11. 謁見
この世界に来てからの過去を振り返る。
何かやったか、俺?
今、目の前には兵士が二人。
俺を訪ねてきたらしい。
この世界に来て、関わった人は少ない。
そりぁ、買い物をした時に店の店員さんとは話をするが、深い関わりを持ったのは、アルートの門番さんとトンバ師匠、カールさんとここにいるワレリー師匠くらいだ。
何か犯罪をしたという記憶はない。
ならば、なぜ兵士が俺を訪ねてくるのか。
分からない。
とりあえず、話を聞く事にしよう。
「はい、ユージローは俺ですけど……」
「おお、貴殿がユージロー殿でしたか。早速ですが、王城まで来て頂けませんか?」
聞き間違いかもしれない。
「あの、今、王城って聞こえたんですが」
「はい、そう言いました」
どうしよう。
王城とか正直行きたくない。
だけど、ここで断ると兵士が襲ってきそう。
さっきから口調は穏やかだが、雰囲気?が全然穏やかじゃない。
何かピリピリしてるよ。
やっぱり行きたくない。
「あの……自分は今ここで鍛冶の修行をしているので、辞退させて頂けませんか?」
「先程はお願いという形を取りましたが、実は、連行せよ、という厳命を受けていまして、こちらとしましては貴殿を連行しないといけないのです」
……えっ。
強制ですか。
これはいよいよもって逃げられない。
「ああ、此奴に用ですか?」
すると、奥からワレリー師匠がやって来た。
「ええ、連行せよ、という命を受けていまして」
「やっぱり駄目ですよね、ワレリー師匠。俺の修行はまだ途中ですからね」
「ワレリー殿、これは王命です」
えっ、この命令は王様が出したの?
これはもう、ワレリー師匠が何を言ったって無理じゃない?
もう連れて行かれる事は決定した。
「ふむ……」
ワレリー師匠はそう呟いて、目を閉じる。
何か考え事をしているようだ。
「……分かりました。どうぞ、此奴を連れて行って下さい」
仕方がない。
相手はこの国の国王。
逆らってもどうしようもない。
「心配するな。悪いようにはなるまい」
俺の表情から気持ちを読み取ったかのようなワレリー師匠がそう俺に告げる。
俺は兵士二人に連行された。
〜〜〜
そして今、俺は『謁見の間』と言われる場所にいる。
そして目の前には如何にも王様といった雰囲気の人がいる。
そしてその近くには日本人?と思われる男の子がいた。
年齢は俺より2つ下といった感じかな。
恐らく、この子が勇者なのだろう。
実は、ここに来るまでに大体の事情は連行された兵士に聞いている。
いや、本当に安心した。
どうやら、そこの勇者がこの世界に来た時に国王に巻き込まれた同郷について話をしたらしい。
そしてその話を聞いた国王は国中を探していたらしい。
そして王都で身元不明の二人を見つけ、勇者に確認してもらったそうだ。
異世界に関する質問をすると、二人とも異世界から転移してきた事が判明。
残る一人を探していたのだが、王都を探してももういなかったので、第二の都市アルートを探す事にしたそうだ。
すると身元不明者が一人いた、という報告を受け、その行方を追っていて、俺に辿り着いた、という訳だ。
「本当にすまなかった」
まず、国王が謝る。
……あれっ、これって不味い事では?
国王ってそんな簡単に頭を下げていいの?
「大丈夫だ。この部屋には信頼の置ける者しか置いておらん。私の事をよく理解している者達だ」
俺、そんなに感情が表情に出るのかな。
ちょっとショックだ。
「それよりも本当にすまなかった。まさか勇者召喚に巻き込まれる者がいるとは……、いや、これは言い訳に過ぎぬな。私に出来る事があれば言うといい。何か力になろう」
良かった。
この国の国王はまともな人だ。
勇者召喚に巻き込まれた事の補償をすると言っている。
とは言っても、正直、特に要求する事もない。
今やってる鍛冶だって楽しいし、まだやる事だって一杯ある。
お金に困っている訳でもない。
本当に何もない。
「折角なのですが、今、特に要求する事はありません。現状に不満もないので」
「……そうか、ならば、また何かあったら言ってくれ。出来る限りの事はすると約束しよう」
そう言って俺は控えの兵士に連れられ退出した。
この11話から話の区切りを入れることにしました。




