 「ふむぅ、さすがにちっと食べ過ぎたかのぉ。仕方ない、朝食は…………任せたのじゃ」


 好物の油揚げと米が食べられない事を知り、きねはヤル気を失い落ち込む。しばらく考え事をしていたが、力なく九尾を垂れ下げてトボトボとテントに帰って行く。


 ────


 料理人たちの苦労があって、今日も無事に朝食が出来上がり、食事を求めた者で食堂が混雑する。


 誠志郎たちも、居住テント内で食事を始めようとしていた。


 いつも通り、誠志郎が代表して食事に対する感謝の言葉を言う。


 「いただきます! 今日も食事をありがとう。って、どうしたの? きね元気がないよ」


 「うむ、油揚げが無いのじゃ。それに米も…………」


 「えっ!? そうなの? まあ、食べれば無くなるかぁ。う~ん、どうしたらいいのか」


 誠志郎が考えている中、仲間たちは肉料理を美味しそうに食べていく。


 「おほほほ、きねさん落ち込む必要はありませんわ! ご飯の代わりに肉を食べれば良いのです。あぁ、今日のケバブ風な肉料理も絶品ですわねぇ~」


 「うん、賛成! ドラコも肉料理の方が良い」


 「はぁ、気楽でいいですね。あの、ご主人様、フレア殿に相談したらどうですか?」


 ワンコに指摘された誠志郎は、苦虫を嚙み潰したような顔をする。


 「解決策は簡単だよ。物資の補給役をしているブタンに相談すれば良い。だけど、あんまり話をしたくないんだ。わかるでしょ?」


 「────そうでしたね。確かに、あの変質者と関わるのは避けたいです」


 「ワンコ、ご主人様、噂をすれば影ですよ? あまり話題にしないほうがいいかと」


 「ふむぅ、やはりブタンに相談するのが手っ取り早いじゃろう。よし、レイが代表し────」


 「嫌です!」


 「なんじゃ、ご飯が食べたくないのか?」


 「きね、面倒な事を全部他人に押し付けるのは、良くないですよ。えぇ、本当に良くないです!」


 きねとレイが口論していると、テントの入り口が大きく開けられる。


 噂をすればなんとやら、とよく言ったもので、爽やかな笑顔を浮かべたブタンが入ってきた。


 突然の乱入に、皆があっけに取られていたら、場の空気も読まず彼は騒ぎ出す。


 「おっはよ~。やあやあ、みんな元気? 僕はねえ、腰が痛いかなぁ~。まあでも、今日も良い天気になりそうだよ。僕の心は土砂降りの雨だけど! あっはっはっは~」


 「…………」


 「あっ、いいなあ。美味しそうな朝食だねー。ねえねえ、僕の分はある? 昨日から何も食べてないから、おなかペコペコなんだよね~」


 「…………」


 「ちょっと待って! 刺さる、冷たい視線が心に突き刺さるから止めて! おぉ、心の友よ、優しさを忘れたのかい?」


 「はぁぁ~~、朝から騒ぐな。それで、何しに来たの?」


 1人で騒ぎ続けるブタンに対し、モン娘たちは完全無視を決め込んでいる。誠志郎も無視をしたかったが、うるさくて仕方ないので話し相手になった。


 「う~ん、なんだっけ? まあ、いいや。それにしてもさあ、美女に囲まれて幸せだねぇー。避妊具は、足りているかい? 在庫が有るからあげようか?」


 「うるさい変質者! 用が無いならもう帰れ。それと、何度も言ってるけど俺の仲間に変な事したら、ブチ切れるよ」


 「大丈夫、大丈夫! 僕は安心安全な変態だよ。だってさ、性的興奮するのは下着だけ! それ以外に興味無し! 生身の体なんか、これっぽちも興奮しないのさぁ!」


 「あぁ、はいはい、今日も豪快に狂ってるねぇ~」


 「友よ! 私の心を理解してくれるのは君だけだ。感謝の気持ちを────あっ、思い出した! ねえねえ、欲しい物ある?」


 「急にどうした?」


 「えっとね、これから物資の買い出しに行くんだけど、何か欲しい物はある?」


 ブタンの話を適当に聞き流していた誠志郎は、突然の魅力的な話に驚く。


 チラッと仲間の様子を見たら、米をお願いしますと、視線で語りかけてくる。


 「えっと、米と油揚げ、じゃなかった。コホン、米と大豆を買ってきて欲しい。良いかな?」


 「いいとも! 量はどれくらい?」


 「う~ん、買えるだけ欲しいかなぁー」


 「あっはっはっは、いいね、いいね! 他に欲しい物は? エロ本とか、大人のおもちゃとか、下着とか、欲しくないかい?」


 「いらない! 絶対に買ってこないで」


 「えぇっ!?」


 誠志郎とブタンの会話が終わろうとしていた時、キャンプ地に敵襲を知らせる鐘の音が響く。


 敵襲を知り、即座にレイが索敵を開始して情報を掴む。


 「ご主人様、敵の数は無数です!」


 「えぇっ! 敵は何者?」


 「────バッタの様な虫ですね。ですが、少し変ですよ。なぜか、体が燃えている?」


 「うん、わかった。みんな、戦いが始まるよ!」


 キャンプ地の護衛長として、どの様に対応するか、短い時間の中で誠志郎は考えをまとめていく。

 

 


 



 


 次回予告、 レイ、ワンコ


 「私はブタンが苦手ですね。理解できません。いえ、理解したくありません」


 「ワンコ、見た目で人を判断するのは良くありませんよ」


 「なら、レイはブタンの事が理解できるのですか?」


 「彼は例外です。残念ながら、良い所が見つかりません」


 「…………次回の内容は、レイが精霊の力を使って火を消します」

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