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星火燎原  作者: 更紗 悟
第六章【頂に望む星】
111/117

立ち位置

 

     6


 子供が遊びを見咎められ、照れているように、ヅフ・ラターグ・グントは笑う。普段はシントでありながら、何故かキョウのような格好をしている。今は、きちんと大振りの剣だけは下げている。

 動きを止めたオウ・青から、レクトの剣の切っ先がグントラターグへと向かいかけた。

「おっと」 と、グントラターグは両手を広げてみせる。「お前と遊ぼうという気は無いぞ。邪魔をするつもりもなかったんだ」

 本当だよ、と手をひらひらとさせてみせる。「俺は見たいだけだ。構わずに続けてくれ」

 あくまで干渉するつもりはないと言うグントラターグだが、誰一人、その言葉を鵜呑みにしない。

 ソンヴもまた、緊張していることを押し隠すのに必死だった。

 乱の勃発と同時に姿を消した事から、どう転ぶか分からない危険あふれる地から離れたというの普通の想像だ。そうはいっても、このクセモノのことだから、どこかで様子を窺っているくらいはするかとは思っていたが―――。

 ここに来て、こんな渦中のただ中に姿を現わすとは。しかも、この威圧感。どこが引退間近だ。私を恐れているなんて、どこの誰が吹いた嘘だったのかしら。ソンヴは、密かに苛立っていた。

「何だよ、皆して、そんな熱い眼で見てくれるなよ」

 グントラターグは茶化すように言う。あくまで傍観者だと主張したいらしい。こうまで対象に影響を及ぼす観察者などありえないとは思うが。

「分かった、分かった」 と、苦笑いしながら、グントラターグは言った。それから、ゆっくり確かめるような動作で、己の衣服を指で摘んだ。

「……何の真似だ?」

 レクトの問いを無視して、次々と服を捲りあげ、そこに何も無い事を示していく。どうやら他に隠し持った武器など無いことを確認してもらいたがっているようだ。

 最後に、唯一所有していた剣を、鞘に入ったまま、床に突き刺した。直立する剣から手を離し、ゆっくりと後退りしていく。一歩、二歩……。レクトから剣との距離、それよりもさらに数歩下がった所で立ち止まった。

「これなら心配ないだろう?」

 グントラターグの腹の内を探るように、レクトは無言で睨み続けた。

「繰り返すが、俺は見たいだけだ」 と、グントラターグは真剣な顔をしていう。「この先、民を統べるものを」

 それから彼は、ソンヴにも目を向けた。

 〈この先〉〈統べる〉といった単語から、彼の興味がオウ・青にあるのだと察せられる。目線を向けたことで、自分も同じなのだろうと、仄めかされもした。

 ソンヴもまた、全力を持って、笑みを返した。さすがに、言葉を添える事はできなかったが。


 レクトは無言で、再びオウ・青へと剣を向けた。慌てて、オウ・青も応じる。

 打ち合いが再開されたが、そこに変化は無い。

 油断ならない男が現われ、さすがのレクトも動揺しているのではないか? 警戒を他にも向けているため、オウ・青の対応に甘い判断が出るのでは? このままだとオウ・青の敗北は決定的だったが、付け入る隙を与えたくれたと、解釈できるのでは?

 その答えは、否、だった。

 レクトは憎らしいまでに、よくできた人間だった。応対すべきものは目の前のオウ・青のみ。グントラターグの存在は意識の端に置いている。そう気持ちの切り替えが出来ている。ただ、何かあった時には瞬時に意識を切り替える。オウ・青を相手取りつつ、有事には対応できるほどの余裕を残している。レクトにとっては、オウ・青とはそのような相手で、それだけの力量差があった。

 グントラターグの出現はオウ・青には願ってもない牽制となるはずだった、それでもなお、劣勢は覆せそうになかった。



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