探偵ちゃんと利害一致の2人
「あ~しんど」
「……で? なにをやらかしたのよ」
推定アヤメちゃんが操る馬車の御者台にて、僕は彼女の隣で大きく体を伸ばしている。
彼女は商人らしく、馬車を操って様々な国や街に足を運んでいるらしい。
「ん~クエストでね、人さらいを暴けって指示が出てきたのよ」
「お前を追っかけてた連中?」
「そうそう――あっ、自己紹介忘れてた」
僕は懐のケースから名刺を取り出し、それをアヤメちゃんに手渡す。
このゲーム内で僕が最初に降り立ったのはセルフィスという国の都市、アークレイン。
運送や運搬、出版などが盛んな国の都市で、小さな竜を配達に使ったり、あちこちの国から貿易をするなどして物と人、情報が跋扈している。
そんな国で僕は――
「フリーの記者兼探偵をやっております、リョカ=ジブリッドと申します」
「……カーリ=アルジド、貿易商って書いてあるけど?」
「名前はいくつあっても困らないので。それは商人用の名刺だね」
アヤメちゃんが肩を竦ませ、僕が渡した名刺をビリビリに破いて捨てると、手を差し出してきた。
僕はその手を握ると、彼女は八重歯を見せて笑い、荷台に乗った数々の商品を指差す。
「ないものはないっ、あらゆるものをお届けする黒猫商会会長のアヤメよ。何か欲しいものがあるのなら俺に言いなさい」
「……」
僕はアヤメちゃんの自己紹介を聞きながら、そっと商品に目をやる。
ないものはない。わりには荷台に乗っている商品は生ものや雑貨ではない。むしろ小型の機械が多い。
このゲーム内の世界では文明レベルの差が顕著だ。
けれどこういう機械はむしろロストテクノロジーとなっている。
ないことはない。けれど貴重だ。
僕は少し考え込む。彼女は商人と名乗った。けれどおよそ持っているスキルやステータスは商人向けではないのだろう。
理由としては彼女がそう言うことを生業にするとは思えないからだ。お金はダラダラするためだとしても、それをわざわざ名乗るような子ではない。
ではどうして名乗っているのか。
商人と名乗る方が都合がいいからだ。多分必要だったのは他国への入国許可証。
確か商人が強い国があったな、そこの商人ギルドである程度の信頼を得ればそれなりに入国は融通してもらえる。
目的はそっちか。
なら彼女の目的は――ないものはない。むしろないものはないのだろう。ならば何があるのか。何を専門に商売しているのか。
機械、確かこれって遺跡に潜る必要があったんだったかな。この国にも数か所あるな。
ふむ……。
「スキルは戦闘特化及びサブとして機械いじり、商人であるのは神代のダンジョンを探すのに都合が良いから。売り出す商品はダンジョンに潜った際に得たあまり――こんなところか」
「……お前探偵向いてるわ。いきなり丸裸にしないでくれない?」
「まさかここまで天職とは思いませんでしたよ。ということはこの国のダンジョンにも潜るんですか?」
「そのつもりよ。俺には目的があるからね」
「ロボですか」
「ロボよ」
相変わらず一貫してるなこの子は。
ふむ……僕は少し思案する。これは中々にチャンスではないだろうか。
「ねえアヤメちゃん、それ、手伝ってあげようか?」
「……見返りは?」
「話が早くて助かります。とりあえず今受けているクエストを完了したいので手伝ってくれない?」
「いいわよ。でもそれ、どこまでやったら完了するのよ」
「さあ? 色々な手段はありますけれど、クエスト名が暴け。なのでとりあえず日の元に引きずり出します」
「ふ~ん、解決策はあるのね、それならそれに乗ってあげるわ」
僕とアヤメちゃんは改めて手を握り合い、ここに記者と商人の同盟がなったのだった。




