獣姫ちゃんと世界の不思議
「ふぅ」
俺はタオルで汗を拭うと、改めてスキルボードを確認する。
スキルポイントが減っており、さらにその項目には先ほど名付けた『起施流水』があった。
そしてそれとは別枠に、いくつかのスキルが増えており首を傾げる。
俺はその覚えのないスキルに意識をやると、そこには『風受け』『空眼』『水面流れ』といったスキルがあり、それぞれの説明と効果が書かれていた。
これらのスキルは所謂パッシブスキル――俺が使用しなくとも常時発動しているスキルで、『風受け』の効果は小さな衝撃にも体が反応するというもので、『空眼』は体や筋肉の微妙な動きで相手の動きが読めるというもの、『水面流れ』というのは体を柔らかく動かすというものであった。
「う~ん……あっそういうことか」
多分、俺が名付けた『起施流水』はこれらのスキルで成り立っているんだ。俺が作ったスキルだけれど、この世界に在るいくつものスキルを参照し、最も近い元からあるスキルを強制的に当てはめ、作り出されたスキルに効果を付け足したんだ。
現に俺が作ったスキルのはずなのに、このスキルには概要がある。このスキルはアクティブスキル、つまり俺が使用しなければ発動しない。
効果は一定間のAG上昇、回避動作の補助。
なるほど、スキルはこうやって生み出されるわけか。
「姫様、お見事でしたぞ! じいも鼻が高いでございます」
「ありがとう。でもいきなり姫に剣を向けさせるのはどうかと思うよ」
「姫の成長のためでございます」
それには確かに感謝なんだけれど、中々に過激だ。
このジジイ実はプレイヤーじゃないだろうか? クラスメイトだったら少し恥ずかしい。
リョカからも言われていたけれど、ゲームにはマナー――守るべき規則があり、その中の1つに他プレイヤーを詮索しないというものがある。
確かに大事だ。こんな様、俺の剣や他の友だちにはあまり見せたくはない。
もちろん出会って同意の上であるのなら素性を明かし、行動を共にしてもいいとは言われているけれど、プレイヤーの名前も表示されるわけでもなし、相手のステータスが見えるわけでもなし、見つけ出すのは骨だろう。
するとジイが頷き、なにか1人で納得しており、俺は首を傾げる。
「姫、姫も成長し、そろそろこの国の業務に携わる頃合いなのでしょう」
「え? まだ3週間だよ――」
「早速国王陛下に報告しなければ――いやっ! その前に姫の騎士を選ばねば――おい! すぐにあの騎士を連れてきてくれ! この間の選抜戦で優勝した彼女、彼女なら姫の護衛騎士たる実力だろう」
「え? いやそれ俺――私知らない」
「待っていてください姫様! すぐに連れてきますぞ!」
「話聞いて――」
「行くぞお前たちぃぃ!」
ジイの号令に、騎士たちが沸き立ち駆け出して行った。
俺は1人ポツンと残され、呆然とするのであった。




