レイスとヒアラーク
*
ヒアラークとは、バーデ唯一の薬工房らしい。そのためとてもデカい。
てくてくとその工房まで子供三人は歩いていく。
ミコトはまだ抵抗があるが、兄とミコトを信じて帽子をかぶらずに歩いている。
「ミコトの髪に太陽が当たって、キラキラしてるねー!」
「白さが増したわね!」
どうしてこいつは、いつも余計な一言がついてくるのだろうか…。
ナギにありがとうと返事をしつつ、すでに前を向いているレイスをうかがう。ヒアラークへの道はレイスが知っているからと丸投げされたが、確かに彼女の足に迷いはない。
ナギは上機嫌でレイスに話しかける。…なんで話しかけるんだ。
「レイス…って呼んでもいいですか?」
「なんでけーごなの?」
「としうえだし、」
「いいよ。レイスで。ミコトもそう呼んでるでしょ!」
「うん!ありがと!僕は、」
「ナギって呼ぶから」
「あ、うん!」
ナギがレイスにすごくキラキラした眼差しを送っているように感じる。
胸がちくちくする。
二人の会話を遮りたくて、僕は会話に参加した。
「レイスはよくヒアラークまで行くの?」
「そうよ!」
「なんで?」
彼女は何か持病を持っているのだろうか?そんな様子は全く無いが。首をひねるミコトに、レイスはあっさり返した。
「私の将来の夢が、世界一の薬剤師になることだからよ!」
「…!」
「へぇ~!すごい!」
それを聞いたとき、僕は言葉に詰まった。
僕より年上だけれど、ナギも、レイスも将来の夢が決まっていることに、疎外感を感じた。
夢ってどこで見つければいいのだろう。
声が漏れていたのか、レイスの辛辣な言葉が飛んできた。
「馬鹿ね!夢なんて、自分が見て、聞いて、感じて、そこから興味の持ったことを目標にすればいいのよ!ミコトは外に出てないから見つけれてないのよ!」
「…っ!」
人が気にしていることを、ずかずかと踏み荒らしてくる彼女に、押し寄せる波のように怒りを感じた。
のちにミコトはこれが人生初めての殺意だったと言う。
「ミコトは最近外に出てるよ!だから、マッチャ…ミョウヤクについて興味を持ったんだから!」
ナギが言った言葉に微かに首を傾げながら、話を聞いて居たのか、その発言を流してナギの将来の夢を問う。
「え、僕?僕は…すごい馬乗りになること!」
「ふーん」
レイスの反応に苛々する。訊いたなら、もうちょっと別の反応があると思う。ナギもなんで教えてしまうのか。
胸がさっきより、痛い。
書いていたのに、飛ばしていた;




