<既に賽は投げられた?>
だが、ジェムの話はゴンベの予想とは違っていた。
『我々は、随分昔から人類の行いを見続けてきたニャン。ある時は、有志が技術を示したり、知識を提供したりしたニャン。だがその結果は、人類は我々の技術を利用して、戦争の道具に使い始めてしまったニャン。なので以降は一切の干渉を止めることにしたニャン』
そこで一息つくと、ジェムは更に語気を強めながら続けた。
『更に一時は、別の有志がわざわざ警告した事もあったニャン。しかし、あろう事か人類は、自分達に都合の悪い話は秘匿してしまったり、都合の良いように改竄したニャン。このような愚かな行為を続けていると、滅亡の憂き目に遭うとまで忠告したニャンよ』
「それって、まさかファティマの予言の事じゃ無いよね?」
ゴンベは恐る恐ると言う感じで聞いた。
『ゴンベも知っていたニャン?あれは我らの有志が、戦争に明け暮れる人類への警告だったニャン。なのに、最も重要な最後の忠告を、人類は握りつぶしたニャン。正直許せない行為だニャン』
「第三の予言の事だね。確か1960年以降に発表するように言ったのに、バチカンが発表を拒んで今日まで至っていると言う話だよね。あれって、もしかしてジェム達宇宙人との関係が語られていたりしたのかな?」
『そうだニャン。しかし、その内容を公開すると、神の存在自体が覆ると言う事で、握りつぶしたみたいだニャン。そんな事をしても、意味の無いことニャン。むしろ事態を悪化させているだけニャン』
「でもさ、まだまだ人類が宇宙進出するのは先の話だからさ……」
険しい表情で語るジェムを見て、思わずゴンベは人類を擁護するように訴えかけた。
『それは違うニャン。重要なことは、人類が再び月面着陸を目指し、明確に火星まで行き着くことを宣言した事ニャン』
ジェムは力強い言葉で語った。
「そ・それは……」
ゴンベも何か言おうとしたが、うまい言葉が見つからず、また黙ってしまった。
『ゴンベはまだ先の話と言うが、人類の技術の進歩は加速度的に進んでいるニャンよ。ゴンベが思っているよりも、早い段階で月旅行も火星到着も実現するニャンよ。それが我々の出した結論なのだニャン』
「もう、そこまで話は進んでしまっているのだね?」
ゴンベは妙に体の力が抜けていくように感じながら、力なく呟いた。
『そうだニャン。もう正直言って時間が無いニャンよ』
「……」
ゴンベは言葉が見つからなかった。
『そこで、今我々は人類をどう扱うべきか?議論をしている最中ニャン。なのでゴンベの意見も参考にしたいと思ったニャン。俺が見た中では、最もゴンベの魂が純粋だったニャン。できれば俺は人類を可能な限り擁護したいと思っているニャ。だから、少し力を貸して欲しいニャン』
ゴンベはジェムの言葉に、力なく頷いた。
「分かったよ。俺には何もできないと思うけど、何かジェムに役立つことがあるなら、協力させてもらうよ」
『ありがとうニャン。ゴンベなら、そう言ってくれると思っていたニャン』
ジェムの表情が少し柔和になったようである。
「でもさ、具体的に何をすれば良いのだい?俺には見当がつかないのだけど」
戸惑いの表情を浮かべながらゴンベが聞いた。
『うん。基本的には、俺の話し相手になってくれれば良いニャン。俺の話を聞いて、人類として、どう感じるか?等を聞かせてくれれば、それを参考にしたいニャン』
「まあ良いけど。俺の感想なんて役に立つのかな?」
ゴンベの表情は半信半疑と言う感じである。
『大丈夫ニャン。ゴンベの意見は的を射たものが多いし、偏りも少ないように感じるニャン。人類代表の意見として俺は尊重するニャンよ』
「おいおい!人類代表なんて、おこがまし過ぎるよ。そんな風に言われたら、俺は何も言えなくなってしまうよ」
両手の手のひらをヒラヒラ動かしながら、ゴンベは恥ずかしそうに答えた。
『分かったニャン。人類代表は取り消しニャン。単なる一人類の意見と言う事で聞かせてもらうニャン』




