<月面基地の真偽>
8月のある日。今年の夏も猛暑日が続き、地域によっては酷暑日まで到達することも少なくなかった。
そんな中でも、黒猫のジェムは時々ゴンベの家を訪問していた。
『あ~涼しくて良いニャン』
リビングに入るなり、ジェムは気持ち良さげに伸びをした。夏場のリビングは24時間冷房中であった。これはリビングに置いてある2台の水槽の為に、夜間もエアコンを止めずにいるからである。
ゴンベはジェムにおやつと白湯を出して、自分はクッキーを摘みながらコーヒーを飲んでいる。
ジェムはおやつを食べきり、白湯で口の中をサッパリさせたのか、しきりに前足で顔を洗っていた。
そこで唐突にゴンベはジェムに質問した。
「なあ、良く都市伝説界隈ではさ、月に宇宙人の基地があると言っているけど、実際のところはどうなのだ?」
『ん? 月面基地なら色々と有るニャ』
「やっぱり有るのか? それは月の裏側で発見された、巨大な建造物の事か?」
ゴンベは興奮したように、ジェムに詰め寄ってきた。
ジェムは少し鬱陶しそうな顔をしながら否定した。
『違うニャ。ゴンベの言う巨大建造物は、単なる巨大な山だと思うニャ』
「なんだ……違うのか?」
ゴンベは一気に興味が薄れたかのように、黙り込んでしまった。
が、少しの間を置いて、再び質問した。
「だったらさ……人類が月面に基地を作り出したりすれば、今度はジェム達の基地も、すぐに存在が知られてしまうのでは無いか?」
『大丈夫ニャ。人類に発見されるような、下手な作りはしてないニャンよ』
ジェムは胸を張るように、ドヤ顔で答えた。
「そうなのか? え? 何かでカモフラージュしているとか?」
『そうだニャ。と言うか、まず基地は月面にはないニャ。地下の巨大な空洞内に作られているニャン』
「地下か……でもさ、地下も確かレーダーで探査しているって聞いているぞ。既に巨大な地下空洞が多数あるとも公表されていたと思うけどな」
『レーダー探査では発見できないように、基地のある空洞内は、特殊コーティングされているから、そもそも空洞だと認識されないニャン。そこの地下には何も存在しないとしか見えないから、その地点は人類もそれ以上の調査は行わないニャンよ』
「なるほどね……でも、円盤とかが出入りすれば、やはり分かってしまうのでは?」
『出入り口も完全にカモフラージュされているし、円盤自体もステルスコーティングされているから、よほど強力な監視装置でも無い限りは、人類に発見される確率は低いニャン』
「へぇ~……流石は科学力が半端ないね。それじゃあ、仮に人類が月面基地を建設しても、ジェム達には大きな問題にはならないのだね?」
『まあ、全く問題が無いとは言え無いニャン。それだけ近くに存在し合うことになるからニャ。できれば人類には月面に常駐はして欲しく無いニャンよ』
「まあ、そりゃそうだよな。でも、このままだと数年以内には、確実に基地建設まで進んでしまうだろうね」
『そうならないように、ジェム達も急いでいるところニャンよ』
そう言うと、喋り疲れたのか、白湯の入っていたお皿をカタカタ鳴らし、お代わりを催促してきたので、ゴンベはおやつと白湯のお代わりを用意した。
その後も、しばらくはまったりとお茶を楽しみながら、他愛も無い会話を楽しむと、ジェムは飼い主さんが戻る頃合いを見計らって、家へと戻っていった。




