2. 関所を抜ける
とりあえず女神に言われた通りに森を進んでみたが、それはもう大変だった事を記しておく。
森に入れば突然目の前に大きなクマが現れて「グオォォ」とか言ってたけど、俺としては最初からパニック。
それで呆然としてたら今度は横から更に大きな虎?が出てきてクマに噛み付いたわけ。
で、クマと虎?が死闘を始めたんだけど、やはりというべきか、大きな虎?が勝ったんだよ。
そして満足した虎?は俺の方には見向きもせず、森の奥に入っていったよ。
俺に気付いてなかったのかも……。
そこで我に返った俺はそれからひたすら走ったね。
それはもう死に物狂いで。
で、森を抜け、街に着いた訳だけどまたしても俺はピンチに陥っている。
そう、ここまで言えば皆さんお分かりだろうが、異世界の街といえば周りに大きな壁で囲まれていて、当然門があり、当然門番がいる。そして当然素通りできる訳もなく、当然身元の確認と税金が徴収される訳なのだが…………
「えーと、つまり身元の証明もできず、税金も払えないと」
「………はい」
「そうか。ならちょっと奥の方に来てくれ」
門番の一人に連れられ、関所の中に入っていった。
周りの人の視線が辛かった。
「……で、税金はとりあえずいいが…」
「えっ、いいの?」
「いや、免除って訳にはいかないが、後払いでいい。それよりも身元の確認の方が重要だ」
そういうと門番の人は大きな水晶玉と一枚の薄いプレートを机の上に置いた。
「それは?」
「これは犯罪歴を調べる為の物だ。手をかざすとその人の犯罪歴が浮かび上がるんだよ」
「えっと、そっちの薄い方は?」
「?お前、ステータスプレートを知らないのか?」
「ステータスプレート?……あ〜あ〜、あれですか。ステータスプレートね」
門番が訝しげな顔をし出したので、誤魔化そうとしたが、
「お前、ステータスプレートなんて子供でも知ってるぞ」
「いや〜、ほらっ!あれですよ!ちょっと記憶が混乱してて……」
「………まぁいいが、とりあえずその水晶に手をかざしてみろ」
「こんな感じですか?」
水晶が薄く光ると、門番は満足そうな顔で
「よしっ!ちょっと変わった奴だが、犯罪歴はないみたいだな」
門番の中では俺は「変わった奴」になっていた。
もうそういう事にしておこう。
「じゃあ次にステータスプレートだが、ちょっと持ってみてくれ」
そう言われて手渡されたステータスプレートを見ると、
『ユージロー
HP:140/140
MP:220/220
体力:50
筋力:20
瞬発力:200
スキル
「鍛冶 Lv.1」
「鑑定」
「アイテムボックス」』
「おおぉぉ?」
ステータスなんて物があるなんて知らなかった。
女神から何の説明もなかったからな!
まあ、それは置いといて、表示されたステータスが凄いのかどうかよくわからない。
基準が分からないからな。
ただ、体力と筋力の値が低いというのは何となく分かった。
「この数値はどうなの?」
「お前、ステータスについて何も知らないんだな。まぁいいけど……
HPとMPの平均は年齢によるんだが、お前今いくつだ?」
「16?いや、17だったかも」
「そんくらいだと、HPとMPの平均は共に100、って所だ。体力以下は50くらいだと思ってくれたらいい」
俺の場合だとHPとMPは平均よりは多く、MPに至っては倍以上である。
かなり恵まれていると言えよう。
しかも極め付けは、瞬発力。
これは平均の4倍。
転移に付随する特典みたいなのが絡んでいるのかな?
まあ、どうでもいいけど……。
筋力に関しては気にしちゃいけない。
どれ程なのかは分からないが、平均の半分もないとなると、相当に低いと見るべきだろう。
「お前、本当に今まで何してたんだ?筋力が20って10になるかならないかのガキ並みだぞ」
ちょっと悲しくなってくる。
「筋力って鍛えれば伸びるんですよね?」
「ああ。だが伸びしろは人それぞれだ。傾向としては、生まれたときのステータス値が高ければ成長も早く、伸びしろもあると言われている」
となると、俺の今のステータスがその初期値のようなものだと考えると、筋力はあまり伸びそうもないようだ。
まあ、日常生活が出来ればいいや。
「まあ、犯罪歴もないし、街に入るのは認めよう。今、札を持ってくるから、ちょっと待っててくれ」
「札、ですか?」
「さっきも言ったが、税金は後払いでも払ってもらうからな。後日、金と一緒にその札を持ってこい」
「分かりました」
そう言うと、門番は奥の部屋に入っていった。
……と同時に戻ってきた。
「早っ!」
「?何言ってんだ?取って戻ってくるだけだって言っただろ」
「いや、本当にちょっとだとは思わなかったんですよ」
「……まあいい。これがその札だ」
一つのやや大きめの木札がテーブルの上に置かれた。
「よしっ、これで審査は終わりだ。行っていいぞ」
言われるままに出て行こうとして、一つどうしても聞きたいことがあったことに気付いた。
「……あの〜、冒険者ギルドがどこにあるか教えてくれませんか?」
そう、異世界では王道中の王道、冒険者ギルドだ。
とりあえずは冒険者ギルドに登録して税金とあと生活費を稼がないといけない。
後のことはそれから考えよう。
「?冒険者ギルド?何だそれは?」
まさかの展開だ。
最初から計画が破綻してしまった。
「いやいや、冒険者ギルドですよ。いや、言い方が違うのかな?探索者ギルド、とか?」
「そもそもギルドって何だ?」
たった今、希望はゼロとなった。
「俺は……これからどうすればいいんだ?」
「ああ、お前無一文だったな。お金を稼ぐアテがないってことか」
「そうです。どうしましょう?」
「そりぁ、お前、仕事斡旋所に行けばいいんじゃないか?」
「仕事斡旋所?」
「ああ、その人に合った仕事を探してくれるんだよ。日毎の仕事や長期の仕事も斡旋してくれる。まあ、詳しい事はそこで聞くんだな」
要するに、ハロー○ーク、みたいなもんだな。
とりあえず、そこに行ってから考えよう。
「ありがとうございます。とりあえずはそこに行ってみます。場所を示す地図みたいなものはありませんか?」
「ちょっと待て、今描いてやるから」
と言って、出来上がった地図を見ると、意外に分かりやすい。
「それではまたお金を払いに戻ってきます」
「おうっ!頑張れよっ、とその前にステータスプレートは返していけ」
「えっ、これは貰えるんじゃないんですか?」
「仕事斡旋所でちゃんとした物を貰えるから。それは持ち主が持っただけでステータスが表示されるから使いづらいぞ」
確かにステータスを隠したいときなんかもあるかもしれない。
「分かりました。じゃあ、ここに置いていきます」
そう言って俺は部屋を出た。
その数分後、俺は道に迷った。




