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異世界で鍛冶をしてみる  作者: 人の子
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7. 出立


そういえば、町で買い物をしている時に勇者の話を聞いた。

何でも、王都の方で勇者パーティーが行われたそうで、結構チヤホヤされているらしい。

別に妬んではいない。

俺だったら勇者になんかなりたくない。

周囲の期待が大きすぎる。

プレッシャーで押し潰されてしまいそうだよ。

それに、持っている力は恐らく女神に与えられたもの。

生来のものじゃない。

その力に自分の努力を加えなければ、きっと誇れないだろう。

まあ、唯一心配なのは、チヤホヤされて勇者が調子に乗ってしまう事、だ。

女神には勇者に頼み事されたら手を貸すように言われているが、偉そうな態度でものを頼まれたら手を貸す気はない。

普通に頼まれたら出来るだけ手を貸してあげようと思うよ。

まあ、頼み事にも依るんだけど……。

数少ない同郷だからね。

そういえば他の転移者達はどうなってるんだろ。

……探しようがないな。

まあ、俺は今は鍛冶の技術を鍛えるだけだ。

あまり気にしないでおこう。



そしてついに出立の日が来た。

朝から荷物を背負い、工房から出る。

この一カ月、本当に濃密な日々だったせいか、何カ月もいたような感じだ。

何かこみ上げてくるものがある。

別に今生の別れでもない。

多少は値がはるが、転移屋で帰ろうと思えば帰ってこれなくもない。

あんまりしんみりするのも良くないな。

トンバ師匠が見送りに来てくれた。

「向こうの師匠によろしくな」

そう言ってトンバ師匠は工房の中に入っていった。

あれ、俺の扱いが軽くないですか、トンバ師匠。

まあ、トンバ師匠らしい。

俺はまだ、この町に慣れてないので、転移屋まではカールさんが案内してくれる。

この町に慣れない内に別の町に移動というのは、大丈夫なのだろうか。

まさか、この町に帰ってきた時に工房までの道が分からないとかないだろうか。

…………あり得る。

……………………。

まあ、そん時はそん時、だ。

人生、開き直りが大切。

深く考えてはいけない。

万が一の時は誰かに聞けばいい。

ここはこの国の第二の都市。

人はたくさんいる。

何とかなるだろう。

それにしてもカールさんには色々とお世話になってるな。

また今度、お礼をしないとな。

そう考えながら、カールさんの後を追い、転移屋へと向かった。



転移屋は結構デッカい。

魔法装置が大きいせいだそうだ。

値段の割に人がたくさんいた。

そしてこの人だかりの多くは王都行き、だそうだ。

勇者パーティーの影響かな。

実は王都では勇者パーティーが終わった後もお祭り騒ぎが続いているらしく、この人達はそれが目当てなのかもしれない。

まあ、俺には関係ない。

ドムングルに向かう人はそんなにはいなかった。

列に並んで、数分後、俺の番になった。

「それでは、僕はこれで。一月の間だったが、君の成長速度には刺激を受けていたよ。僕の腕も大分上がった。お礼を言わせてくれ、ありがとう」

「いや、自分こそカールさんには色々とお世話になりました。本当にありがとうございました」

「うん。じゃあ、向こうでも頑張ってね」

そう言ってカールさんは帰っていった。

カールさん、いい人だったな。

トンバ工房の面倒見がいい、ってのはカールさんの貢献度が高いと思う。

そんな事を考えていると、後ろの人達から睨まれていた。

おっと、次は俺の番だった。

さて、それじゃあ鍛冶の町に向かうとしますか。










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