モン娘たちと慰労会
前回のあらすじ
ワンコが強敵を倒した。
キャンプ地に居た者たちが魔物の夜襲を撃退し、壊れた個所や怪我人の治療していると夜が明けていく。
夜通し動き回って腹を空かせた者が多く、急ぎの朝食が求められた。
「疲れている時こそ、僕の料理で元気にニャッて欲しいニャー!」
気合の叫び声を上げると、ニャゴ丸が大量の肉を焼いて皆に食事を提供している。ニャゴ丸の焼き肉は非常に好評で、戦いの後という事もあり食堂で宴会が始まっていく。
その一方で、誠志郎と仲間のモン娘たち全員が集まり、自分たちのテントで慰労会を開いていた。
「焼き肉、うまぁっ! 特に、このタレが美味しい! いくらでも食べられるよぉ~。あっ、おかわ、うぐっ!?」
「ちょっと、ドラコ大丈夫ですか? もっとゆっくり噛んで食べなさい、急いで飲み込むから喉に詰まらせるのですよ。ほら、私の分も食べていいから、とにかく落ち着きなさい、ねっ?」
「わぁーい! レイありがとう。焼っきっ肉♪ 焼っきっ肉♪」
飲み物の様に焼き肉を食べるドラコをレイが心配していると、その隣で我関せずのきねが満足げな顔で料理を堪能していた。
「ふむぅ、美味いなぁ。タレの隠し味は玉ねぎかのぉ? う~ん、辛みをもう少し強くしたら、もっと良いかもしれぞ」
焼き肉でドラコたちが盛り上がっていたら、食事中のスイが突然立ち上がり、妖艶な大人の女性に擬態する。そのまま誠志郎の隣に行くと、体を密着させて甘えた声を出す。
「ご主人様、スイ、お酒が欲しいなぁ~」
「ライも欲しい!」
「ダメですよ! 朝から酒を飲むんじゃありません」
「…………レイの意地悪」
「酒飲むな、レイのいじめで、我は泣く。ライ、心の俳句」
「おほほほ、ライさんの俳句は相変わらず個性的ですわね。コホン、では、私も一句、働いた、えぇ~~っと…………その、働いた…………ちょっと、待ってくださいませ。良い句が浮かんでこなくて」
誠志郎に抱きついているスイをワンコが引き離すと、必死に俳句を考えているベルを見て、呆れた声を出す。
「はぁ、馬鹿の考え休むに似たり。無駄な事をしない方が、良いと思いますけど? それとスイ、誘惑をするなら、ご主人様の理想女性、黒髪ロング、爆乳にするべきです」
「あらまあ、ワンコさんはご主人様の心が分かってませんねぇ。私の様に、金髪ロングで爆乳、そして美しく気高い女性こそが、ご主人様の理想女性なのですわ!」
「美しく気高い女性? 見当たりませんけど? あっ、無駄に明るい駄女神なら目の前にいますねぇ」
挑発され怒ったベルは、白い羽を広げ戦闘態勢をとる。それに対しワンコも黒い尻尾の毛を逆立てて怒りを示す。
2人が一触即発の状態になり、物理的なケンカが始まりそうな雰囲気が漂う。危険を感じた誠志郎が懸命になだめていると、テントの外から呼ぶ声が聞こえてくる。
レイが応対のため外に出ると、テントの入り口近くに人が入れるほどの大樽が置かれていた。さらには、樽を囲んでオーガの男性20人と巨大なオーガが立っている。
巨大なオーガは、動く筋肉の大きな山と言った感じで、全身に無数の傷があり闘気に満ち溢れていた。
この格が違う雰囲気を持つ巨大なオーガを見て、レイは思った。
(間違いなく、ボスキャラです。なぜ、ここに来たのでしょう?)
少しの間、全員が無言でいると容姿端麗なレイを見て興奮したらしく、オーガたちが騒ぎ出し、からかいの言葉を投げつけてきた。
「姉ちゃん、今夜の相手をしてくれよぉ~!」
「良い乳してるなぁ~。ちょっと、もませろぉーーっ!」
「俺と○○○で×××しようぜぇ~」
汚い言葉を言われ、イラッとしたレイが怒る前に巨大なオーガが動く。からかいの言葉を言った者を全員殴り飛ばすと、困った顔でレイに謝罪する。
「馬鹿が失礼した。すまない、部下に代わって謝る。俺はゴオキ、この討伐隊にいるオーガを仕切っている者だ。九尾の獣人に会いたい、ここにいるのか?」
「ええ、居りますよ。ですが、面倒ごとは嫌いです。なに用ですか?」
「あぁ、勘違いしないでくれ。礼を言いたくて来たんだ」
「そうでしたか…………私はレイと言います。今、当人を呼んで来ますので、お待ちを」
レイがテントの中に入り、少し時間が経つと九尾をゆらゆら動かし、きねが現れる。
多くのオーガたちを前にしても、きねは泰然自若の態度を崩さない。不敵な笑みを浮かべ、ゴオキをじっくりと観察した。
すると突然、1人のオーガがきねを指さして大声を出す。
「あっ、ゴオキ親分、俺たちと一緒に戦ったのは、この女です!」
「おう、なるほど…………ほぅ、凄いな」
「なんじゃ、我になに用か? それと、先ずは名を名乗ったらどうじゃ?」
「あぁ、俺はゴオキ、昨夜は部下が世話になったな」
「ふふっ、我の名はきね。ふむぅ、昨夜? なるほど、確かに見たことのある鬼がおるのぉ」
きねが扇を取り出し、ぱたぱたと扇ぎながら答えていると、ゴオキが大樽を軽く叩き大声で話し出す。
「これは酒樽だ。部下を助けてくれた礼として受け取ってくれ」
「くっはっはっ、気にするでない。偶然、助けただけじゃよ」
「助けてくれなければ、俺は大切な部下を失っただろう。本当に感謝してるんだ、遠慮せずに受け取ってくれ!」
「ふむ、では受け取ろうかのぉ。それにしても、砕けた拳で殴り合う闘志、見事な戦いじゃった」
「馬鹿だが自慢の部下だよ。戦いで死ぬのは、オーガにとって本望だが、まだまだ死んでもらっちゃあ困る。魔物との戦いは、これからだ」
「勇敢と蛮勇は違う、勝てない状況で敵に挑むのは愚か者。逃げることを転進と考え、引く勇気も大切じゃぞ。ゲキ、くれぐれも忘れるでないぞ?」
オーガのゲキは、きねに話を振られると恥ずかしそうにうなずく。その様子を見て、きねが大樽を扇で軽く叩き、ゲキに笑いかける。
「我は、湯舟にする樽が欲しいのじゃ。中に入っている酒はいらん。戦勝祝いとして、ゲキにやるから皆で飲んでくれ」
「えっ!? いいのか? ゴオキ親分、どうしたらいいですか?」
「…………帰って宴会だ! きね、俺は受けた恩は必ず返す。困ったことがあったら、遠慮なく頼ってくれ」
「ふむ、まぁ、あれだ。あまり気にしなくて良いぞ」
感謝の言葉を残し、酒樽を持ってオーガたちが帰って行く。すると、入れ替わりに1人のリザードマンが走ってくる。
きねの前に来ると、慌てた様子で話しかけてきた。
「すみません! 貴方は、ニャゴ丸さんの護衛をしている者ですか?」
「…………そうじゃ」
「隊長から伝令です。大至急、話があるので来るように、と言われました。案内しますので、早く行きましょう」
(はぁぁ~~、やれやれじゃ。十中八九、面倒ごとじゃぞ。さて、どうしたもんかのぉ)
きねは額に手を当て、大きなため息をつきながら対策を考えた。
次回予告、ニャゴ丸、料理を手伝う者。
「肉は僕が焼くニャ~。あっ、野菜を切って欲しいニャ。忘れずに、ちゃんと手を洗うニャ~」
「はーい」
「ちょっと待つニャ! 食材を洗えと、何度も言わせるニャーーッ!」
「え~、めんどくさいですよぉ~」
「それと、皿が汚れているニャ! ちゃんと洗えニャー!」
「アッハッハッハ、誰も気にしないから、これぐらい平気ですよぉ~」
「フ、フ、フニャァーーー!!」
「すいませんでしたぁーーっ!」
「はぁ、疲れるニャ。さてと、次回予告ニャ。隊長フレアと話し合いするニャ~」




