フレアとの会談
前回のあらすじ
みんなで焼き肉を食べた。
騒動の後、直ぐに呼び出される理由は大抵の場合、叱責か面倒事の話。
そんな思いを持つと、きねは、ふっさふっさの九尾を力なく垂れ下げ、体全体で拒否感を示しす。さらには、嫌そうな顔で伝令役のリザードマンを睨んだ。
きねの態度に動揺したリザードマンは、尻尾をバタバタ動かすと慌てて話し出す。
「あっ、あの、隊長が呼んでいるのは貴女ではありません。誠志郎と言う男の方を連れて来るように命令されたんです。2人だけで話をしたいから、1人で来て欲しいそうです」
「なんじゃと!? おい! 話が違うではないか。なぜ、先にそれを言わんのじゃ!」
「す、すみません」
「まったく、予定が変わったのぉ、お前は、そこで待っとれ!」
きねは、肩を震わせ怒鳴り声を上げると、リザードマンを無視し急ぎ足でテントの中に消えていく。
中に入ると、直ぐにワンコが真剣な顔で詰め寄ってくる。
「きね、伝令の話が聞こえましたよ。却下です! ご主人様と2人だけで会いたい? ありえませんね。用があるならば、向こうから来るべきです」
「ワンコ、ちょっと待つのじゃ。要求を拒否したら、相手を信用していないと宣言することになるぞ。それは良くない、ダメじゃよ」
「だから何です? 最重要な事は、ご主人様の身の安全。下手に相手を信用して、怪我をされたらどうするのですか?」
「おほほほ、ワンコさんは本当に心配性ですわね。どれほどの怪我をしても私が、完璧に治して差し上げます。ですから、もっと堂々と余裕を持って行動した方が良いですわよ」
「チッ、ベルの実力は理解してます。私は、怪我をすること事態が許せない! それくらい、分からないのですか?」
「みんな落ち着いてぇ! 議論する前に、ご主人様の意見を聞くのが先です!」
激しく言い合っていたモン娘たちは、レイに強い口調で止められ静かになった。立っていた者たちがベットに腰掛け落ち着くと、誠志郎をじっと見て意見を聞きたそうにする。
(ち、ちょっと待って。そんなに俺を見ないで欲しい、プレッシャーがぁぁ。ふぅ~、俺の意見? 意見、意見かぁ。…………良し、何とかしよう)
考え事を終えた誠志郎が、座っていたベットから立ち上がり数回深呼吸をした後、仲間たち全員に向かって話し出す。
「えっと、俺の話を聞いて欲しい。まずは、きねの意見が聞きたい。2人で会いたい、これは罠かなぁ?」
「ふむ、罠の可能性は低いと思うのぉ。フレア殿はバカ者とは思えない、ご主人様に危害を加えたら、我らが暴れ出すことくらい理解しておるはずじゃ。心配するなら、フレア殿の名を利用した第3者の罠と言う可能性じゃよ」
「なるほど、その可能性は高い、低い?」
「低いと考えてよい。我は嘘を見抜くのが得意なんじゃ。伝令役は、間違いなく直接フレアから指示を受けておる」
「…………そっか。うん、わかった。ありがとう」
きねの話を聞いて、ワンコが遠慮気味に小さく手を上げ意見を言う。
「罠で無いとしても、2人で会う必要があるのでしょうか? 私は止めるべきかと。もし、会われるのなら、鎧に擬態したスイを連れて行ってください」
「それはダメじゃ。フレア殿は鑑定技を持っておる。簡単にバレてしまい、立場を悪くするだけじゃぞ!」
「きね、ワンコ、心配してくれてありがとう。でも、俺は会いに行く方が良いと思う。この場所で生活をするなら、隊長の信用は必要不可欠。信頼を得たいなら、まず相手を信用する。だから、言われた通り1人で会いに行くよ」
「…………御意」
「まぁ、何と素晴らしい! 信頼を得るために、危険を顧みず突き進む。さすがご主人様、勇気ある行動です! 私、感動で涙が止まりませんわぁ~」
白い羽を大きく1回広げると、ベルがオーバーリアクションで泣き崩れる。
そんな感じのベルを完全に無視して、きねが真面目な顔で誠志郎にアドバイスをする。
「ご主人様、フレア殿は、おそらく3つの事を行ってくると思うのじゃ」
「3つ?」
「うむ、まず、昨夜の戦いについて感謝を伝えてくるはずじゃ。次に、我らの能力について詳しく知りたい、もしくは確認のために聞いてくるだろうのぉ。最後に、厄介事の依頼じゃな」
「えっと、どんな依頼だと思う?」
「ふむぅ、…………護衛の仕事を辞めて、積極的に森へ入り魔物を倒して欲しい────そんな感じかのぉ」
「あぁ、確かに言って来そう」
「いずれにしても、重要な事は1つ。我らは敵ではなく味方。それをハッキリとフレア殿に伝えるのじゃぞ」
「うん、わかった」
「念のため、交渉の切り札を伝えておく。フレアの職業は英雄ハンターじゃが、本職は菓子職人となっておる。どうやら、その事を隠している様じゃな」
「…………へぇー、そうなんだ」
その後、誠志郎は心配する仲間たちに見送られ、伝令役と共にフレアのいる場所に向かった。キャンプ地の中を無言で歩き続けると、始めて彼女と出会った大きなテントに案内される。
誠志郎を待っていたらしく、テントの入り口にフレアが空を見ながら立っていた。近づく者の気配に気付いたフレアと誠志郎の目が合う。
「あっ、よく来てくれた。ありがとう! 本当なら、こちらから出向くべきなのだが、立場的に出来なかった。すまない」
「あぁ、そのことなら気にしていませんよ。で、何の話ですか?」
「そ、そうだな。とりあえずテントの中に入ろう。伝令! 私は少し忙しい、1時間ほど指揮を外れる。役持ちに伝えよ!」
「はっ! 隊長、了解です」
伝令役がいなくなると、誠志郎はフレアの後に続いて中に入っていく。
テントの中に入り様子を確認したが、とても静かで誰もいない。室内は前回来た時と同じだったが、今回は椅子が用意されていた。
ゆっくり部屋の中を見回していたら、突然フレアが魔法を使う。
「無音魔法、サイレント! ────良しっと、これで室内の声が外に聞こえない。誠志郎様、これで気兼ねなく安心して話を出来ます」
「はぁ、…………そうですか」
「あっ、椅子に座ってくれ。時間は無いけど、じっくりと話をしよう?」
着席を促され、戸惑いながら椅子に座ると、フレアが誠志郎の足元に跪く。
「誠志郎様、大変すばらしい昨夜の活躍、討伐隊を代表して感謝申し上げます。おかげさまで、多くの仲間を失わずに済みました。また、私自身も命を助けられました。深く、深く、感謝しております」
「えっと、気持ちは分かったから、立ってくれないかな?」
「…………はい」
立ち上がったフレアが、誠志郎の前にある椅子に腰掛け満面の笑みを浮かべる。
「誠志郎様、討伐隊では個人的な事を詮索してはダメと言うルール。だけど、いろいろ聞きたい事があります」
「うーん、どうしようかな?」
「昨夜、戦っていたワンコと言う黒い獣人女性は、何者ですか?」
「うーん、その答えを知っているのでは? 貴女は鑑定技を持っているよね?」
フレアは、答えを避ける誠志郎から視線を外すし、自分の腕を見る。腕を軽く動かすと誠志郎に見せつけて話し始める。
「討伐隊には、優秀な回復魔法の使い手が居ます。ですが、この腕を治すのに3日は必要なのです。それなのに、金色のベルと言う女性は一瞬で治しました。彼女は何者ですか?」
「その答えも、貴女は知っているのでは?」
「…………漆黒狼、殲滅女神、について教えてください」
「嫌! 断固拒否する」
「…………残念です。では、昨夜、見知らぬフルプレートアーマーを着た者が、多くの魔物を倒したと報告がありました。それは、貴方ですか?」
「あぁ、俺ですよ。何か問題でも?」
「貴方の指摘通り、私は鑑定スキルを持っています。だからこそ、貴方の弱さがよく分かる。どの様に魔物を倒したのですか?」
「うーん、分かった。詳しく話しても良いよ。だけど、条件がある」
「私に出来る事なら、条件を受け入れます。どのような事ですか?」
「えっと、フレアは俺たちに頼み事をするつもりでしょう? それを拒否するのが条件だよ」
「そ、そ、それは、ちょっと待ってください!」
誠志郎から指摘され、フレアは慌てて立ち上がり必死の形相で詰め寄って来た。
次回予告、きねとニャゴ丸。
「レイの協力によって、にがりを手に入れたのじゃ。くっはっはっ、ようやく、アレを作れるのぉ」
「きね姐さん、良かったニャ~」
「うむ、ニャゴ丸、明日の朝食を楽しみにしているがいい」
「おぉー! それじゃあ次回予告ニャ。フレア隊長と会談の続きニャ~」




