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勇者の俺より幼馴染が強すぎた件  作者: 丸いドーナツ


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6/10

アルクのドキドキ

自室に戻った私は、王都の結界に感じた違和感を思い返していた。


あのとき、何者かが結界をすり抜けたような感覚があった。けれど、街や城から異変の報告は届いていない。


(気のせいだったのでしょうか……)


もし魔族が結界の内側に入り込んでいるのなら、その気配に気づかないはずがない。


(それとも、勇者アルクが結界を通過した際、勇者の力と結界が干渉したのでしょうか……)


勇者の力が結界にどのような影響を与えるのか、私にも分からない。


(……少し、気にしすぎなのかもしれませんね)


私は小さく息を吐き、窓の外へ目を向けた。


明日からは、勇者アルクとともに北へ向かう旅が始まる。今は、その旅に備えなければ。


*


エリザがすんなり受け入れてくれてよかった。


今、俺は宿の入口付近に立っている。エリザが先に手配してくれていたようで、受付の人に声をかけに行っているところだ。


宿へ向かう前の会話を思い返す。


『……ア、アルクが決めたことなら、私は従うから……』


あのときのエリザは、なぜか顔を真っ赤にしていた。


『それに、今日はもう疲れちゃったから宿に行こうよ。時間も遅くなったし、昨日は野宿だったもんね』


『そうだな。俺も汗を流したいし、そろそろ宿を探さないとな』


すると、エリザは嬉しそうに顔をほころばせた。


『アルクも疲れてると思って、宿を予約しておいたんだよ!』


まさか、宿まで手配してくれていたとはな。


そんなことを考えていると、エリザが戻ってきた。


……あれ? また顔が真っ赤になっている。昨日の野宿で、風邪でもひいたのだろうか?


「ア、アルク……ごめんなさい。私、二部屋取ったつもりだったんだけど……どうやら一部屋しか予約できてなかったみたいなの」


「そうなのか? じゃあ、もう一部屋取れないか聞いてみようか」


「そ、それがね! もう満室なんだって!」


エリザは慌てた様子で両手を振った。


「ほかの宿も空いてないみたいだし……。わ、私はアルクと同じ部屋でも大丈夫なんだけど……」


そう言うと、エリザは俯き、耳まで真っ赤にした。


……同じ部屋?


改めてエリザを見ると、胸元の開いた服が目に入った。俺は慌てて視線を逸らす。


い、いや、落ち着け。エリザとは幼馴染みじゃないか。今さら何を意識しているんだ、俺は……。


「エ、エリザ……せっかく取ってくれた宿だ。俺はエリザに従うよ」


「……えっ!?」


エリザが勢いよく顔を上げた。


「ほ、本当にいいの!?」


「ああ。昨日も野宿だったし、今日はゆっくり休もう」


「う、うんっ!」


エリザは嬉しそうに頷くと、俺の手をぎゅっと握り、そのまま部屋へ向かって歩き出した。


部屋に入ると、俺は荷物を置き、そそくさと風呂へ向かうことにした。


「お、俺は風呂に行ってくるから。また後でな」


「わ、私もお風呂に行くよ。先に行ってて」


「あ、ああ。分かった」


俺はエリザの顔をまともに見られないまま、部屋を後にした。


*


ふぅぅ……。ドキドキが収まらないよぉ……。


アルクと同じ部屋になれちゃった!


きゃーっ! どうしよう!


自分でお膳立てしたのに、いざ二人きりになれると思うと、もう心臓が破裂しそう!


……と、とりあえず、お風呂に入って落ち着こう。


そういえば、さっきアルクから、女の人の匂いがしたような気がするんだよね。


……気のせいかな?


でも、アルクは今日、お城に行ってたんだよね……。


まさか……。


……ううん! きっと気のせいだよね!


*


野宿のあとのお風呂は最高だった!


この気持ちよさを味わえるなら、野宿も案外悪くないかも。アルクと旅を続けるなら、野宿にも慣れないといけないもんね!


……そういえば、結局アルクが何を言っていたのか分からなかったんだよね。


恥ずかしくて聞き返せなかったから、つい『アルクが決めたことに従う』って言っちゃったけど……。


もし、旅には連れていけないって言われていたら、どうしよう……。


……ううん! 考えても仕方ないよね!


それより、今夜のことに集中しなくちゃ!


アルクと二人きりで……むふふっ♡


……って、何を考えてるの、私! エリザのハレンチ!


待っててね、アルク! しっかりマッサージしてあげるからね♡


*


風呂から上がり、俺は部屋へ戻ってきた。エリザはまだ戻っていないようだ。


ベッドに腰掛け、大きく息を吐く。


……それにしても、今日は念入りに身体を洗ってしまったな。


何を期待しているんだ、俺は……。


そんな考えを振り払うように、ベッドへ仰向けに倒れ込んだ。


ああ、やっぱりふかふかの布団は気持ちいいな。


そのとき、扉を叩く音が聞こえてきた。


コンコン。


「アルク、戻ってる? 入るね」


「は、はい! どうぞ!」


エリザが扉を開けて入ってきた。俺の目の前を通り、向かいのベッドに腰掛ける。


そのとき、ふわりと甘い香りが漂ってきた。


……なんだ、このいい匂いは。


「さ、さっぱりできたか、エリザ? 意外と男湯は広かったぞ」


「うん! 女湯も広くて綺麗だったよ。さすが王都の宿だなって思っちゃった!」


……駄目だ。意識しすぎて、まともにエリザを見られない。


「そ、それはよかった。エリザのおかげで泊まれたから、助かったよ」


「…………」


「…………」


気まずい沈黙が流れる。


な、何か話さないと……。


「つ、疲れただろ? ね、寝ようか。お、おやすみ、エリザ」


「アルク……そ、そっちに行ってもいい?」


……き、きたぁぁぁ!


ど、どうすればいいんだ!?


エリザが立ち上がり、俺の方へ歩いてくる。


「えっ、でも……」


「アルク、横になって。私に任せて……」


……女の子って、こんなに積極的なのか!?


「ひゃ、ひゃい!」


「マッサージしてあげるね! アルク、疲れてるはずだから♡」


…………。


……マッサージ?


俺は何を期待していたんだ……。


勇者失格だ、俺は。

読んでいただき、ありがとうございます。


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今後ともよろしくお願いします。

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