<メン・イン・ブラックか?>
8月も末になったが、まだ猛暑日が続いており、まだまだ蒸し暑さに耐える日々であった。
先日ジェムから、『近々俺の仲間が、ゴンベに話を聞きに来るから、悪いけど少し相手をしてやってほしいニャン』と言われたので、今日は午前中から買い物にも行かずに、家で待機していた。
すると10時頃になって、ジェムからの念話が届いた。
『今から仲間が来るニャン。玄関で出迎えて欲しいニャン』
すぐに黒塗りの車が家の前に止まり、中から真っ黒なお揃いのスーツに、黒いネクタイ。そして顔にはサングラスを掛けたエージェント風の二人組が現れた。
(ウハッ! まるでメン・イン・ブラックみたいだな……)
ゴンベが内心思っていると、ジェムから念話が入った。
『ゴンベ、なにしているニャン。早く二人を家の中に迎えるニャンよ』
その声で、慌ててゴンベは玄関の中へと二人を招き入れ、二人を2階のリビングへと案内した。当然ジェムも一緒にリビングへ入り、サッサとテーブルの上に乗って、いつもの位置にキチンと座っている。
ゴンベは自分と二人にはコーヒーとクッキーを出し、ジェムにはいつも通りに猫用のおやつと白湯を用意して出した。
そして席に座ると、改めて訪問客の様子を伺った。
(やっぱりメン・イン・ブラックのメンバーそのものだよな)と内心思って、小声でジェムに聞いてみた。
「なあジェム。この二人は何時も、この格好をしているのか?」
するとジェムは、チラッと二人の方を見てから答えた。
『やっぱり変に見えるかニャン? 二人には、普段の格好で良いと言っておいたのだがニャン。どうも、何か勘違いしているようだニャンよ』
そう言うと、軽くため息をついた。どうやらジェムの意思では無いようだ。
その後、少しの沈黙があったが、二人は何かをコソコソ話し合うと、意を決したように質問をしてきた。
『ゴンベ殿はジェム様から、我らの計画の事なども聞いていると思いますが、率直に言って、我々に対しては、どの様な印象を持たれているのでしょうか?』
「印象ですか? そうだな……改めて聞かれると、なんと答えれば良いのだろう?」
そう言うとゴンベは少し考え込むような様子を見せた。
しばしの沈黙の後、ゴンベが口を開いた。
「最初は少し驚いたけど、まあ、ある意味人類の自業自得だとも思うから、どの様な裁定がされても、俺は甘んじて受け入れようと思っていますよ」
そう言うと、ニッコリと微笑んだ。
その回答は、黒服の二人には意外だったようで、再び顔を見合わせて、何やらゴンベの分からない言語でコソコソと話し合っていた。
『我々の一つの案として、温和な性格の人類だけを残して任せれば、将来的には我々と共存できるようになるのでは無いか? とも考えているのですが、それに関しては、ゴンベさんとしては、どう思われますか?』
「そうだな……私個人としては、できれば温和で自然を愛する性格の人類だけが残れば、今よりは遥かに皆さんとも良い関係が作れると思いますよ。勿論、そのためには、少し皆さんの協力もお願いする必要はありますけどね」
と答えた。
これには黒服さんも、先程よりは違和感が無かったのか、むしろホッとしたような表情をして頷いていた。
その後もしばらくは、ゴンベからの質問で、人類の社会での暮らしについてや、人類の中にも親しい友人はいるのかなど、世間話のような事を話し合って過ごした。
やがて帰る時間になったのか、二人は、
『突然お邪魔してすみませんでした。有意義なご意見をお聞かせいただき、ありがとうございました』
と礼儀正しくお礼を言ってきた。
そして迎えの車が来たので、ゴンベも一緒に玄関まで出て、ジェムと並んで車が視界から消えるまでお見送りをした。
「ふう。なんか緊張して、変なことばかり言ってしまったね」
ゴンベは自分でも自覚が有ったようで、ジェムに対して弁明した。
『まあ、ゴンベらしいと言えばゴンベらしかったニャン。でも、かえって彼らは少し人間を見直したかも知れないニャン』
「そうなのか? ところで、あの二人ってどういう宇宙人さんなのだい?」
『一人は過激派のガイアス星人で、もう一人は少数派のナロウニ星人だニャ。二人ともジェム達の中の評議委員だニャ』
「へぇ、過激派と言う感じはしなかったね。二人とも礼儀正しいし……てかさ、ジェムの方が、もしかして彼らより偉いの?」
『偉いかどうかは分からニャイが、ジェムは一応地球監視員の監視長だからニャ。それなりの立場ではあるニャン』
「監視長さんだったのか。それなら、もう少し敬意を示さないといけないね」
そう言いながらも、黒猫姿のジェムが可愛らしくて、思わずニヤけてしまうゴンベであった。




