キャンプ地は変人が多い
前回のあらすじ
苦労したけど、タケノコ探しは失敗した。
絶望の森、討伐隊に参加するハンターは過去の経歴を問われない。戦闘能力が高ければ、誰でも討伐隊に参加できた。
そのため、討伐隊のキャンプ地で生活する者は、性格に問題がある者、犯罪者、変人など普通の生活を送れない者が多い。
今日もまた夜が明け、変人集団の1日が始まっていく────
オーガたちを仕切っているゴオキ親分のテント内では、夜通し行われた酒盛りが朝になってもまだ続いている。
倒した魔物の話、故郷の話、エロい話など様々な雑談で盛り上がっていると、1人の男性オーガが千鳥足でゴオキに近づき、酒臭い声を出す。
「ヒックッ、ゴオキ親分! そろそろ朝食の時間ですぜぇ~」
「んっ? あぁ、いけねぇ。早いなぁ、もう夜が明けたのか────おう! そこの3人、朝食を運んで来い!」
「ふへぇ!? あっ、へい親分! 直ぐに行ってきやす」
命じられた3人が、飲んでいた酒を放り出し慌ててテントから出ていく。すると、俺も手伝う! と言って、オーガのゲキも急いでテントを飛び出す。
テントから4人出て行っても、酒盛りの熱は冷めず愉快な宴会が続いていく。
「ゴオキ親分、今日の朝食は何ですかねぇ? 最近、飯が美味くて嬉しいっす。前の飯は、なんかこう残飯? みたいな感じで酷かったですよね」
「うむ、確かにそうだったな。きねの作る飯は格別に美味い。特に味噌、醤油と言う変わった調味料が気に入った。あれは、なぜだか無性に食が進む味だな」
「俺、昨日食べた五目御飯と言う飯が気に入りました! 親分、あいつ弱っちい女にしては、役に立ちますよねぇ~」
「チッ、馬鹿野郎! きねが弱いだと? てめえの目は腐ってるのかぁーっ! 彼女は強い、本物の化け物だぞ。相手の強さを見抜けないとは、本当に情けねぇなあ!」
「す、すいませんでしたぁー!」
ゴオキが怒鳴り声を上げた事で、テント内の雰囲気が悪くなっていく。すると、場の空気を読んだ仲間たちは、きねの料理を褒めたりしてゴオキの機嫌を取る。
その結果、ゴオキの機嫌が良くなって、楽しい宴会が再開された────
────朝食を運んで来たゲキがテントの中に入ると、オーガたちはエロトークで盛り上がっていた。
「俺は、あの胸が良い! きねの胸は、大きく形が良い最高のおっぱい! しかも、歩くとプルプル揺れるんだぜぇ。くぅ~、たまらん。もみてぇーー!」
「あっはっはっは、違う、違うなぁ。お前は分かってねぇ。きねのケツこそ最高だろ?」
「なあ、下着の色は何かな? やっぱり黒、いやピンクも良いなぁ~。あっ、意外と白だったりして」
朝食を運び終わったゲキは、仲間たちがきねのエロトークをしている事に気付く。そして、即座にブチ切れる。エロトークをしていた者の顔面に拳を叩きこむと、大声で怒鳴った。
「ふざけんなやぁ! きね姐さんをエロい目で見るなぁ! 姐さんが汚れるだろ、ぶっ殺すぞこの野郎!」
「うるせぇーーっ! 女をエロい目で見て何が悪いんだよ! プルプルおっぱいの良さがわからねえなんて、てめえ玉ついてんのかぁ?」
「チッ、クズ野郎めぇ。表に出ろやぁーー! 今日は、本気でぶっ殺してやんよぉーー!」
「ちょ、ちょっと待って、2人とも落ち着けよ! あーもー、ゴオキ親分止めてください!」
「無理だぁ! 親分、酔っぱらって眠ったぞ」
「嘘だろぉ~、どうすんだよ?」
────この後、大乱闘を起こしたオーガたちは、隊長のフレアにこっぴどく叱られ、禁酒5日の処分が下った。
居住テントの1つに、犬系獣人たちがコッソリと集まり会合を始めようとしていた。
茶色い犬系獣人男性が小さい踏み台の上に立つと、20人くらいの獣人たちに向かって話し始める。
「えぇ、それでは第21回目のワンコ様を崇拝する会を始めます。まずは…………会員番号3番、ワンコ様の魅力とは?」
「はい! あの光り輝く美しい髪と尻尾、完璧なスタイル、そして時折見せる優しい微笑み。正に、ワンコ様は美の女神であります!」
「うむうむ、その通りだ。あれほど可憐な獣人女性がいるだろうかぁ、いや、いない! ワンコ様こそ、美の理想だ。…………ふむぅ、会員番号11番、お前の感想は?」
「はい! ワンコ様は絶世の美女であります! しかも、圧倒的に強い。俺、ワンコ様の下僕になりたいです!」
「馬鹿者! ワンコ様の下僕になりたいだと? 100年早いわぁーっ! 皆に聞く、我らの目的は何だ?」
「「「ワンコ様のために、死ぬことです!」」」
「うむ、ワンコ様とは何だ?」
「「「我ら獣人の女神さまです!」」」
「その通りだ! 我らは、ワンコ様のために生き、ワンコ様のために死のうではないか!」
テント内が、獣人男性の雄たけびと異常な熱気で満たされていく。
────「へくちっ!」
ワンコが可愛らしいクシャミをすると、隣にいた誠志郎が心配して声を掛けた。
「ワンコ、どうしたの? 風邪でもひいた?」
「いえ、大丈夫ですよ。なぜでしょう、急に悪寒が…………ふむ、なんか気持ち悪いですね」
「本当に大丈夫? ベルに────」
「ご主人様、その必要はありませんよ。平気です」
確かに気持ち悪い悪寒がした、だけどそれは気のせいとワンコは考え、誠志郎と共に朝食を求め食堂に向かって行く。
朝食を作り終わったニャゴ丸が食堂で休憩していると、料理を持った料理手伝いの者に声を掛けられる。
「ニャゴ丸さん、お疲れ様で~す。あの、まかない飯を作ったんで食べてくださいよぉ~」
「んニャ? まかない飯ニャ? …………不安だニャ~。まあ、でもありがとニャ」
「遠慮せずに食べてください! 自信作なんですよ」
不安げな顔で料理を口に入れた瞬間、ニャゴ丸の表情が無くなり無言になった。
「ニャゴ丸さん、美味しいですか?」
「…………まぁ、素人の料理ならこんニャもんかな? 普通に不味いニャ~」
「えぇっ!? 改善点は? やっぱり塩を入れ過ぎましたか?」
「改善点ニャ? いっぱいあるニャ~。まず、野菜の切り方が下手ニャ。それと、食材を良く洗ってニャいから、砂が入ってジャリッてするニャ~。それから────」
「あっ、ちょっと待って! お腹が痛い、ぎゅるぎゅるって感じでヤバイっす!」
「大丈夫ニャ? 早くトイレに行くニャ~」
「うぐっ、実は今朝から下痢なんですよ~」
「…………ちょっと待つニャ。お前、料理の前に手を洗ったかニャ?」
「えっと、今日はまだ1回も手を洗っていませんけど、それが何か?」
「フ、フ、フギャーーッ!」
ニャゴ丸は、料理手伝いの者に飛び掛かり────
鋭い爪で、引っ掻く、引っ掻く、引っ搔く!
「ちょっと待って、痛い、痛い! あっ、ヤバイ、うん○が漏れるーーー!」
トイレに走って行く彼を見て、ニャゴ丸は思った。
(衛生管理が悪いから、下痢するニャ。まったく、情けないニャ~)
────まだ1日が始まったばかりなのに、討伐隊のキャンプ地は騒がしい。隊長フレアとキャンプ地護衛長、誠志郎の忙しい日々は続く。
次回予告、きねとニャゴ丸
「ニャゴ丸、どうした、元気がないのう?」
「ニャ~、変な物を食べたニャ~」
「なんと、腹は大丈夫か?」
「下痢の手で料理をするのは、ダメニャ~」
「うむ、そうじゃな。では、次回予告、変態が下着泥棒をする」




