変幻自在の探偵ちゃんと黒髪猫耳商人さん
「私の名はリュート=カルミラ、天才にして美少女、今日も今日とて世界をめぐり、あちこちにカメラ片手に今日も美少女撮っていくぞっ☆」
「なに突然自己紹介してんだてめぇ! というかお前うちで働いている時、ハナーコ=ヤマーダって名乗ってただろうが! 偽名かよ!」
「それが偽名だと気が付かないとか、店長もまだまだっすねぇ」
わたくしリョカ=ジブリッド――現在あの強面のおじ様に薄暗い路地で追いかけられて全力疾走中っ☆
「てかてめえどこのもんだ! 俺に喧嘩を売るっつうことは、バルツファミリーを敵に回すことになるんだぞ!」
「きゃぁこわ~い」
このゲームにも結構慣れてきた。
ステータスの癖やスキルの習得条件、ステータス、スキルポイント上昇のスイッチもなんとなく把握した。
この辺りのシステム面はヘリオス先生とアンデルセンに任せていたから、僕は少しかじった程度。
本当にあの2人はいい仕事をしてくれる。
そして現状僕は追っかけられているわけだけれど――当然これはクエストだ。
といっても、このクエストというもの、現在起きたことをリアルタイムで反映させており、二度と同じクエストは起きないだろう。
僕は顔に手を添えると、その顔がパラパラと崩れていく。
「てめぇ、変装して――」
「僕の名前も顔もわからない。一体誰が私を追いかけるんだろうねぇ?」
喋りながらも様々な声を作り変えていく。
僕という存在を1つに絞らせない。誰が誰を誰なのか――。
「『誰が殺した私が殺すか』」
僕が習得した変装系のスキル――もっともそれだけに作用しないようだけれど、その点はもう少し要検証というところだろう。
「あっ――」
僕は体――というより脚が変異してしまったことでつんのめり、前のめりに倒れ掛かる。
「馬鹿め! 妙なスキル使うからそんなことになんだよ!」
店長と呼ばれる先ほどまで僕が働いていた喫茶店の男が僕の肩に手をやり、思い切り引っ張ってきた。
僕は引っ張られるまま振り返り、舌をべっと出して彼の顔面に指を鳴らした。
「『白いコートに赤い帽子』」
男の顔面は赤い炎を上げて爆発音を発した。
店長は爆発を受けて白目をむき、焦げた顔面を携えてその場に倒れ伏した。
僕は倒れ込んだ店長に笑みを向けるのだけれど、まだまだ追いかけてくる気配が多く、すぐに脚を動かして駆けだす。
路地を出て人ごみに紛れるのが得策かな。
僕は薄暗い路地裏を抜けるために、陽の光が差すその先に飛び出した。
飛び出して数歩――道路に出てしまった僕の目の前を馬車が突っ切る。しかしその御者台には黒髪の、猫のようなクセっ毛をして、猫のような耳を生やした――。
僕は目があった彼女を追いかけ、その荷台に乗り込んだ。
「うぉっ! 一体何よ――」
「アヤメちゃんか、良かった良かった助かったよ」
「ってお前リョカかよ!」
渡りに船とはこのことだ。
僕はアヤメちゃんだろう黒髪猫耳のお姉さんの隣に腰を下ろすと、体を纏っていた変身スキルを解いてそのまま大きく伸びをする。
「……説明」
「もう少しゆっくりさせてぇ」
路地から飛び出してきた男たちが馬車を通り抜けて駆け出して行ったのを横目に、僕は安堵に欠伸を漏らしたのだった。




