13. 帰り
レンタローと別れてから、本当にすぐ王城を出た。
案内はやはり俺の専属メイドさん。
「馬車を待たせてあります。そちらで転移屋まで向かいます」
そう言って馬車の所まで案内してくれる。
ここで別れるかと思いきや、まだついてくる。
まさか、ドムングルまでついてきたりはしないよね……。
「途中で何か行きたい場所があればお申し付け下さい。転移屋でドムングルまで転移なされるまで貴方のお世話をするのが私の仕事ですから」
なるほど。
つまり転移屋に着くまでの間でどこでも寄り道をしていいよ、ということだろう。
そう思って、窓から外の街並みを見ようとすると、街行く人が結構こっちを見てる。
「あの、皆こっちを見てるんだけど」
「この馬車は普段は王族が使われていますので、少々、街中では目立ってしまいます」
うん。
このメイドさんは「少々」と言ったが、多分だけど滅茶苦茶目立ってる。
それが分かると、俺はすぐさま窓のカーテンを閉めた。
「もうよろしいのですか?」
いや、こんな状況で街案内は御免だ。
もっとゆっくり街中を見回りたいからな。
という訳で、そのまま転移屋に直行する事にした。
〜〜〜
「こちらが転移屋ですね。それでは私はこれで失礼します」
「ああ、お疲れ様」
「いえ、また御用の場合は何なりとお申し付け下さい」
うん?
何か引っかかるな。
「あれ、君は今回だけ、俺の専属メイドじゃないの?」
「いえ、私は正式な貴方の専属です。なので、通常は王城の普通の一メイドですが、今後、貴方が王城に来られた時は貴方の専属メイドとなります。そういう訳ですので、今後もよろしくお願い致します」
なるほど、まあ、王城に用事がある時は助かるかもしれない。
「ああ、よろしく。じゃあ、俺は行くから。レンタロー君によろしく伝えといてくれ」
そう言って、俺は転移屋の中に入った。
〜〜〜
転移でドムングルに帰ってきた。
何だろう、何か安心する。
王城にいたから、気が休まらなかったのかもしれない。
あれ、そう言えばワレリー師匠の工房ってどこだっけ?
これ、結構深刻な問題じゃね?
俺、帰れないよ。
…………。
結局、近くの工房の人に聞く事にした。
するとすぐに分かった。
流石は世界トップクラスの腕前を持つワレリー師匠。
その工房の場所はすぐに判明した。
そして俺は聞いた通りに道を進み、ワレリー師匠の工房に到着した。
〜〜〜
俺が工房の中に入ると、ワレリー師匠は剣を打っていた。
カンッと音が工房に響く。
俺も一応は鍛冶レベルを10まで上げただけあって、その音だけで、ワレリー師匠の腕前の凄さを改めて感じる。
ワレリー師匠の作業が一息つくまで話し掛ける事はしない。
仮に話し掛けても反応しないと思う。
それだけ集中している。
少ししてワレリー師匠の集中が途切れた時を見計らって声をかけた。
「ワレリー師匠、只今帰りました」
「おお、無事に帰って来れたか。どうだった?何もなかっただろう?」
「はい」
「ならばよい。分かっとると思うが、明日からまた修行だからな。気を引き締めろよ」
ワレリー師匠は特にあれこれと聞いてこない。
俺が異世界から来たとか気付いているのかもしれないが、何も言ってこない。
説明するのが面倒だから俺としては非常に助かってる。
俺は自室に戻る前に少し剣を打っていく事にした。
二日間だけだったが、僅かな腕の鈍りを無くしておきたい。
明日から、また地獄の修行が始まる。
その僅かな鈍りが致命的になる可能性がある。
いや、確実になる。
このちょっとした怠りで自分の首を絞めたくない。
やれる事はやってから休もう。
〜〜〜
翌日、朝四時に起床。
地獄の修行が始まる。
〜〜〜
あれ、何だろ。
意外と辛くない。
いや、普通に考えると厳しい修行なのだが、鍛冶レベルが10になるまでの修行に比べると、そこまでではないように感じる。
しかも、夕方からは一人で打て、と言われた。
ワレリー師匠は別の部屋で剣を打っている。
つまりこれは監督がいない状況だ。
逃げる事だって可能。
……逃げないけどね。
ワレリー師匠の最後の一言を思い出す。
『もう俺が教える事はあまりない。後は自分で何が自分に足りてないかを考えろ』
言いたい事は分かる。
後は自分の道を進め、という事だろう。
まあ、やるだけやってみますか。




