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勇者の俺より幼馴染が強すぎた件  作者: 丸いドーナツ


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アルク対バール

(こっちが本物の勇者か……。はっ、だったら何なんだ、あの規格外の女は!)


バールはアルクの背後にいるエリザへ視線を向けた。


(あの小僧が一人で相手をするつもりなら、倒すのは容易い。だが、あの女がいるとなると話は別だ。ここは一度、引くか……)


アルクが剣を振りかざし、バールに向かって駆け出した。その背後では、エリザがアルクに向けて防御魔法をかけている。


(あの女、小僧に魔法をかけているのか……。多少は腕が立つようだが、俺の敵ではない)


バールはアルクの動きを見据えた。


(カウンターの一撃で仕留める。そして、あの女が動く前に撤退だ)


バールは天を仰ぎ、雄叫びを上げた。


「アオォォォーッ!!」


その声に呼応し、生き残っていた魔獣たちが一斉にエリザへと襲いかかっていった。


*


「アルク! あの魔獣の毛は鋼のように硬くなってる! 斬るなら、渾身の一撃を食らわせてやって!」


背後からエリザの声が聞こえた。


(エリザからの助言か……)


剣が俺の身体から溢れる力を吸い取るように、蒼い輝きを増していく。


(この剣なら、鋼だろうが何だろうが斬れる。あとは速度に集中するだけだ!)


俺は石畳を力いっぱい踏み込んだ。


バキッ!


足元の石畳が砕け、その反動で身体が弾丸のように飛び出した。剣を構え、バール目がけて一直線に突き進む。


バールは俺の動きに合わせ、巨大な爪を振り抜いた。


その瞬間、バールの爪に何かが当たり、弾かれた。


「なにぃっ!?」


「いけぇぇっ! 超残光斬!」


蒼い光をまとった剣が、バールの巨体を真っ二つに切り裂いた。


「ば、馬鹿な……! 獣王の俺様が……グアアアアッ!!」


(獣王……獣たちの王を、俺が倒したのか……!)


「きゃー! アルク、助けて!」


背後からエリザの悲鳴が聞こえた。


振り返ると、生き残った魔獣たちがエリザに襲いかかろうとしていた。


俺はすぐさま踵を返して駆け寄り、魔獣たちを次々と斬り伏せた。


「エリザ、もう大丈夫だ!」


その言葉を聞いた途端、エリザが俺の胸に飛び込んできた。


「アルク、ありがとう! 助けてくれて……あっ!」


力を一気に使った反動だろうか。エリザの身体を支えきれず、俺はそのまま押し倒されてしまった。


「ご、ごめんなさい……」


気づけば、エリザの顔がすぐ目の前にあった。


(ち、近い……!)


いや、待て。なんだか、さらに近づいてきていないか……?


「えっほん! ゴホン!」


突然、背後から咳払いが聞こえた。


「アルク、無事でしたか。よかったです」


エクシア様の声だった。


その瞬間、エリザが慌てて俺から飛び退いた。


「イタタタ……!」


どうやら、背中の傷が痛んだようだ。


エクシア様はエリザの様子を見て、心配そうに眉を寄せた。


「あなたたちは一度教会へ戻り、手当てを受けなさい。私は兵士たちと被害状況を確認し、怪我人の治療に当たります」


「わかりました。エクシア様もお気をつけて」


エクシア様は小さく頷くと、兵士たちのいる方へと歩き出した。


そのとき、王都の入口から一台の馬車が入ってくるのが見えた。


*


アルクとエリザが教会へ向かっていくのを見届け、私は周囲に目を向けた。


辺り一面に、激しい戦いの跡が広がっている。石畳は砕け、城壁の一部は崩れ落ちていた。あの塔が倒れずに済んだのは、せめてもの救いだろう。


少し離れた場所には、胴体を真っ二つにされた巨大な魔獣が倒れていた。


(この魔獣が、王都の結界を破ったのでしょうか……)


それほどの力を持つ魔獣を、アルクが倒したというのか。


(本当に、無事でよかった……)


けれど、次も無事に済むとは限らない。勇者であるアルクを、これ以上危険にさらすわけにはいかない。


(これ以上、あの子に危ない橋を渡らせるわけにはいきません……)


そのとき、先ほど王都に入ってきた馬車が、門を抜けたところで止まった。


御者台から男が降り、続いて馬車の中から子供たちと一人の女性が降りてきた。女性は子供たちを連れ、こちらへ向かってくる。さらに二人の男が馬車から降り、一人が馬の手綱を取った。


その女性の姿を見て、私は思わず目を見開いた。


(……アーシェ様?)


間違いない。勇者の出現を予言した前聖女、アーシェ様だった。


私は急いで歩み寄った。


「アーシェ様! どうされたのですか? それに、その子供たちは……」


アーシェ様は俯き、沈痛な表情を浮かべた。


「……アズール村が、魔物に襲われたの」


「アルクの故郷、アズール村が……?」


「子供たちだけは、地下に匿われていて助かったわ。でも……」


アーシェ様はそこで言葉を詰まらせた。


すると、傍らにいた剣を携えた男が、代わりに口を開いた。


「村はひどい有り様だった。生き残っていたのは、この子供たちだけだ。亡くなった村人たちは、俺たちで弔ってきた」


「そんな……」


私は子供たちへ目を向けた。幼い子供たちが、互いに身を寄せ合っている。


男はさらに言葉を続けた。


「俺たちは、世界各地で魔物の侵略がどこまで進んでいるのかを調べていたんだ。だが、滅ぼされたのはアズール村だけじゃない」


「……北のロディニア王国が滅ぼされたとも聞いています」


その言葉に、男は歯を食いしばった。


「くっ……村だけではなく、国までもか……」


アーシェ様は周囲の惨状を見渡し、私に向き直った。


「エクシア、王都も襲われたようね。勇者は今、どこにいるの?」

読んでいただき、ありがとうございます。


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