タケノコを求めて、密林の中を歩く
前回のあらすじ
きねが、いなり寿司を完成させる。
危険な魔物が生息する薄暗い密林の中、迷彩服を着た美少女2人が周囲を警戒せずに歩いている。屈強なハンターならともかく、密林の中にいる美少女は場違い感が強い。しかしながら、身に纏っている殺気が凄く、弱い魔物が逃げ出すほどだった。
この美少女2人は誰あろう、スイとライである。
不機嫌な顔の彼女たちは、トボトボと重い足取りで歩く。足場の悪い地面をゆっくりと進み、大きな倒木を乗り越えた時、ライは思った。
(はぁぁ~~、もう嫌。タケノコなんかどぉーでもいい。早く帰って寝たいなあ)
嫌々ながら進むスイとライの目的は、タケノコ取りである。
朝食の時に現れたフレアが言うには、絶望の森の中に竹林があって、美味しいタケノコが取れるらしい。ただし、その場所は投石猿と言う危険な魔物の縄張りで、簡単に近づけないそうだ。
可能なら取ってきて欲しいといわれ、誠志郎は面倒くさいから断るつもりだった。だがその時、きねがつぶやく。
「ふむぅ、タケノコご飯かぁ。悪くないのう」
食欲を刺激された誠志郎たちは、結局のところ満場一致でタケノコ取りに行く事を決めた。
しかし、誰が行くかで激しく揉める。
各自、自分の仕事が忙しいと主張するため、暇人であるライに決定したが…………。
「暇人じゃない! 日光浴と俳句を考えるという、崇高なる仕事で忙しい。無理、やりたくない」
と、必死に抵抗するもレイに説得されて、渋々行く事になった。
ライが行くと決まり、スイが珍しく大声を出す。
「ライ1人で行くのはダメ! 方向音痴だから迷子になる。私も行く」
「スイ、ご主人様の護衛はどうするのですか?」
「それは、ワンコに任せる。良い?」
「っ!? 何も問題ないですね。えぇ、私に任せてください。スイ、タケノコでもキノコでも好きなだけ探してくると良いですよ」
「んっ、分かった」
────ライが仲間たちとの会話を思い出していると、スイに声を掛けられる。
「ねえ、休憩しよう? はぁ、疲れたなあ」
「いいね! 10時間くらい休んでいこう」
「ダメだよ。お昼ご飯を食べ逃しちゃう。それは良くない。非常に良くない」
「おぉ、そうでした。うん、もう帰ろうよ~。タケノコは無かった。それでいいよね?」
「うーん、もう少しだけ探そう。早く帰ると怒られるかも」
「うへぇ~、しょうがないね。とりあえず飲むかぁ」
倒木に腰かけて休む2人に、蒸し暑い風が吹きつけてくる。暑さ寒さは平気だが、不快な感じがしてライは軽くため息をつく。すると、気分転換のために酒の入った水筒を取り出し、グビグビ飲みだす。
「ぷっはぁぁ~~、やっぱり飲まなきゃやってらんないわねぇ~。あぁ、早く昼寝したい、昼寝したい! あっ、スイも飲む?」
「んっ、ありがとう」
普段、無口なスイとライが酒を飲み交わし、愚痴を言いながら楽しくおしゃべりを続けた。
仲間たちは知らない。基本的に無口な彼女たちだが、本当はおしゃべり好きである。ただし、スイとライ2人きりでないと口数が非常に少なかった。
無口無表情キャラに思われるが、本当は食っちゃ寝とおしゃべり好きの女性。
それが、仲間も知らないスイとライの本性であった。
タケノコ取りの事を完全に忘れ、彼女たちの楽しい会話が続く。
「ライ、そういえばさぁ、きねがお昼ご飯にうどんを作るらしいよ。まぁ、私はうどんよりラーメンを食べたいなあ」
「うどんかぁ、どうせ、大量の油揚げが乗ったきつねうどんでしょう? 美味しいけど、正直言って胸焼けがするんだよねぇ~」
「あぁ、確かにね。でもさ、今朝のドラコが食べていたマーボーいなり丼? あれよりはマシだと思うなあ。味覚どうなってんの? ってドン引きしたよ」
「うん、確かに。きね、大好物を滅茶苦茶にされたショックで記憶が飛んでいたっけ。ぷっ、くっくっくっ、あっはっはっは、超ウケるんですけど」
「ライ笑いすぎ。────はぁ、それにしても蒸し暑いなぁ~。お風呂に入ってサッパリしたい。そんでもって、食っちゃ寝したいよぉ~」
「お風呂かぁ。ベルが天蓋付きのベットを作るって叫んでいたけど、そんなもんより風呂場を作って欲しいよね?」
「ねぇー。でも、ベルは少し残念なところがあるから、仕方ないよ。コホン、ワンコさん、この、わ、た、く、し、に! 粗末なベットで眠れとおっしゃるのですか? ありえません、やはり天蓋付きのベットを作りますわ! おほほほ~」
「あっはっはっは、スイ最高! そっくり、そっくりぃ~」
周囲の警戒もせず会話に夢中になってるいると、突然野球ボールサイズの石がライ目掛けて放たれる。
高速で迫ってくる石を、油断していた彼女は回避できない。敵の狙い通り、顔面に直撃する。
乾いた破裂音と共に、スイの目の前でライの顔半分が吹き飛んだ。
「えっ!?」
スイが驚きの声を上げた瞬間、2撃目の石が彼女に命中する。しかし、体が破裂して絶命したのは石を放った魔物、投石猿の方であった。
投石猿は森のスナイパー。オラウータンの様な魔物で、ライフルの玉よりも早く正確に石を投げつけてくる。索敵が上手い者でないと、一方的に射殺されてしまう非常に危険な魔物であった。
しかしながら、今回の相手は魔改造スライムのスイとライである。
投石攻撃など意味が無い。
────────常時発動技、カウンターパリー。
攻撃されると5倍の威力で反射し相手に反撃ダメージを与える。反射可能な攻撃は、全種類。壁役を担当するスイの凶悪カウンター技。
常時発動技の効果でスイは無事だったが、顔半分を吹き飛ばされたライも元の姿に戻り平然としていた。
「ライ、大丈夫?」
「平気、平気、私たち魔改造スライムだよ。貫通攻撃以外でダメージ受けない事、知っているでしょ?」
「まぁね。私は、貫通攻撃でもへっちゃらだけどねぇ~」
「あっ、そうだ。確かご主人様は、危険な敵と遭遇したら逃げろと言っていたよね?」
「おぉ、なるほど、それじゃあ帰ろうか? 危険な敵と戦って大変でした、と報告すれば怒られないはず」
「────スイ、ちょっと待って! 魔物だ! うーん、囲まれたかな?」
「────数は2、いや、3匹かぁ。強い気配、気を付けて」
帰ろうとしていた2人は、強烈な殺気を感じて周囲の密林を警戒する。すると、サイに似た魔物が姿を現す。
次回予告、きねとベル
「ベル、そろそろ浴室を作って欲しいのじゃ」
「おほほほ、しょうがないですわね」
「うむ、大至急頼んだぞ。次回予告、ライがドラコに?」




