探偵ちゃんと腹の探り合い
「ステータスはSPとAGIの逃げ足重視、探偵に戦闘技術はそれなりでいいからね」
「……さっき爆発音が聞こえたけれど?」
「相手方にも妙なスキルを持っている奴がいて、僕1人じゃどうしようかと悩んでいたんですよ」
「ふ~ん」
VRMMOぞ? クエストの独占、情報の独占、ゲーム性の抜け穴の独占――いくらアヤメちゃんとは言え、いきなりはいそうですか。と、信用するわけにはいかない。
むしろアヤメちゃんだからこその警戒だ。
これがセルネくんやルナちゃんたちであったのなら話は変わるけれど、この神獣――僕が知っている中でも数本のオンラインゲームを向こうで実況プレイしていた。
ゲーム操作は下手だけれど、元々賢い獣だ。コメントやら何やらで育った彼女のゲームのやり方は玄人並みなんだよなぁ。
「まっ、さっきも言ったけれど協力はしてあげるわ。俺は攻撃力極振りの対戦闘特化、一応商人としてやっているからスキルには値下げとかその辺りのものもあるわ。戦闘面は一撃必殺型。こんなもので十分かしら?」
「――」
僕とアヤメちゃんは笑みを浮かべ合い握手を交わす。
嘘だな。
この獣が一撃必殺だけを選ぶはずがない。
でもSTR極振りは本当だろう。でもそれじゃあ足りない。
一撃必殺も含めての浪漫特化。
特定条件やスキルの組み合わせで化けるタイプとみた。
さて、なら僕がこの子をうまく動かすには――。
「俺こういうヒリヒリしたのも好きよ」
「あら奇遇ですね、僕もっこういう雰囲気から愛友情勇気で近づく距離からの急接近とか大好物ですよ。末永くお付き合いしたいところです」
「そうね、俺もそうしてくれると助かるわ。ルナやミーシャはともかく、お前相手なら加減も必要ないでしょ」
「コントローラーじゃなくて良かったですね? さすがにあのゲーム練度でそんな大口叩けるとは思えないので」
「は? 叩けるけど?」
「はっはっはっは」
目の奥が一切笑っていない笑みを浮かべて、僕の小さな頭を握るアヤメちゃんから目を逸らした。
「ていうかお前今回も小さいわね――一部を除いて」
「スピカ以外巨乳いねえなって思ったら、もう僕がなるしかないなって」
「なんでそんな結論に至ったのかわからないけれど、ルナとミーシャに拗ねられるわよ」
「そんな顔が見たいのよ」
アヤメちゃんに言われ、僕は改めて自分で少し弄った体に目をやる。
ロリ巨乳である。
どうせ変身しちゃうからアバターに関しては趣味に走った。可愛さと特定の人物への嫌がらせ目的だ。
海色の軽い天パ気味の髪をハーフアップでまとめ、ベージュのフリルワンピースはワンポイントとして胸元にリボンを取り付け、たはたから見たら病弱な令嬢にしか見えない儚さ――を、ぶち壊す巨乳。
我ながら中々な出来栄えだ。
「……あによ?」
「いえ、可愛いなぁって」
「俺もこういうの結構凝っちゃうのよ」
「僕みたいにアバターを戦略に組み込んでるんですねわかります」
「お前ほど性格悪くないわよ。ただそうね、それなりに油断してくれるわ」
「でしょうね」
元になっているのは向こうでのハナちゃんだろう。
タバコらしきものを取り出し、それを口に咥える獣をじっと見る。
長身の刺青の女性――油断してくれるなんて言うけれど、これはどう考えても威圧してるな。
髪はナチュラルボブで、口と耳にピアスをしている。服装はTシャツとジーパン。
随分とあっち寄りの服装に仕立てたな。
あれ、装備としてどんな性能だ? ピアスには何かしらの能力があるだろう。けれどそれにしたって薄着過ぎだ。
僕が言えることじゃないけれど、どう考えても戦闘を想定していない。
でも戦闘特化なんだよなぁ。
「どっかで戦闘でもする?」
「……そうだね、一応互いに出来ることは明確にしたほうが良い」
「お前が尻尾を出すとは思えないんだけれどね」
「お互いさまでは?」
そうして、僕たちは薄い笑みを浮かべたまま、目的地へと馬車を走らせるのだった。




