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問題児の2人

 前回のあらすじ


 変人集団が大暴れ。

 労働環境が過酷なため、討伐隊の者は基本的に言動がまともではない。その中でも、特に狂っている2人がいた。


 ドワーフの男性ガンテツと、人間男性ブタンである。


 この2人は、『触るな危険』と恐れられ、用事がある時以外誰も近づかなかった。それなのに、毎日のように問題を起こし続け、隊長のフレアを困らせる。


 追放したい! いや、いっそのこと殺ってしまいたい。と、何度もフレアは考えたが────


 絶対に出来ない。


 ガンテツは、優秀な鍛冶職人で武具製作において、腕の良い職人だった。しかしながら、性格的に問題が多い。


 彼は、常時不機嫌で無愛想、粗暴な爺さんだった。良く言えば頑固一徹、悪く言えば石頭のクソじじい。気に入らない者には、溶けた鉄を投げつけ殴りかかる。さらに、お酒を飲んで意味もなく暴れ出す、命令を徹底的に無視するなど、問題行動が多かった。


 協調性の欠片もないが、ガンテツを失う事は出来ない。なぜなら、彼の作る高品質な武具が無ければ、多くのハンターが命を落とすだろうから。


 ブタンは、ひ弱な人間であったが希少魔法の収納魔法を使えた。その魔法で、物資運搬を担当する重要人物だった。しかし、討伐隊随一の嫌われ者で、誰も近づかない。


 彼が嫌われる理由、それは性癖にあった。


 ブタンの趣味は、ランジェリーシーフ(下着泥棒)である。しかも、使用済み下着なら男女両方とも好き! と言う本物の変態だった。


 盗んだ使用済み男性下着に顔を埋め、ぐっへっへっへ、と笑っているブタンを見たフレアは、本気で切り殺そうと思った。


 しかしながら、それは出来ない。この男は変態だが、失えば物資不足の問題が起こる。


 フレアが何度も止めなさいと注意しても、ブタンは止めない。なぜなら、下着収集こそ人生そのものと考えているから。


 彼は貴族の3男として生まれ、物心がついた頃から下着泥棒を始めたが、大人になっても止められない。窃盗罪で10回以上逮捕されても、一切反省せずに繰り返す。


 そして遂には貴族家から追放され、金に困って今回の討伐隊に参加する。


 武具の生命線ガンテツと、物資の生命線ブタン、この2人が今日も問題を起こす。



 ────キャンプ地内にあるガンテツ専用の鍛冶場。

 

 私語厳禁、と書かれた大きな看板がある鍛冶場では、金属を加工する音以外聞こえてこない。気難しいガンテツを恐れて、緊張感が漂っている。


 そんな中、武具の修理などガンテツに用事の有る者が、鍛冶場の入り口で列を作り順番を待っていた。


 列の先頭にいたリザードマンは、刃こぼれした槍をガンテツに手渡すと、丁寧な口調で話しかける。


 「ガンテツ様、私の使い方が悪く、刃こぼれをしてしまいました。申し訳ございません。どうか修理をして頂けないでしょうか?」


 「チッ、しょうがねぇなぁ。明日までに直してやるよ。わかったら、さっさと帰れ!」


 ガンテツに追い払われ、リザードマンは足早に立ち去っていく。すると、次の順番である人間男性が、遠慮気味に話し出す。


 「あの、ガンテツ様。注文した盾を受け取りに来ました」


 「んっ? 盾なら────ほら、そこに置いてあるだろぉ?」


 「あっ、はい! ありがとうございました。────あれ? なんか少し重いなぁ~」


 盾を身に着けた男性が、つい正直な感想を言ってしまう。それを聞いて、ガンテツの機嫌が急に悪くなり、ブチ切れる。


 男性に鉱石を投げつけ、飛び蹴りを食らわせた後、腕を組み睨みつけながら怒鳴った。


 「このド素人がぁぁーーっ! 武具の良さもわからねえ馬鹿が、文句を言うんじゃねぇーーっ! てめえなんざ、武具を使うなぁ! 裸で戦え、馬鹿野郎!」


 「す、す、すいませんでしたぁ!」


 「うるせぇーーっ! とっとと帰れ!」


 「ひっ、すみません、すみません」


 「あー、くそ、最悪だな。俺、今日はもう仕事をしねえぇ! みんな、さっさと帰れ! 殴るぞこの野郎!」


 ガンテツは怒り出したら止まらない。その事を良く知っているため、列に並んでいた者たちは蜘蛛の子を散らしたように走り去る。


 誰も居なくなった鍛冶場で、ガンテツは思う。


 (ふん、武具の性能は完璧だ! 文句があるなら、俺を超える武具を作ってみろ。まあ、不可能だろうけどなぁ。ぐっはっはっはっ!)


 ────機嫌を悪くしたガンテツが、鍛冶場で酒を飲みながら休んでいると、金色の武装を身に着けたベルが現れる。


 「おほほほ、お邪魔しますわよ。ちょーっと鍛冶場をお借りしますわね」


 許可もなく勝手に入って来るベルを見て、ガンテツは慌てて怒鳴り声を上げた。


 「おい! 女が鍛冶場に入るんじゃねぇ! さっさと出て行け!」


 「あらまあ、貴方が誰だか知りませんけど、少し鍛冶場をお借りしますわよ?」


 「チッ、ふざけた女だな。いいか、俺様は最高の鍛冶職人、ガンテツだ! わかったら、とっとと帰れ。俺はなぁ、女でも容赦なく殴るぞ!」


 「へぇ~、鍛冶職人…………ですの」


 周囲に置かれている剣や鎧を軽く見回すと、ベルは軽く鼻で笑い、呆れた感じで話し出す。


 「はぁ、レベルが低いですわね。この程度で最高の鍛冶職人? おほほほ~、面白い冗談ですわよ」


 「なんだと、コノヤローーッ!!」


 怒り狂ったガンテツが、溶けた鉄を勢いよく投げつけてくる。ベルは、それを軽く回避すると、腰に身に着けている豪華な剣を鞘から抜き、彼に見せつけた。


 「おほほほ、この剣は(わたくし)が作りましたのよ。どうです、見事でしょう? 鍛冶職人を名乗るなら、これを作れないと話になりませんわ」


 「んなっ!?」


 ベルの剣を見て、ガンテツの怒りは一瞬で吹き飛ぶ。


 次元が違う。あれは本物の神剣だ。なんてこった、俺の剣はゴミ以下じゃねか。と、ガンテツは思った。しかし、プライドがそれを認めない。


 「ふ、ふん、切れ味の悪そうな剣だな。まったく、素人は直ぐ調子に乗る。はぁぁ~~、情けない」


 「おほほほ~、負け犬の遠吠えですわね。ふふっ、では────」


 ベルは満面の笑みを浮かべて、室内に置かれている武具を切り刻み始める。


 楽しそうに切っていく姿を見て、ガンテツの怒りが限界を超え、本気で暴れ出した。


 ────ベルと乱闘を起こした結果、鍛冶場は全壊。フレアからガンテツに謹慎10日の処分が下る。


 彼の謹慎中は、ベルが鍛冶職の代わりをした。すると、親切丁寧、さらに品質も良いと大好評で、ガンテツの立場が無くなってしまう。

 



 ────食堂で、誠志郎が1人で休憩していると、茶髪の男性がニヤニヤ笑いながら話しかけてくる。


 「おぉ~、心の友よ! 聞いてくれ、今日は素晴らしい話があるんだぁ~」


 「えっと、誰だっけ? あぁ、変態のブタンじゃないか。あの、どっかに行ってくれますか?」


 「ちょおま! あぁ、もう酷いなぁ~。僕、これでも貴族なんですけど、その態度は良くないなぁ~」


 「…………」


 「ごめんなさい。僕、友達がいないんです。寂しいから、仲良くしてください」


 跪いて懇願するブタンの様子から、誠志郎は可哀そうになり優しく声を掛けた。


 「はぁ、わかった、わかった。一応、友達だよ。それで話ってなに?」


 「おぉ、良く聞いてくれた! 実は────」


 周囲の様子をキョロキョロと確認した後、ブタンは服のポケットに手を入れ、白い女性下着を取り出す。


 「えぇっ、また盗んだの? いい加減に止めたら?」


 「ふっふっふっ、この下着は、なんと、なんと! あのフレア隊長が身に着けていた下着なのです!」


 「げぇっ! 俺は何も見てない。何も知らない。巻き込むな、馬鹿野郎!」


 「ぐっへっへっへ、苦労したぜぇ~」


 フレアは、スキルの力で気配を消せる。この時、ブタンの不審な行動を警戒して、気配無く食堂に潜伏していた。


 自分の下着を手に持ち、いやらしく笑うブタンを見て、今まで抑えていたフレアの怒りが大爆発する。


 ────惨劇の現場を目撃した誠志郎は思った。


 (フレア怖い、女性怖い。やっぱり、ブタンと仲良くするは止めよう)


 この日を境に、問題児の2人は少し大人しくなっていく。


 ガンテツは、ブチ切れる回数が減って、真面目に仕事をするようになる。ブタンは、フレアを恐れて、女性の下着を盗むのは止めた。


 


 


 

 次回予告、誠志郎とレイ


 「ご主人様、ブタンと仲良くするのは止めた方が良いですよ? そもそも、どうして友人になったのですか?」


 「はぁぁ~~、食堂で誰も近づかないブタンを見たら、心配になって声をかけたんだ。そうしたら、心の友! って感じになった」


 「なるほど、そうでしたか。では次回予告、ブタンが現れます」

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