5. 修行とその後
トンバ師匠の工房で修行を始めてから三週間が経った。
毎日、厳しい修行の日々だが、ひたすらに剣を打ったお陰か、鍛冶スキルのレベルがいつの間にか4に上がってた。
たった三週間で一人前である。
……いいのかな。
なんか鍛冶が物凄く簡単に思えてくる。
というのも、最初に剣を打ったときも凄く上手くできて、カールさんに驚かれ、トンバ師匠に報告がいき、そこから何故かトンバ師匠に直接教えてもらうことになった。
で、そこからも凄いスピードで上手くなっていき、今ではレベル4。
何故だろう、と思った。
色々と考えていると、原因が判明した。
俺は俺のもつスキル《鑑定》で自分を鑑定してみると
『ユージロー
HP:160/160
MP:250/250
体力:50
筋力:30
瞬発力:220
器用:100100
スキル
「鍛冶 Lv.4」
「鑑定」
「アイテムボックス」』
チートだった。
まさかの隠れスキルではなく、隠れステータスとは……。
勿論、器用だけで鍛冶が上手くなった訳ではなく、その他にも色々な要素があるようだが、これが最も大きな原因であるように思われる。
通常だと長い間、剣を打ち続けて自分の思った通りの物との誤差を詰めていく感じらしい。
が、俺の場合、ステータス的に意味が分からん程高い「器用」のおかげでその誤差が全くといっていい程、ない。
謂わば、俺は機械みたいなものだ。
勿論、鍛冶にはそう言ったもの以外に「経験」や感覚的なものが必要なのだが、実はそれらは鍛冶スキルの中に含まれる。
つまり本来は経験を積んで技術を磨き鍛冶スキルのレベルを上げていくのだが、俺の場合は鍛冶スキルが上がって、そこに感覚的なものが付いてきた、という訳だ。
鍛冶スキルのレベルが4になって、「ここはこうした方がいいかも」とか「何かしっくりこない」とか思うようになった。
……いいのかな。
とりあえず、ステータスの「器用」についてはトンバ師匠達には言ってない。
これは恐らく「女神」に与えられたものだからな。
何かズルした気持ちになってくる。
そこからまた二週間が経ち、鍛冶スキルがレベル5になる。
カールさんは苦笑い。
まさかたった一月前に入ってきたばかりの新入りに並ばれるとは思ってもいなかっただろう。
俺も何だか申し訳ない。
ただ、今回はレベルの上がりが遅かった。
勿論、通常に比べると異常なスピードではあるのだが……。
やはりというか、レベルが上がるごとにレベルの上がりが遅くなるようだ。
どうやらカールさんを追い越すのはまだ先の話のようだ。
そんなこんなで俺がこの工房で修行を始めてから一月経ったある日、トンバ師匠に呼ばれた。
俺は今、トンバ師匠の部屋の前にいる。
やはりどこか緊張する。
一度深呼吸をして、息を整えようとすると、
「入れ」
と中から言われる。
どうやら気配を察知していたようだ。
ドアを開け、中に入ると社長室みたいな雰囲気の部屋に驚いてしまう。
実は俺はトンバ師匠の部屋に入るのは今回が初めてなのだ。
「何を驚いているんだ?」
「いや、何か鍛冶をする職場には似合わないような気が……」
「この部屋の事か?そりぁ、お前、剣を売る時にあの暑っ苦しい空間に客を招く訳にはいかんだろ」
確かに剣を打っている横で商談とかされてもな、とは思う。
「それに貴族の方も偶にだが、いらっしゃるからな。失礼のないようにこういった綺麗な部屋を用意してるんだ」
まさか、ここに貴族が来るとは……。
まあ、確かにトンバ師匠の鍛冶レベル7を考えてるとおかしくはないな。
「それで何か用事があるとの事で呼ばれたと思うんですが」
ちょっと話が脱線してしまった。
いや、まだ、話は始まってないから脱線とは言わないのか。
「おっと、そうだった。ここに来て一月ちょっとになるが、まさか鍛冶レベルが5になるとはな。その成長スピードはちょっと異常だな」
やはり、その話か。
実は鍛冶レベルが4になった辺りから言われるだろうとは思っていた。
ズバリ、「独立」の話だろう。
「お前も鍛冶レベルが5になった事だし、もしかしたら独立を考えているかもしれねえな」
……ん?あれ?「独立」の話じゃない?
「まあ、お前が独立したいなら別に止めはしないけどよ、実はお前のその成長スピードを見て考えていた事があんだ」
「何でしょうか?」
「お前、『鍛冶の町』に行ってみる気はねえか?」
「鍛冶の町、ですか?」
「ああ。『鍛冶の町』ドムングル。実はそこに俺の師匠がいてな。その師匠にお前の面倒をみてもらうように頼もうと思ってる」
「つまり師匠の師匠の所で学んでこい、という事ですか?」
「そうだ。俺の師匠は鍛冶職人の間では知らぬ者はいない、と言われている程に有名な人だ。鍛冶レベルも10、とトップクラスだ」
どうやらトンバ師匠は俺に鍛冶レベル7より先を求めているらしい。
「俺はレベルが7で止まっちまったけど、お前ならその上にいける気がする」
鍛冶レベルは誰もがレベル10にたどり着ける訳ではない。
大体がレベル5,6で止まってしまう。
レベル7までいく人は少ない。
レベル10など、片手で数える程しかいない。確か、4人とか言ってた気がする。
「自分がレベル7になるまで面倒をみてくれないんですか?」
自分でも甘えた事を言っているのは分かる。
それでも、トンバ師匠には色々と教えてもらった。
そう簡単には割り切れない。
「正直、そうしてやりてぇんだが、レベル6以降はそう簡単にぁ上がらねぇ。レベル7以上の職人が掛かりっきりで教えなきゃならねぇ。ウチは弟子が多いからよ、お前だけという訳にはいかねぇんだよ」
そう言われれば、俺は何も言えない。
迷惑はかけられない。
「………分かりました。鍛冶の町でその人に教わります」
「よし、じゃあ早速、師匠には連絡を入れておく。修行の話自体はそれとなく話しているから、大丈夫だろ」
「お願いします」
「おうっ、向こうから連絡が来たらすぐ向かってもらうからな。何か準備するもんでもあったら早めに準備しとけ」
「分かりました」
「一月の短い間だったが、お前は頑張ったよ。その調子なら向こうでもちゃんと、やっていけんだろ」
「……師匠。一月という短い間でしたが、ありがとうございました」
「ああ。頑張れよ。向こうの師匠は結構厳しいからな。覚悟しとけよ」
最後の忠告を受け、俺は部屋をあとにした。




