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スイとライの戦い

 前回のあらすじ


 タケノコ探しに出かけた。

 絶望の森の中に爆音が鳴り響く。音の発生源となっている戦場では、熾烈(しれつ)な戦闘が繰り広げられていた。


 数多くの木がなぎ倒され荒々しく土煙が舞い上がる中、スイと1匹の巨大な魔物が対峙している。


 巨大な魔物は、モグラに似た姿で黒い金属質の体毛に(おお)われている。怒り顔のスイが、その魔物を憎々しい目つきで睨むと、軽く唾を吐く。


 スイが敵から視線を外すと、倒れているライの様子を確認する。ぐったりして動かない姿を見ると、スイは自責の念に駆られ唇を噛む。


 (ライ、ごめんね。私、壁役なのに守れなかった。悔しい、悔しい、悔しい! あー、もぉー、自分が嫌になるよぉ)


 「チッ、お前の初見殺し能力は理解したよ。だから、次は確実にぶっ殺す! 極限技、時間逆行巻き戻し!」

 

 モン娘にとって切り札である必殺技と極限技。威力や効果は絶大だが、再使用までクールタイム、必殺技30分、極限技1時間が必要と言う弱点があった。そのため、気軽に使用できないが、スイは勝ち目がないと判断し使用を決断する。


 スイの極限技が発動すると、空間や時間など全ての存在が歪んでいく。


 ────────


 

 存在が歪む気持ち悪い感覚から解放されると、時間逆行巻き戻しの効果で戦闘開始前に時が戻った。


 ホッとしたスイに、何も知らないライが笑顔で話しかけてくる。


 「あっ、そうだ。確かご主人様は、危険な敵と遭遇したら逃げろと言っていたよね?」


 「ライ! 私、極限技を使ったんだ。正面と左右から敵が来るよ!」


 「えっ!? 嘘でしょ。私たち負けたの?」


 「説明は後! 固有技、守護の盾! スライム族技、分裂!」


 緊急事態が起きた時にしか、スイは極限技を使用しない。その技を使ったと聞いて、ライの背中に冷たい汗が流れ落ち、身震いする。


 不味い事になったとライが思った瞬間、正面からサイに似た魔物が木をなぎ倒して現れた。


 鈍い銀色の肌をしている魔物は、興奮状態で鼻息荒くライに突撃してくる。それを迎え撃つため、ライが軽く息を吸い込む。


 「固有技、腐食毒ブレスゥーーー!!」


 強酸と毒攻撃を得意とするライの十八番(おはこ)、腐食毒ブレス。


 一直線に突進してくる敵は、ブレス攻撃をまともに受ける。強酸の効果で全身の皮膚が腐食し、ぼろぼろになって崩れ落ちた。さらには、剥き出しの体に強毒が浸透していく。


 苦痛の悲鳴を上げた魔物は、地面をゴロゴロ転がり悶え苦しと動かなくなり息絶えた。


 「あれ、楽勝? ねえ、スイどういうことなの?」


 苦戦を予想していたのに、簡単に倒せた事を不思議がるライ目掛け、左右からサイに似た魔物2匹が同時攻撃を仕掛けてくる。


 ライが反応するよりも早く、2人に分裂していたスイが左右両方の攻撃を受け止めた。動きが非常に鈍いスイは、本来ならば敵の攻撃に対し機敏な反応が出来ない。しかしながら、自動的に仲間を守る守護の盾と言う技によって、彼女は仲間を守る鉄壁の壁となった。


 スイが敵の攻撃を受け止めると、常時発動技カウンターパリーの効果で魔物2匹は砕け散る。


 「あっれ~、やっぱり弱いね? スイ、何があったの? ねえねえ、どうして極限技を使ったの?」


 「ライ、油断しちゃダメ! 本命の奴が地中から来るよ! それと、絶対に攻撃をしちゃダメ! 絶対にダメぇーっ!」


 悲鳴の様な声でスイが警告すると同時に、地面が大きく揺れ地中から黒いモグラが飛び出してくる。

 

 スイは、ライを守るため巨大な黒モグラの前に立ちふさがり、小声で話し出す。


 「ライ、こいつに攻撃を仕掛けると、カウンターで強力な固定ダメージを受けるよ。しかも、かばうことが出来ない。それと、酸と毒は効果が弱いよ」


 「ぐぬぬっ、じゃあどうするの?」


 「ドラコのバ火力だよ。一撃必殺で倒す、それが良いと思うなあ」


 「あぁ、なるほどね。────ふぅ、極限技、完璧ものまね! ドラコバージョン!」


 ライの極限技は、仲間のモン娘に擬態する技であった。しかも、通常の擬態と違い全能力値や使用できる技まで本人と同じになる。


 「さてと、どうしようかなぁ。とりあえず、力のコントロールが出来ないと思うから、スイは離れていて!」


 「むぅ、馬鹿にしないで! 私は頑丈だから平気、平気」


 「そっか。ふぅー、竜族技、逆鱗! うぐっ、ぐっ、ぐぉぉーーっ!」


 逆鱗、理性を失い暴走状態になるが、与ダメ50倍に強化されるハイリスクハイリターン技。危険すぎるため、本人でさえ滅多に使用しない技であったが、スイの防御力を信じライは使用を決めた。


 ドラコの体が超高温の熱で、真っ赤に燃え上がる。体中から溢れ出る破壊衝動を抑えきれず、ライは巨大モグラに殴りかかって行く。


 ────爆音が鳴り響き、周囲は眩しい光で包まれる。


 光が収まった後には、何も残っていない。巨大な黒モグラと周囲の森が、一瞬で消し飛んだ。




 

 その後、2人はタケノコ探しを諦めて直ぐに帰る。しかし、怒られるのが嫌で今回の戦いを話さなかった。そのため、一部のハンターは最上級レベルの魔物が暴れていると、大騒ぎをする。


 ────事の顛末を知っている2人は、我関せずの態度でお昼ご飯の釜玉うどんを食べ続けていた。



 「ライ、うどん美味しいねぇ」


 「うん、…………ねえ、スイ、森の中に強い魔物が出たんだって」


 「へぇ~、でも、私はうどんの方が大事」


 「そっか。あっ、お代わりする?」


 「うん、もちろん」


 きねが、ズルズルと釜玉うどんを食べている2人に疑いの目を向けて、優しい声で話しかける。


 「ライ、気軽にドラコの力を使うでない。危険じゃぞ。ふむ、何があったのじゃ?」


 「知らない」


 「うん、何も知らない」


 「ほぅ、実は五平餅を作ったのじゃが、要らんのか?」


 「食べる!」


 「私も欲しい」


 「うむうむ、それで何があったのじゃ?」


 「えっと、黒いモグラが────」


 ────────



 きねは、スイとライから今日の出来事を詳しく聞くと、額に手を当てて大きなため息つく。


 「すまんかった。2人だけで行かせたのは、我の落ち度じゃ。ふむぅ、厄介な魔物がおるのぉ」


 「平気、最後は勝ったから」


 「うん、何とかなった」


 「くっはっはっ、そうじゃな。2人とも無事で何よりじゃ! 今日はゆっくり休め、ご主人様に事情を説明しておくから、安心して昼寝をするが良い」


 「っ!? ありがとう」


 「嬉しい」


 今日一日の、いろいろな疲れが出たスイとライは、遠慮なく昼寝を楽しむ。


 夢の中でライは思った。


 (私はタケノコを食べる役が良い、探しに行くのは面倒くさいなぁ~)


 こうしてスイとライの、大変な1日が終わっていく。


 




 




 


 



 次回予告、スイとライ


 「ライ、今回は大変だったねぇ~」


 「ねぇ~、密林を歩くの凄く疲れる」


 「ねえねえ、その気持ちで俳句をどうぞ!」


 「コホン、密林で、タケノコ探し、もう嫌だ」


 「おぉー! いいね! それでは、次回予告、キャンプ地に居る変人集団の話」

 

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