表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祟られ体質の俺、疫病神仕込みの呪術で、世の中の不幸を無双します!  作者: 書仙凡人
新天地での不幸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/66

五十八の巻 死の呪い

   [五十八]



 幸太郎達はようやく耶摩蘇村にある伊澤の家に到着した。

 今の時刻は午後3時頃。

 東京は雨模様じゃったが、この耶摩蘇村は晴れておった。

 日もまだまだ高く、暑そうな感じじゃ。

 蝉も「ミンミン」と、よう鳴いとるわ。

 まぁそれはさておき、伊澤の家に行くと、既に七星剣と鏡の準備は出来ていた。

 そして、伊澤もそこで合流し、幸太郎達は山奥の祠へと向かったのである。

 ちなみに、幸太郎は止めたんじゃが、千尋達も来るようじゃ。

 しかも、こんな事を言うておったからの。


「あら、三上先生。なぜ駄目なのかしら? どのような存在かわからないのなら、尚の事、行ってみなければ、わからないのでは? それと言っておきますが、私は上位の道師と自負しておりますわ。か弱い女性と思って頂かなくて、結構です。それに、同行者の伊澤さんは一般人のようなモノでしょう? なら、我々が行っても問題ないのでは?」と。


 なかなか怖いもの知らずの女であった。

 幸太郎もそれを聞いて「では、判断は千尋さんに任せます」と返しておったからの。

 たぶん、ああ言えばこう言うタイプの女じゃから、説得を諦めたんじゃろう。

 沙耶香も幸太郎の肩に手を置き、もう止めとけと言わんばかりに、首を横に振っておったからの。ほほほほ。

 まぁそんなこんなで結局、日香里や優愛、千尋達も来ることになり、幸太郎はもどかしい表情をしながら、祠に向かう事になったのじゃった。

 面白い展開じゃわい。

 その後、幸太郎達は山奥の祠がある山道へと向かった。

 そして、山道を暫く進み、途中で一旦、車を停めたのである。

 なぜなら、山道の途中に立ち入り禁止の簡易な柵と、規制線のように縄が張られていたからじゃ。

 伊澤と幸太郎は車を降り、それらを脇に退かした。

 幸太郎は電話で伊澤に、誰も入れないよう細工をして欲しいと言っていた。たぶんそれじゃろう。

 

「三上さん、このバリケードとロープで道を封鎖をしておいたんだよ。これを見る限り、誰も来てはいない筈だ」


「設置した時のままという事ですね?」


「ああ、たぶんな。しかし……嫌な気配がするぞ。アンタに電話かけた時は、ここはまだそんな気配はなかった筈だ。不味い事が起きてそうなんだが……」


 伊澤はそう言って山道の先を恐る恐る見た。

 多少の霊感はあるんじゃろう。

 ま、当たりじゃがな。


「ええ、急ぎましょうか。恐らく……悪い事は起きてると思いますから」――



   *



 山道を進んで行くにつれ、不穏な気配は増していった。

 それから程なくして、幸太郎達は工事車両が停まっている開けた場所に到着した。

 クレーンが付いたトラック車と白い普通車が停まっておるのう。

 また、地面には2本の轍があり、祠のある細い道へと向かって続いていた。

 これは恐らく、きゃたぴらーとかいうモノで進んだ跡じゃろう。

 地面が踏み荒らされておるわ。

 恐らく、この機械使って、いらん事をしたようじゃな。馬鹿じゃのう。

 じゃが……それよりも問題はこの気配じゃな。

 ふむ、さて幸太郎はどうするんかのう。

 車を降りた幸太郎達は周囲を警戒しながら、2台の車両に近づいた。

 幸太郎はトラックの隣にある白い普通車が気になるのか、中を覗き込んでおるのう。

 ちなみに助手席には女性用の鞄みたいなモノがあった。

 幸太郎は車のドアを開けようとしたが、鍵が掛かっているようじゃ。

 何者か知りたかったのじゃろうが、残念じゃの。


「三上さん……こんな感じだ。アンタに電話した時と比べると、更に寒気がしてくる気配が漂っている。ど、どうするといいんだ?」


 伊澤はオドオドしながらそう言うと、周囲を恐る恐る見回した。

 他の者達もその気配を感じ取っているのか、かなり険しい表情であった。


「これは……妖気……いや、違いますわ。なんですの、この嫌な気配は……まるで、黄泉路のような気配がしますわね。どういう事ですの? なぜこんな山奥に……」


 流石の千尋も、眉間に皺を寄せていた。

 ふむ、黄泉路か。なかなか良い線を突いておるのう。


「千尋お姉様の言う通りです。これは……ただ事ではない気配がします」


 千里は脅えたように肩を震わせていた。

 霊的感覚に優れた者ならば、今のこの地の異変はようわかるじゃろう。

 沙耶香に日香里に優愛も、嫌そうに眉根を寄せ、周囲を見回しておるわい。

 そんな中、幸太郎は沙耶香に耳打ちをした。


「沙耶香さん……どうします? かなりヤバ気な気配を感じます。このまま皆で現場に向かいますか?」


「そうは言っても、千尋さん達は多分来るわよ。何か良い考えない?」


「とりあえず、以前、教えて頂いた道師の術具に、『除魔香』というのがあったと思うんで、それを使いますか? 何もせずに向かうのは少々、危険な気がします。特に霊能に慣れてない面々がいるんで」


 幸太郎はそう言って、優愛と日香里をチラッと見た。


「確かにね。でも除魔香は、ちょっと香りが強いから、私はあまり好きじゃないんだけどね。ン?」


 2人がそんな風にヒソヒソ話をしていると、女子達はそれを不満そうに見ていったのじゃった。


「沙耶香さんに三上先生……こんな所で密談はやめてもらえませんこと。何かあるなら、はっきり仰ってください」


 千尋の言葉を聞き、千里と日香里と優愛はウンウンと頷いていた。

 まぁこれは2人が悪いのう。

 沙耶香は咳払いすると、そこで千尋に微笑んだ。


「すいません。少し三上君の意見を訊いていたのです。それで今から、除魔香を焚いて進むという事になりましたので、準備にかかりたいと思います。よろしくお願いしますね」


 それを聞くなり、千尋は首を傾げた。


「除魔香ですって……アレは主に悪霊の集団に対する術具ですわよ。ここには悪霊の気配はないと思いますが?」


「悪霊はいませんが、それに少し似た気配を微妙に感じるんです。だからですよ」


 と、幸太郎。

 千尋は品定めするように幸太郎を見ていた。


「悪霊に似た気配……よくわかりませんが、貴方は何かを感じ取ってるようですね。霊的感覚S判定の三上先生がそう言われるのなら、とりあえず、従っておきましょうか」


 千尋は悪びれた様子もなくそう言った。

 刺々した言い方する女子じゃのう。

 貴堂家は癖が強いのが多いんかもの。ほほほほ。


「ええ、お願いします。では、準備をしますんで、暫しお待ちください」――



   *



 除魔香を香炉で焚きながら、幸太郎達は祠へと歩を進めた。 

 香炉を持っているのは幸太郎である。煙たそうにしておるわい。

 かなり強い香りがするらしく、袖で鼻を覆う者が多かった。

 松ヤニが焦げたような香りとは、幸太郎の弁じゃ。

 ちなみにじゃが、今回行くにあたり、幸太郎は使い慣れた術具鞄を持ってきていた。

 恐らく、不測の事態に備えての事じゃろう。

 道師の術具も持ってきてはいるが、咄嗟の判断で使用ができるほど熟達してないからのう。無理もない話じゃて。

 まぁそれはさておき、参道は重機の移動で踏み荒らされ、以前見た美しい苔の絨毯は見る影もなかった。

 伊澤はそれを目の当たりにし、「まさか村長達がこんな事をするとはな……残念だ」と言って、溜息を吐いていた。

 やるせない思いなのじゃろう。


「あんなに綺麗な苔の道だったのに……こんな事をするなんて」


 日香里も悲し気にその様子を見ておるわ。

 幸太郎達はそんな荒れた参道を進み、程なく、祠へと到着した。

 しかし、そこも以前の面影はなく、荒れた場と化していたのじゃ。

 祠は土台ごと壊され、見るも無残な姿に変わり果てている。

 柱や梁に壁であった物が、地面に散らばっていた。

 夜中に作業をしていたのか、明かりが灯ったままの照明機器が幾つか確認できる。

 そして、その手前には、パワーショベルという大きな重機が鎮座していたのである。

 恐らく、これで祠を破壊したに違いない。

 しかし、今問題なのはそこではなく、祠の奥にある岩壁じゃろう。

 なぜならそこには、不気味な洞穴のようなモノが、ぽっかりと開いていたからじゃ。

 これは面白いのう。そういう事じゃったか。


「酷い有様ね……でも、コレを動かしていた作業員がいないわ。どういう事かしら……家に帰ったとかは、流石にないわよね」


 と言って、沙耶香は重機に視線を向けた。

 ガラス張りの操縦席はドアが開けっ放しになっており、中は無人であった。


「だと思いますよ。恐らくこの重機は、夜に持ち込まれたんでしょう。伊澤さんが来る前に破壊して、そのまま撤収するつもりだったんじゃないですかね」


 幸太郎はそう言うと、祠があった場所へと近付いた。

 他の者達も幸太郎に続く。

 だが少し進んだところで、幸太郎は慌てて、それを制止したのである。


「待った! 皆……それ以上は来ないでください」


 なぜなら、洞穴の入口で作業服を着た2人の若い男が倒れていたからじゃ。


「み、三上さん……あそこに人が倒れているぞ! それに、この洞穴は一体……」


 伊澤も洞穴の存在は知らなんだようじゃな。

 とはいえ、妙じゃのう。

 邪気が強くなるかと思うたが、なんも変わらん。

 寧ろ、ここの方が邪気が少ないくらいじゃ。

 どういう事じゃ、はて……。


「やはりこの祠は、魔除けの結界の要だったようですね。この祠が、奥の何かを守っていたんでしょう」


「三上先生、守っていたって……何をですの?」


 と、千尋。


「耶摩……でしょうかね。それはともかく、彼等の容体を確認しましょう」


 幸太郎はそこで、洞穴の前で倒れている男達に近づき、身体を揺さぶった。

 しかし、動きは堅い。

 こりゃカチカチじゃな。完全に死んどるわい。

 じゃが、男達の死に顔が解せんのう。

 白目を剥いて、大きな口を開け、絶叫しているかのような顔じゃからな。

 余程恐ろしいモノを見たんじゃろう。


「2人共、死んでますね。しかし、凄い死に顔だな……」


「し、死んでるって……」


「うそ……」


 同行者達は息を飲んでいた。

 とはいえ、沙耶香と千尋と千里は硬い表情じゃったが、さほど驚いた様子はない。

 こういったモノを見慣れておるんじゃろう。

 それはさておき、幸太郎は冷静に遺体を確認していた。


「見たところ、外傷はないですね。触った感じだと、硬直が全身に及んでるんで、死後半日以上は経過してますね。ですが、それよりも……」


 幸太郎は納得がいかんのか思案顔であった。

 というか、死体見ても眉一つ動かさぬ幸太郎が、ここでは異質じゃな。


「三上先生……何か気になる事でもあるのですか?」


 千里が訊いてくる。


「ああ、この死に様がね……どうにも腑に落ちないんだよ」


 沙耶香がそこで、恐る恐る幸太郎の隣に来た。


「何が気になるの、三上君? って……何、この死に顔……」


 流石の沙耶香も生唾を飲み込んでおるわ。

 千尋もそこで幸太郎の所に来た。


「あら、本当ですわね。凄い死に顔ですこと。この男達は、洞穴の中にいたナニかに殺されたのでは?」


「そうかもしれませんが……普通、こういった状況の死体には、無念な魂の気配が多少はあるんですが、それがまるでないんですよ。妙だと思いませんか? ン?」


 するとその時であった。

 洞穴から黒い霧のようなモノが現れ、幸太郎に纏わりついてきたのである。

 いや、幸太郎だけではない。その黒い霧は、他の者達にも纏わりついたのじゃ。


「三上さん! 黒いナニかが、皆に纏わりついてます!」


 日香里は身体を小刻みに震わせ、脅えたようにソレを見ていた。


「北条さん、急にどうしたの?」


 沙耶香はそんな日香里を見て、首を傾げていた。


「部長……私達に……黒い霧のようなナニかが、纏わりついてるんです。ど、どうしましょう?」


「え? 黒い霧のようなナニか……見間違いじゃなくて?」


 どうやら、沙耶香には見えておらぬようじゃ。


「何もないですわよ、北条さん」


「お嬢ちゃん、本当かね。黒い霧なんてどこにもないぞ」


「私も見えないです」


「私もです」


 他の者達も同様であった。

 どうやら日香里には、黒い霧が見えているようじゃな。


「え、そうなのかな……でも見えるんですよ。皆の周囲に……」


 日香里も自信がないのか、もどかしい表情であった。


「北条さん、目の錯覚ではありませんの?」


「ですがお姉様、なにか嫌な気配が近くに感じますよ。もしかすると妖魔の類が近くにいるのかもしれません」


 千里は何かを感じ取っておるようじゃが、肝心の部分が見えておらんようじゃな。

 しかし、これは不味いのう。

 対応を誤れば、この男達と同じ運命を辿ることになるぞよ。

 さぁどうする、幸太郎よ。

 これは一筋縄でいかぬ相手じゃぞい。

 とはいえ、幸太郎はどうやら、敵の正体に気付いたようじゃがな。

 こ奴の顔がそう言うておるわい。


「三上君、どうしたの? そんな怖い顔をして……」


 真顔の幸太郎を見て、沙耶香は首を傾げていた。


「沙耶香さん……いや、皆さん……そこから動かないでください。それと、日香里ちゃんが今言ったのは間違いじゃないです。どうやら俺達は、死の呪いに掛かってしまったようですから」


「え……死の呪い!? 三上君、死の呪いってどういう事よ!」


「し、死の呪いですって!?」


 この中ではどうやら、幸太郎と日香里だけが見えておるようじゃな。

 さてさて、なんなんじゃろうかの、この黒い影は。

 幸太郎は死の呪いといったが、さてさて……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ