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父さんな、ラーメン屋で食っていこうと思うんだ  作者: メモ帳パンダ
そして文化へ

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第52話 ラーメンの国際化 後編

 まず、俺と遥香ちゃんでは「ラーメン」というジャンルそのものの捉え方が違う。

 遥香ちゃんにとってラーメンは、日本特有の食べ物だ。

 だが、俺にとっては違う。

 日本を代表する食べ物の一つで、世界料理だ。


 現に令和の時代、ラーメンは日本食の代名詞になっていた。

 寿司とラーメンが二大巨頭だ。

 だが、そこに至るまでにはかなりの苦難があった。

 寿司ほど外国人に受け入れられていない――その現実を受け止めなければならない。


「まず、中国系の観光客には、なかなか刺さらないんだよね」


「そうなの? 麺料理に理解ありそうだけど」


 中国は麺料理の歴史が長い国だ。

 そもそもラーメン自体、中国にルーツがある。

 四川の担々麺や台湾の担仔麺にも、それぞれ特徴がある。

 たとえば麺は、日本人からするとコシがなく柔らかい。

 日本人からすると、伸びすぎているのかな?と思う麺だ。


 だから中国系からすると、ラーメンを食べた瞬間に『なんだこの麺』となる。


 これは文化の違いだよなぁ。

 美味しいという感性は、国際共通言語じゃない。

 令和になっても、韓国に比べると台湾・中国向けのラーメン屋は苦戦しがちだ。

 韓国なんて、少し田舎の街でも日本式ラーメン屋がそこらじゅうにあるのにな。

 この店では中国系向けには柔らかめの麺をオススメしている。


 俺は、食べる人に合わせることを厭わない。

 俺の店は、そもそも関東と関西で味を変えている。

 これには賛否があるが、必要なことだと思う。


 で、次だ。


「次は欧米系。彼らは食べ慣れたもの以外、なかなか口にしない」


「それはそうね。彼らが定食屋にいるの見たことないわ」

 

 旅先で現地の食べ物を積極的に食うのは、日本人くらいだ――そんな話がある。

 日本人は旅先で現地の料理を体験するのが大好きだ(そして大抵、後悔する)。

 でも、そんな人種は稀である。

 アメリカ人はマクドナルドしか食わないし、フランス人は旅先でもフランス料理を食べる。


 だから欧米人にラーメンを食べてもらうには、まず『ラーメン=食べ物』だと認識してもらう段階が要る。


 俺はインスタント麺が欧米社会に進出したことで、ラーメンも国際化できたんだろうと思っている。

 それによって、欧米人にとってラーメンを『食べ物』だと認識してもらうことができた。

 そして現在、インスタント麺は普及途中。

 現在進行形で、世界中の貧困層の食文化をぶっ壊しながら広まっている最中だ。

 まだ彼らにとって、ラーメンは『食べ物』じゃない。


 別にそれを非難する気はない。昭和初期の日本人も同じような感じだったし。

 つまり、彼らはなかなかターゲットになり得ない。


 それと、欧米相手にはもう一つ壁がある。


「あと、スープは温度を少し落として出さないといけない」


「ぬるいラーメンスープって美味しいのかしら」


 正直、これは賛否あると思う。

 そもそも温度が変わると味が変わるしな。

 熱々で食べる前提で調整しているから、ぬるいと油っぽく感じたりするかもしれない。

 でも欧米は、熱い食べ物は冷まして食べる文化があるんだよなぁ。

 というか、熱々の食事を喜んで食うのって、アジア人くらいじゃないだろうか。まあ知らんけど。


 俺のこだわりの接客を聞き終えた遥香ちゃんは、耳の痛い一言を放ってきた。


「でも、そんな配慮をしても外国人、全然来てないんだよね」


「うっ……」


 そうなんだよなぁ……。

 空港内に広告を出したりもしてるんだが、韓国人以外は全然来ない。


 まぁ、そもそも外国人が少ないのはある。

 羽田空港はまだ国際化されていないし、関空も未開業だ。

 訪日外国人は、二百万人しかいない。

 令和では四千万人を超えていたから、この時代の日本がどれくらい外国人に閉ざされていたのかがよくわかる。


 だが、俺は国内展開で終わるわけにはいかない。


「まあ、黒字だからいいじゃないか……」


「もう、赤字になったらすぐ閉店するからね」


 そんなことをいいつつ、遥香ちゃんは店内の韓国人達を見て少し気を良くした様子。

 次は羽田にも、同じ店を建てるか。


「あのさ、遥香ちゃん」


「ん、敦史くん、どうしたの?」

 

 いや、流石に怒られそうだな。

 遥香ちゃんはただでさえ、関東の成績の悪い店舗に苦労している。

 さらに採算が取れない店を一つ増やして、といったらブチギレられるだろう。


「いや、なんでもないよ」


 不思議そうな顔で、でもニコニコ笑っている遥香ちゃんを見ながら今後の展開を考えるのであった。

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