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祟られ体質の俺、疫病神仕込みの呪術で、世の中の不幸を無双します!  作者: 書仙凡人
新天地での不幸編

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四十六の巻 ある噂

   [四十六]



 幸太郎と指宿は女子達と雑居ビルの外に出ると、少し離れた路地の物陰に向かった。

 これは指宿の提案じゃ。

 指宿が言うには、あまりどこでも話せない内容なので、そこにしたとの事である。

 恐らくそこは、あまり人がおらぬ場所なんじゃろう。

 指宿はこの街をよう知っておるのう。

 案外、遊び人のようじゃな。

 まぁそれはさておき、2人の女子は髪型が特徴的じゃった。

 1人はツインテールとかいう黒髪のおさげで、もう1人は青く染めた短い髪型じゃ。

 顔は悪くないが、こ奴等もあまり良い環境で生きてこなかったんじゃろうのう。

 目がやや荒んどるわ。

 ちなみにじゃが、背は幸太郎よりもだいぶ小さい。

 今の世の言い方ならば、150cm以下といったところじゃろう。

 身体も貧相で未発達なガキであった。胸もちっさいわ。

 全体的に、大人の階段上っておる最中といった感じじゃな。

 まぁとはいえ、その階段は大人じゃなく、ガキが餓鬼になる階段かもしれんがな。ほほほほ。


「ねぇ……訊きたい事って何よ」


 女子の1人が訊いてきた。


「まずユッチとイッチという女の子は、君達の知り合いで間違いないな?」


 と、幸太郎。

 女子達は渋々ではあったが頷いた。


「そうよ……で、それがどうかしたの?」


「彼女達はいつ頃から、行方不明になっているんだ?」


 するとそれを聞くなり、女子達は目を見開いたのじゃった。


「え!? な、なんでそれを知ってるの?」


「お兄さん、どこでそれを知ったの? やっぱ警察?」


「違うよ。だが、知った理由に関しては守秘義務があるから言えないんだ。でも、その様子だと、行方不明なのは間違いなさそうだね」


「そうなの……実は10日程前から、2人を見かけないのよ。私達に何も言わずにいなくなるなんて、今までなかったから……」


 女子達は少し不安な表情をしている。

 まぁまぁ心配なんじゃろう。


「10日程前か……もしかして、他にもそういう話ってある?」


 女子達は驚き眼で顔を見合わせた。


「うん、あるよ……ウチらとはそんなに親しくない人達だけど。それも女の子よ」


「やはりか……で、その女の子達は君達と同じような年頃か?」


 女子達はコクコクと頷いた。


「そうよ。でもそれほど仲の良いグループじゃないけどね。ウチらと違って、立ちんぼみたいな事をしてたし」


 幸太郎はそこで、眉根を寄せた。


「立ちんぼ? 本当の売春をしてたのか?」


「うん。突然居なくなったのは、エッチもするパパ活してた人達よ。凄い羽振り良かったしね。でも、仲間内じゃ、ヤクザと関係もって売り飛ばされたんじゃね、とか言われてるよ……」


 いつの世も、落ちた女の最終手段はソレなんじゃのう。

 パパ活も似たようなもんじゃろ。

 まぁそれはともかく、どうやら斉木の言っていた未成年者が行方不明になっている噂は、この事を言っておるのじゃろうな。

 これは根が深そうじゃわ。


「という事は、ユッチとイッチも身体を売っていたのか? もしかして君達も?」


 女子達はブンブンと勢いよく手を振った。

 全否定じゃな。


「ううん……私達はそんな事してないよ。といっても……エッチなしのパパ活的な事はしてるけど。でも、ユッチとイッチは最近、お金がもっと欲しいような事を言ってたから、もしかするとそれに手を出したかも……」


 するとそこで、指宿は額に手をやり、大きな溜息を吐いたのじゃった。


「はぁ? おいおい、パパ活って……もっとマシな生き方できないのかよ。お前らって、どうみても中坊くらいだろ。その年で、既婚のオッサン相手に金引き出して飯食ってるって……いいのかよ、それで」


 女子達は指宿をキッと睨んだ。

 虎の尾を踏んだかもの。


「ウッサイ! ウチらの勝手でしょ。アンタ達みたいに、皆、恵まれた環境じゃないんだよ、バカ!」


「そうよ、私達だって……居たくてこんな所にいないわよ!」


 いらん事を言うのう。

 指宿の考えもわからんではないが、その言い方は神経を逆撫でるぞよ。

 親の援助を受けずに子供達が生活するとなると、今の世はそういうのを探すしかないんじゃろう。

 幸太郎はそこで2人を宥めた。


「まぁまぁまぁ、落ち着いて、2人共。君達の境遇に関しては、今は触れないでおくよ。皆、それぞれ事情があるだろうしね。それで話を戻すけど、ユッチとイッチは同じ頃に見なくなったのか?」


「うん、そうよ。ユッチが10日程前、私に言ってたもん。『新しいパパが、もう1人連れてきてよって言ってるから、イッチと行ってくる』って。でも、それから全然会ってなくて……」


 幸太郎と指宿はそこで顔を見合わせた。

 こりゃきな臭いのう。

 指宿が小さく囁いた。


「三上君、斉木さんが言ってたあの噂……もしかすると、ガチかもな」


「可能性大ですね」


 幸太郎は女子達に視線を戻した。


「ところで、君達はこの件を警察に通報したのか?」


「勿論したよ……2人の行方がわからなくなったって。といっても、一昨日だけどね。でも、この傾奇町じゃ、私達みたいなチン横キッズって出入りが激しいし、警察も真面目に取り合ってくれないのよ。何言ったところで、どうせ家に帰ったか、新しい遊び場に行っただけじゃないの? で終わりだもん。というか、ガチでそれを言われたし」


 まぁ子供の言う事じゃし、信用がないんじゃろうな。

 というか……チン横キッズって色々と問題アリな、ねーみんぐじゃわ。


「つまり……信じてもらえなかったという事か」


 幸太郎は残念そうに溜め息を吐いた。


「そうよ。ウチらの事なんて、だ~れも信じてくれないんだもん。もう

どうしようもないよ。といっても、それはお互い様だけどね……」


「ねぇお兄さん達……私も訊いて良い?」


「ああ、いいよ。何?」


「何でユッチとイッチの事を知ってるの? もしかして、2人のパパさん?」


 おお、そうきたか。

 指宿と幸太郎は鼻で笑っておるわ。


「ンなわけないだろ。俺達はあのビルに不法侵入する奴等を調べてんだよ。最近、そういう噂があるんでな。さっきのお前達もそうだったろ?」


 指宿は面倒臭そうに腕を組み、それに答えた。

 女子達は気まずそうに俯く。


「え? そ、それは……そうだけど……」


「彼の言う通りだ。どうして君達は、あそこにいたんだ? あのビルの地下は一応、関係者以外立ち入り禁止になってるんだがね」


 と、幸太郎。

 女子達は諦めたのか、肩の力を抜いた。


「だって……ユッチから聞いたんだもん。新しいパパが、『あのビルの地下に良い場所があるんだよ』って言ってたって。だからよ」


 ほう、なるほどの。そういう手口じゃったか。

 もうそのパパとやらが元凶と見て、間違いないじゃろうな。


「へぇ……ちなみに、その新しいパパってどんなのか見た事ある?」


「それは流石にわからないわよ。だって興味ないし」


「私も知らないよ」


 2人共、本当に知らんようじゃな。

 そこがわかればのう。


「そうか……まぁ知らないんじゃ仕方ないか。でも誘拐の可能性もあるから、君達も暫くは、パパ活を自重したほうがいいかもな」


 幸太郎の忠告を聞き、女子達は青醒めた表情で口元に手をやった。

 ちょっとは怯えておるようじゃ。


「え!? や、やっぱ……そういう話になるの?」


「やだ……」


「まだわからないけど、そうじゃないとも言いきれない。何れにしろ、警察もなかなか本腰にならないだろうから、自分の身は自分で守らないとな。君達も気を付けろよ。ン?」


 するとそこで、指宿が女子達に近づいたのである。

 何か言いたい事があるんじゃろう。


「なぁ……お前達はこの先もずっと、ここでパパ活すんのか?」


「なによ、悪い? ウチらは家にも居場所がないし、学校にも居場所がないんだよ。皆そうよ。ほっといてよ! それにここは、仲間が多くて楽しいの! 他じゃ、誰もウチらの事なんてわかってくれないんだから!」


 と言って、ツインテールの女子が指宿を睨みつけた。

 すると、指宿はイラっと来たのか、そこで声を荒げたのじゃった。


「はぁ? 居場所がないだぁ? 甘えんな! 居場所なんてもんはな、自分で作るんだよ! お前さっき、俺が恵まれている環境だとか言ったな。言っとくが、俺は親に捨てられ、ある人に拾われて、ようやくここまで来たんだ。泥水啜ってようやく手に入れたんだよ。勝手な事を抜かすな!」


 指宿も結構な苦労人のようじゃな。

 こ奴のチャラい雰囲気は、世渡りの為のモノなのかもしれぬの。


「だ、だからって、何よ! 今の子には今の苦しみがあるの! それに今の世の中、スマホがあれば、仲間がすぐに見つかるし、お金だって得られるんだから! ここでだって生きていけるの!」


 エキサイトしてきたのう。

 女子も負けじと言い返してきたわ。

 ちなみに、もう1人の女子は、気まずい表情でそれを見ているところじゃ。


「ああん、何言ってんだお前! スマホでお金を得られるだと、世の中舐めてんのか!」


 しょうがないとばかりに、幸太郎がそこで2人の間に割って入った。


「まぁまぁ、指宿さんも落ち着いて。それと君もだ……いちいち、そんなんで怒るな」


 指宿とツインテールの女子はかなり興奮していたが、幸太郎の言葉を聞き、徐々に収まっていった。

 幸太郎も困ったように溜息を吐いておるわ。ウケる。

 そこでツインテールの女子が、面白くなさそうに幸太郎へ視線を向けた。


「ふん……お兄さん達、話はこれで終わり? なら、もう行くわよ」


「あ、待った」


 すると幸太郎は、財布から1万円札を出し、女子達に差し出したのである。


「これは情報料だ。上げるよ」


「おいおい……三上君、1万円かよ。そんなに上げるのか? あんな情報で? 甘やかしすぎじゃね?」


 指宿は少し引いていた。

 対する女子は、嬉しそうに顔を綻ばせておるわい。

 正直な女子じゃのう。


「あ、ありがとう。こんなにくれるの、お兄さん! というか、いいの?」


「ああ」


「やったぁ!」


 女子達はニコニコと1万円札を受け取った。


「お兄さん、太っ腹ね。それに結構カッコいいし」


「だよね、だよね」


 女子達は幸太郎に、満面の笑顔を向けていた。

 かなり上機嫌じゃな。


「ああ、そうだ……ついでだし、俺からも1つ忠告させてもらっていい?」


 と、幸太郎。

 女子達は頷く。


「お兄さんはそっちのチャラそうな人より、良い人そうだから、全然いいよ」


 ツインテールの女子はそう言って、指宿に向かい、ベーと舌を出した。

 なかなか意地の悪い女子じゃのう。

 指宿はフンと鼻を鳴らしとるわ。ほほほほ。


「君達って……家出少女か?」


「そうよ。私達は2人共、学校でイジメられて、おまけに、親とも喧嘩して家に居場所がないから、ここにいるのよ。お父さんやお母さんだって、どうでもいいと思ってるに違いないわ。一日一回、生存確認のCNTが入って来るけどね。で、それがどうかしたの?」


 幸太郎は失笑していた。

 たぶん、呆れておるんじゃろう。


「フッ……どうでもいいと思ってる、か。じゃあさ、そのスマホって誰が契約しているんだ?」


「え? そ、それは親だけど……」


 女子達はそれを聞き、口ごもった。

 痛いところを突かれたようじゃな。


「だろうね……この日本において電話番号持ちのスマホは、未成年者じゃ契約できないからな。そう……この日本では未成年者の場合、法定代理人……つまり保護者の同意がなければ、世にある色んな契約は基本的に結べないんだよ。それが法治国家日本における世の中の仕組みだ。でも、君達の親は優しいな。家出した後も解約せずにいてくれるんだから。どうでもいい子なら……俺ならスマホの契約は切るけどね」


「な、何が言いたいのよ」


「芥川龍之介の蜘蛛の糸って話を知ってるか?」


「死んで地獄に落ちた泥棒が、糸に掴まって天国に昇るとかいう、昔ばなしのやつ?」


「ああ、それだ」


「それがどうしたのよ」


 幸太郎は女子のスマホを指さした。


「そのスマホは……君達にとっては蜘蛛の糸かもな。天国かどうかはともかく、そのスマホは今現在、保護者である親に唯一繋がっている細い糸だ。勿論、地獄にもな。選択を間違えると……ずっと地獄という危険もある。よく考えて使うんだな」


 ほほほほ、幸太郎も丁寧にキツイ事を言うのう。

 帰れる場所があるんだから、早く帰れ。と言えば済む話じゃが、捻くれた子供には通じんのじゃろうな。


「じ、地獄って……何よ。私達が今、地獄にいるっていうの」


「ああ、俺にはそう見えるね。だが、これはあくまでも、俺個人の感想だ。君達が今、とても幸せで、尚且つ、天国のような所にいると本気で思っているのなら、それはそれでいいよ。俺の忠告なんかも無視すればいい。自分の人生だ。好きに生きればいいさ。但し……この世の中はな、どれだけ綺麗事を言っても、未成年だろうが大人だろうが、結局は自己責任という事を忘れるなよ。好き勝手に生きれば、それ相応の報いがいつか必ず来るんだ。そう……必ずな。これは肝に銘じておくといい。指宿さんではないが、俺もそれで酷い目に遭っている口だからな。これは言っておくよ」


「そ、それは……」


 女子達は幸太郎の重い言葉を聞き、肩を落として俯いた。

 次の言葉が出てこんところを見ると、強がってはいるが、後ろめたさもあるんじゃろう。


「三上君……君って結構、精神攻撃的な言い方するよな。今のは俺もちょっとグサッときたよ……」


 なぜか指宿も胸に手を当て、しんどい顔をしていた。

 なんでお前がダメージ受けるんじゃい。

 ははん、さてはコイツも、後ろめたい何かがありそうじゃな。


「ま、俺からの忠告は以上だ。ン?」


 するとその時じゃった。

 少し離れた道路に見覚えのある女子が歩いているのが、幸太郎の視界に入ってきたのである。

 それはあの女子じゃった。

 女子は今、若い男と一緒に歩いているところじゃ。

 顔は取り立てて特徴がない普通な男じゃな。

 とはいえ、佇まいに気品があるので、そこそこ育ちは良さそうじゃ。

 あの女子はどうやら、良いカモをゲットしたんじゃろう。


「どうしたの? って、あれはユアじゃんか。また美人局やってるね。喜多島さん達には関わるなって言ったのに……」 


「喜多島さん?」


「ヤバい、先輩よ。半グレってやつかな。この間、刑務所から出てきたらしいのよ。あの人達には関わらないように言っておいたんだけどね。薬とか、強盗とか、レイプとか……とにかく色々とヤバい話が多いのよ」


 ツインテールの女子はそう言って、嫌悪感丸出しの顔をした。


「そうよ、碌な噂を聞かないもん。それにあの人、ヤバめの闇バイトを仕切ってるって噂もあるよね。私達は怖いから、あの人達には近づかないようにしてるのに。ユアもなんで関わったんだか……」


 もう1人の女子もそれに同調する。

 かなりタチの悪い輩と関わっておるようじゃ。

 後が大変じゃのう。


「へぇ……なるほどね。面倒な事になってんだね、あの子。まぁ何れにしろ、君達も暫くパパ活は自重しろよ」


「わ、わかったわよ」――

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