魔王ちゃんと飛び出せ異界ジャンプ
「……まさか他世界でVRMMOを作っちまう馬鹿がいるとは思いもしなかったわよ」
「まあ言うても、架空の。だけれどね。ラノベとかアニメでの所謂VRMMO――まるでゲームの中に入ったような……って言うのをこっちでも再現しただけだからね」
「設定によっては脳にプラグを差し込む。とかだものね。それをお前は別の方法で実現させたんでしょ?」
「まあ魂撃ちだよね」
「ウソだろ、俺らこれで遊んでるとき魂飛ばされてんの?」
学園での説明を終え、僕たちは揃って寮の部屋に帰ってきたところで、僕とミーシャ、ルナちゃんとアヤメちゃんがゴーグルを持って各々が楽な体勢を取っていた。
「説明書にも書いてあるけれど、ゴーグルのスイッチを押した後、スキルを使用――その際に発現した加護を通して魂に関与、ゴーグル自体がパスになっているから、そのまま僕が用意した世界へひとっ飛び。簡単に原理はこんな感じ」
「……まじで誰にでも世界渡りをさせてんのかよ」
「そう言ったでしょ?」
げんなりとしているアヤメちゃんだったけれど、珍しくルナちゃんが呆けており、僕は目を向ける。
「わたくしの知らない間にとんでもないものが生成されていました。しかももうっ、テルネったら」
「率先して魔王どもに俺たちのあれこれを喋っていたわよ」
「悪用しないから許してあげて――というかミーシャなんか静かだね、気になることでもあった?」
チラとミーシャを見ると、説明書を熟読しており、僕が意識を向けると目を閉じて説明書を閉じ、大きく自信満々に頷いた。
「ん――なんとかなりそう」
「それならよかったよ。それでどうする? 集合場所とか決めとく?」
「いい、なんかしてれば適当に集まるでしょ。あたしはまず、体を鍛えてステータスを上げるわ」
「戦うことしか考えてねえなこいつ――まあそれは良いんだけれど、ミーシャなんてキャラクリ適当にしそうだから、とりあえずお任せにしておきな。そうすれば設定とか、入り込んだ人物の恩恵とかわかりやすく示してくれるからさ」
「じゃあそうする」
「ルナもそうしとけ~、お前凝りそうだし、長くなりそうだからサクッと決めとけ。俺は作っちゃうけれどね」
「僕もそうする。可愛い子にしないと――あっ、言うの忘れてた。場合によっては性別も変わるから気を付けてね」
さっきみんなに説明したっけっかな? と、僕は先ほどの出来事を思い出すのだけれど、今の段階で性別なんてどちらでもいいかと頭の隅に追いやる。
どんな姿だろうとも楽しんでくれるでしょう。一応チュートリアルでもキャラになり切ってのRP――ロールプレイも推奨しているし、それぞれがそれぞれの楽しみを見つけてくれればうれしいな。
「それよかリョカ、一応RPGって括りでいいの? 戦闘もあるのよね?」
「あるある。というかそれメイン。一応イベントの中で職業を選べるんだけれど、主には自分の身1つだと思ってくれればいいよ。気になることは中で聞いて。きっと答えてくれるよ」
みんながそれぞれ準備を終わらせたから、僕たちはみんなの視界に入る箇所でゴーグルに手を伸ばした。
「さっ、不安もあるかもしれないけれど、まずは飛び込んでみよう。僕が作ったものだよ、怖いことなんてありはしないからさ」
「まっ、そこは信用しているわよ」
そう言ってアヤメちゃんが最初に乗り込んだ。
彼女がスキルを使用した瞬間、まるで糸が切れたかのようにその場で寝息を上げ、まるで眠っているようにソファーに体を預けた。
「これは中々、テルネではないですけれど興味深いです。それではわたくしも先に行っていますね」
次にルナちゃんがアヤメちゃんと同じように体から力を抜いた。
僕はミーシャと顔を見合わすと頷きあい、2人をベッドへと運ぶ。
「横になってた方が安全だからね。それじゃあ僕らも行こうか」
「ん――リョカ」
「ん~?」
「ちゃんと気晴らししてくるわ」
「……うん、夕飯時には一度声かけるから夢中になり過ぎないようにね」
「ジブリッドの商品よ」
ミーシャが小さく笑い、そんなことを言いながら加護を通り箱庭の世界に飛び込んでいった。
僕も目を閉じ、ゴーグルをかけ、そしてスキルを発動させる――。
「『踵が鳴す世界に福音を――さあ踏み鳴らせ讃美歌』」




