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勇者の俺より幼馴染が強すぎた件  作者: 丸いドーナツ


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11/13

アルクの覚醒

(この魔獣だけは絶対に許さない……! 村長、村のみんな……どうか無事でいて)


先に動いたのはバールだった。


巨体からは想像もつかない速さで突進してくる。その勢いで足元の石畳が剥がれ、砕けた破片が宙を舞った。


次の瞬間、バールは残像を残すほどの速さで両腕を振るい、左右から鋭い爪を繰り出してきた。


私は左右の手を伸ばし、迫り来る爪をそれぞれ掴み取った。


「なっ……!?」


そのままバールの巨体を持ち上げ、勢いよく石畳へ叩きつけた。


轟音とともに石畳が砕け、無数の破片が辺り一面に飛び散った。


「ガハァッ!」


バールは口から血を撒き散らした。だが、鋼のような体毛に覆われた身体には、傷一つついていなかった。


バールはよろめきながら後ずさった。その表情には、明らかな焦りが浮かんでいた。


私は片手をバールに向けて掲げ、魔法を唱えた。


「ダークフレアー!」


足元の石畳が凄まじい熱で蒸発し、漆黒の炎が渦を巻きながらバール目がけて襲いかかった。炎が通過した場所の石畳は、次々と溶けていく。


「グアアアアッ!!」


バールが雄叫びを上げると、周囲の魔獣たちが次々とその前に飛び出した。魔獣たちはバールの盾となり、漆黒の炎に呑み込まれて焼き尽くされていく。


魔獣たちを焼き払い、わずかに勢いが弱まった炎に向かって、バールが凄まじい咆哮を放った。


その衝撃で炎の進行が一瞬止まった。しかし、漆黒の炎は再び渦を巻き、バールへと迫っていく。


「ぐっ……!」


バールは間一髪で身をかわした。


標的を失った炎はそのまま突き進み、王都を囲む防壁に激突した。凄まじい熱によって石造りの防壁が瞬く間に蒸発し、大きな穴が開いた。


「チィッ、なんて奴だ……。勇者になりたてのはずだろうが!」


(このまま魔法で戦ったら、街にも被害が出てしまう。だったら、接近戦で決着をつける!)


私は自分自身に強化魔法をかけた。


「プロテクト、オーバーソウル!」


身体に力がみなぎる。私は地面を蹴り、バールとの距離を一気に詰めようとした。


しかし、バールは地面に向かって凄まじい咆哮を放った。


衝撃で石畳がめくれ上がり、砕けた破片と土埃が辺り一面に舞い上がる。視界が遮られ、バールの姿が見えなくなった。


(目くらまし……?)


次の瞬間、鈍い破壊音が響いた。


土埃の向こうに目を凝らすと、バールが近くにあった見張り塔の下部を拳で殴りつけていた。


塔全体が大きく揺れ、石造りの壁に亀裂が走る。やがて塔はゆっくりと傾き始めた。


(あれが倒れたら、被害が大きすぎる……!)


私は倒れかけている塔とバールを交互に見た。


(……仕方ない。乗ってやるか)


すぐさま塔のもとへ駆け寄ると、両手を突き出して傾いた塔を受け止めた。


そのまま塔を持ち上げ、元の位置へ戻すと、地面に向かって勢いよく押し込んだ。


ドンッ!


重い音とともに塔の土台が地面へ沈み込み、傾きが収まった。


だが、その瞬間――。


背後から、バールが迫っていた。


塔を支えるために両手が塞がっている私の背中目がけて、バールが巨大な爪を振り下ろした。


鋭い衝撃が背中を走り、私は大きく弾き飛ばされた。


「くっ……!」


石畳に叩きつけられ、身体が地面を滑っていく。背中には大きな爪痕が刻まれ、傷口から血が滲んでいた。


(……やってくれたわね)


身体を起こそうとした、そのときだった。


「エリザ!」


聞き慣れた声が響いた。


振り向くと、アルクがこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。


アルクは私のそばに膝をつくと、慌てて身体を抱き起こした。


「エリザ! なんで一人でこんなところにいるんだ!? 怪我までして……大丈夫か!?」


「アルク……」


アルクは私の背中の傷を確認すると、表情を険しくした。そして、ゆっくりと立ち上がり、バールに向かって剣を構えた。


(……アルクが怒ってる)


その横顔を見て、私は思わず息を呑んだ。


(こんなに怒っているアルク、初めて見た……)


「なぜ街を襲う? 何の関係もない人たちを傷つけて、何がしたいんだ!」


アルクの声が響き渡った。


そのとき、アルクの右手の甲に刻まれた勇者の印が、強い光を放ち始めた。


印が広がるように大きくなり、複雑な紋章が浮かび上がっていく。


やがてアルクの身体を蒼い光が包み込み、手にしていた剣も、それに呼応するかのように同じ色に輝き始めた。


私はその光景を、ただ見つめていた。


アルクは剣をバールに向け、静かに言い放った。


「貴様を倒す」

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