ep11 最後の夜の記憶 〈7〉
私と佐紀がコンビニから研究室へ戻ると、優花が「おかえり!」と元気な声で挨拶をした。
「二人ともコンビニで何買ったの?」
優花が興味津々な顔をして私たちを交互に見る。
「私は、ホットココアだよ」
「私はお茶とシュークリーム一つー」
優花は「またホットココア?」と言って笑う。
時刻は深夜二時頃、もうそろそろ皆も眠くなり始めた頃合い。私もあくびをかきながらホットココアを口に入れていた。
「今日、本当に隕石が落ちるのかな? 私信じられないよ」
「それな、私だって信じてないもんな」
「明日になったら私たちは……」
優花は何かを言いかけたが口を塞いだ。
「これ食べ終わったら、寝よっか?」
私はテーブルに置いてあるスイーツ三つに視線を向けた。
「そうするかなー」
佐紀は先ほどコンビニで買ってきたシュークリームを口に含ながら言う。
優花はため息をつくと、小さな声で言う。
「寝ながら死にたいって思うのは私だけ? 痛いの嫌なんだけど」
私も優花の意見に同感する。出来れば痛みもなく、死にたい。
「私も痛いのやだよ、だから優花と同じく、死ぬときは寝ていたいな」
「やっぱりみんな考えは一緒だな! 三人で同じ布団で寝ようぜ! 最後になるかもだしな」
三人で一緒の布団で寝る、私たちがまだ保育園とか、小学校に通ってる時に家でお泊りをして、一緒に寝たことを思い出した。
「そういえば、まだ小さかった時に、よくお泊りして一緒に寝たよね」
「あー、あったなー!」
佐紀が大きな口を開けて言う。
「その時は、本当に何も考えずにただ遊んでたよね、あの時に戻りたいなー、過去に戻りたいよ」
明日、もし隕石が落ちなかったら、皆が死なない未来があったのなら、また青い空の下で、何も考えずに遊び散らかしたいと強く思う。
「明日生きていたら、また外でいっぱい遊んで、いっぱい同じ時間を過ごそうよ」
「麻衣どうした急に、……普段そんなこと言わないのにな」
佐紀がそう言うと、優花が突然立ち上がり、ゆっくりと口を開いた。
「明日天気になーあーれ?」
意味不明なことを急に言うものだから、私は笑いに耐え切れなくなった。
「ちょっと待って、面白すぎるんだけど!」
「急に立ち上がったかと思ったら、意味不明過ぎるな」
佐紀も同じく笑った。
「あ、食べるもん無くなったなー」
佐紀が最後のスイーツを食べ終わり、悲しそうに言う。
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「そうだな、今日で一年分の糖分を取ったと思う」
「明日生きてますように、……明日生きてますように!」
優花は手を合わせて呪文のように唱えた。
私はふと疑問に思った、そういえば布団を持ってきてないような気がして。
「あ、布団どうしよう、そもそも持ってきてないね?」
私は二人へ交互に視線を交わす。二人は「そういえば」と言う顔をしていた。
「どうしよう、布団なしとか最悪の一夜だよ」
優花ががっかりした顔で言う。
「あ、里奈さんの仮眠用布団とかないかな? ここで一晩過ごすこともあるって言ってたしな」
「それ本当? 探そう!」
優花が目を輝かせて言う。
「とりあえず、里奈さんに連絡入れたほうがよくない? 勝手に使うのも悪いし、ある場所がわからないし」
私はそう佐紀に提案をすると、佐紀が納得した表情をして口を開く。
「確かに場所は知らないから聞いてみるな!」
使っていいかも聞いてほしいけど、まあいいか。
「既読はっや! もう着いたよ」
佐紀がメッセージを送って数秒もたたないうちに既読が付いたと言う。スマホ見てたんだろうな。
「あ、箪笥に閉まってあるから使っていいよだって、箪笥一つしかないからわかりやすいな」
研究室の入口付近に箪笥が置いてある、中に何が入っているのか気になっていたけど、布団だったのか。
そんなことを考えていると、佐紀が箪笥を開けて確認していた。見てみると、しっかり布団が閉まってあった。
「あったな! これで寝れる!」
「よかったー」
優花が安堵した表情を浮かべて言った。
「よーし、敷いたから入ろー」
佐紀が床に布団を敷いてくれて、寝る準備が整った。これが最後の睡眠かと思うと、なんだか変な気分になる。
「あ、そういえば私お母さんにメッセージ送らないと」
私はスマホを起動させ、メッセージアプリを開いて文字を打つ。
『今日は友達と泊まります。お母さんいつもありがとう、直接伝えられなくてごめんね、また明日会えたなら、直接感謝を伝えます』
送信ボタンを押すと、途端に目から涙が流れ出した。
「麻衣、大丈夫?」
優花が心配そうな顔をして言う、私は「大丈夫だよ」と泣きながら笑顔を作って言った。
私は落ち着かせるために布団に入る。それを見た二人も同じ布団に入ってきた。
配置は、優花が左で、私が真ん中、右が佐紀だ。皆で止まった時、なぜかいつもこの配置で寝ていたっけ、特にそうするって話はしてないけどね。
「じゃあおやすみな、優花、麻衣」
「おやすみ、佐紀、麻衣」
「おやすみ、優花、佐紀」
私たちは深い眠りについた。
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