権力
家に帰って、次女とCくんのことについて話した。
「Cくんとは仲良いの?」
「うん、友達。いつも優しくしてくれる」
「色々と、助けてもらったりしてる?」
「よく、手伝ってくれたりしてる」
「そっかー」
よく思い出せば、たぶん、一年生の頃から、このCくんとは同じクラスかもしれない。何事かあると、Cくんの名前を次女から聞いたと思う。
他人の顔と名前が覚えられないので、たぶん、忘れちゃうけど。
ついさっき会ったばかりだけど、ちょっとだけなので、もう、Cくんの顔は覚えていない。名前は辛うじて、覚えているくらいだ。
年寄だから、色々と足りないし、私自身、そこまで頭が良くないから、仕方がない。
典型的ないじめられっ子なCくん。あの子は、昔の私、というより、私の兄だな。逆らうことも出来ず、何をされても、笑って受け流すしかない。
きっと、中学では、酷いイジメにあうだろうな、ということは、見ていてわかる。
長女の同級生には、そういう心配がなかった。ガキ大将みたいな子が二人いたんだけど、短気で暴力的なんだけど、弱い者いじめはしない、どんな教師もきちんと敬う、いいガキ大将だった。
次女の同級生には、卑怯で口だけの、強い相手にはへりくだるイジメっこがいる。それが、AくんとBくんだ。
手は出さない。そういうのは頭が悪い奴だ、と思っている。そして、卑怯に口で相手を貶めて、いざとなったら、親とか教師を使う。大きい声で、さも正しい、と言い放つのが、このAくんとBくんだ。
Cくんの未来は、相当、辛いものになるな。そう見えた。だけど、それを私が防ぐことは不可能だ。こういうのは、やっぱり、それなりの権力が必要だ。
私自身、権力によってイジメを受けたけど、より強い権力で、小学校五年生の頃、イジメから解放された。その強い権力は、たぶん、私が大学卒業後も続いていたんだろう、と思う。
私だけ、いい道を歩いている。
その権力も、十年前になくなった。大往生だった。名刺代わりとなる物を生前、色々といただいた。
その名刺代わりは、今も使えるかはわからないけど、いざとなったら、それを娘のために使おう、と思った。




