魔王ちゃんと商人会議
『お前はまた、突拍子もないものを作って』
『中々な大作でしょ? それでお父様から見てこの商品はどう? そっちの人にもテストさせたんだよね?』
『ああ、バイツロンド殿にリーンが押し付けてた』
『人選よ……』
僕は今星神様を通してグエングリッターにいるお父様と連絡を取り合っており、お手軽携帯電話と化したフィムちゃんを撫でながら、お父様に送った鍵の使用感について尋ねていた。
しかしこの携帯電話、本当に撫で心地が良いな。この感触のために用がなくとも向こうの人たちに電話したいほどだ。
『リョカ、あまり星神様に無礼を働くなよ』
『何のことですかにゃぁ? お父様の傍にだってテッドちゃんいるでしょ、気持ちわかるでしょ?』
『そういうことじゃなくて――』
「テッドは今、ジークランスおじさまの膝に収まっていますよ」
『ほれ見たことか!』
『うるさいな。この体勢のほうがテッド様の負担が少ないんだよ』
呆れたようなお父様の声に、僕は笑い声を返す。
しかし良いなお父様、僕もテッドちゃん抱っこしたい。フィムちゃんとアリシアちゃんセットで抱っこしたい。むしろ埋まりたい。
『話を戻すぞ。バイツロンド殿やその他数人に協力を仰ぎ、いくつかのデータは取った。またお前のところに送るから、ルナに頼んでおいてくれ』
『あいあ~い』
ルナちゃんのお友だち召喚――『我こそ月に乞う』を駆使して、重要書類などをお父様とやり取りしており、ジブリッド家総出でこのプロジェクトを回しているのである。
『ところでリョカ、これはすぐに売り出すのか?』
『う~ん、売り出す前にベータ版として何人かに遊んでもらいたいんだよねぇ――それはこっちでやっちゃうんだけれど、一応スピカたちにも送っておくから、やりたそうにしてたら説明してあげて』
『わかった。しかしこれは面白いな、死んでも目を覚ますだけ。ペナルティーはあるみたいだが、気を付けていればそれなりに気にする必要はない。しかも時間の流れも違く、こちらでの影響もほとんどない。さらにセーフティーとしてこちらへの安全を考慮されている』
『でしょ~』
僕が胸を張っていると、しかしお父様が小さく息を吐いた。
『だがお前にしか作れん』
『ぐっ』
『お前これ1つにどれだけの加護が使われている? およそ材料費だけ見ればお前からしたらそんなにかかってはいないだろう。だがそれを一般の職人が作った時、値段はどれだけになる? 必要な経費は? 加護は誰に頼む? そもそもお前にしか物に加護を付与できる人間はいないだろう。出来るとしてもヘリオス先生やアンデルセン殿レベルのマルティエータ―が必要になるだろう。一般で売り出せるか馬鹿者』
『ぐぬぬ――』
『まあ売り出すというのなら止めはしないがな。一応その辺りのことも考えているんだろう?』
『――ま~ね。これに関して言うのならお父様――というよりジブリッドが補償するのは外側だけでいい。加護やらその他やらは人と繋がった鍵という体さえあればいくらでも替えは利くからね。いいお父様、この商品に関して言うのなら大事なのはこの商品を使ったという結果だけ。僕はそこの繋がりに加護を落とし込んだ』
『……女神さま関連のあれこれはお前に任せるよ。長くプレイしたとしても警告が出るようだし、外にある本人にも守護がかかっているしで、文句はない』
『それじゃあ――』
『良いだろう、お前のテスト次第だが、ジブリッドで売り出すように調整する』
『やったっ』
『あああと、強いて言うのならこのゲームの解説をどうするかなのだが』
『それについても心配しないで、チュートリアル、その他説明は中でやっちゃうから。女神さまたちの目には映らないけれど、一応管理者権限としてプレイヤーを見渡せるようにそっちにはこっちのことがわかるようにしておくよ。その道具もお父様の方に送っておくね』
『わかった。それじゃあリョカ、俺たちも近い内にそちらに帰るが、それまで頼むな』
『うん、お父さまもお母さまも、少しはのんびりしてから帰っておいで。それじゃあまたね』
『ああ』
お父様との神託を切った僕はフィムちゃんに礼を言い、大きく伸びをすると呆けた顔をしている女神さまたちに目をやった。
「いや相変わらず商人だなお前らは」
「そりゃあね」
「けんど俺の知らないワードが続々と出ていたんだが、え? 何お前、加護の安売りしてんの?」
僕は首を傾げ、ルナちゃんとアヤメちゃんの間でどや顔極めてる叡智神様に手のひらを向けた。
彼女の提案ですが?
「――」
「――」
「いった! 痛い痛いですよ2人とも! やめ、止めてください!」
ルナちゃんとアヤメちゃんに頭を引っぱたかれているテルネちゃんを横目に、僕はヴィヴィラ様に目をやった。
「いやぁ、なんか久々に仕事した気分だったよ」
「ヴィーラずっとサボってたですもんね」
「……サボり?」
「なにかなフィム、文句あるかい?」
「文句しかないですっ」
「君も随分と素直になったんじゃあないかい? ん? どんな文句か言ってみるといい」
ヴィヴィラ様に頬っぺたもにもにされているフィムちゃんが楽しそうに体をよじらせており、前に襲われた云々はすでに気にしていないようだった。
「あっヴィヴィラ様、一応お願い通りに弄っておいたので飛び込む時はジンギくんと一緒でお願いしますね」
「……ああうん、ありがとうねリョカちゃん」
「口から血が出ましたよ」
「……報酬をもらう権利くらいあると思うの」
そっぽ向くヴィヴィラ様に鼻息が荒くなる僕だけれど、今はやぼったいことは言わないでおこうと決め、僕はもう少し忙しくなる数日に思考を馳せるのだった。




