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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
59章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、それぞれの道筋で。

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獣姫ちゃんと世界の驚き

「ほっやっはっ」



「……」



 あの後、俺は女性騎士――クレイン=デルマがプレイヤーの騎士を俺の守護騎士に任命し、それからは行動を共にし、一緒にログインすることが多かったのだけれど、今日はこうして2人で汗を流して訓練しており、俺は耳と尻尾、髪の毛をポニテにしてフリフリと振っていた。



 けれどクレインが鍛錬中もそんな俺を苦笑いで見ており、首を傾げる。



「なぁに?」



「……いやぁ、随分と可愛らしく収まったなって」



「クレインだって随分と美人さんじゃん」



 クレインに言われ、俺は改めて自分の体に目を落とす。

 今は無地のTシャツにスポーツハーフパンツ、真っ白な髪はポニテで、本来の俺よりも小柄、女神さまたちくらいの大きさだろうか? 規則正しい食生活を送っていたからか血色はよく、程よい肉付きで健康的。

 最初は女性の体に戸惑っていたけれど、女性がよく言う胸に関してはどういう扱いになるのか考えたけれど、そんなこと考えなくても特に邪魔になるような大きさでもなく、今まで通りに動けているはずだ。



 そしてクレイン――女性らしいしなやかな体つきで、俺とは違い一部が発達しており、確かにあれは動きにくそうだなという印象を持った。

 夜を想わせる真っ黒な髪は風になびいており、リョカやミーシャ、ランファ、スピカやマルエッダさんとは違った麗人だ。うちの学園にはいない感じの美人だ。



「でもすごいよね、本当に別人なんだもん。最初に説明してもらったけれど、世界観とかスキルとか、クエストとかここに住む人とか――あっ、あとステータスって言うシステムも面白いよね」



「だねぇ。俺たちって一応ルナーリアっていう区分なんだっけ?」



「そうそう、最初のチュートリアル、本当に助かるよね。俺たちの立場とかも事前に説明してくれて入り込みやすかったし」



「まあでも逆に、そのチュートリアルを聞いていないと何もわからないって言うね。ステータスの開き方すらわからないと思うよ」



 とはいえ、まさかチュートリアルを聞いていないなんて人はいないか。



「でもさ、俺たちみたいにキャラクリ? をすっ飛ばした人って、いわばこの世界に元々存在していた人になり替わるってことじゃない? それってどうやってんだろうね」



「あ~それね。俺もさ、姫って立場だからちょっと気になって調べたんだよ。こっちでは月降(つきおろし)って呼ばれる現象で、突如ルナーリアとして目覚めるよくある現象なんだって」



「でもそれにしたって、他の人が違和感を持たなさすぎだよね」



「……うん、だからあっちで学園にいる時、リョカにそれとなく聞いたんだよ。そしたらさ、笑顔でヴィヴィラ様を指差してたよ」



「あっ、そういうことか。その時点で運命に干渉しているんだ」



「そういうことらしい。だからその辺りは違和感なく処理しているんだって」



「……改めて、リョカ様はすごいよね」



「世界を丸々一個作っちゃったわけだしね」



 確かにリョカはすごい。世界という箱庭を生成し、さらにそこに文明を作り人々に生活をさせ、さらにそこから外からくる人々がいるという設定まで盛り込む。

 こんなの、実際に外から来た者ではないと想像すらできないだろう。

 じゃあリョカはどうなのだろう――。



 そんなことを考えて俺は首を横に振る。



「セルネ?」



「ん~んう。詮無きことかな」



 そして俺は改めて構えを取り、クレインに目をやる。



「ほいっ、休憩終わり。鍛錬もうちょっと付き合ってよ」



「うん、とりあえずスキルをもう少し増やそうか」

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