魔王ちゃんと魂を壊す真意
「よぉ~しっ出来たぞ☆」
「……笑顔で拷問器具作ってんじゃないわよ」
「だってよアヤメちゃんっ! 僕は、僕は――」
学園の授業も終わり、僕とアヤメちゃんは帰路に着き、寮に戻ってきている。
そこでミーシャがやっとルナちゃんの加護を解放してくれたから視界が通るようになったのだけれど、その時見た映像が星神様と魂壊の魔王とのやり取りで、それを笑顔で眺めていた僕は、ルナちゃんの言う通りにキツいのを生成しており、それを見ていたアヤメちゃんが深いため息をついていた。
「なんなんだあのイチャつき! くそったれぇ!」
「お前はミーシャと違って感情の幅が広いから見ている分には楽しいわね」
「そんな冷静に! アヤメちゃん! 神獣様! ケモ神様――」
「ケモ神って呼ぶな」
「あの2人はどんな関係なんですか!」
「あ~……」
いくら何でも距離が近すぎる。
そもそも最初の時もそうだったけれど、ミルドがやったことに対して星神様からの罰が軽すぎだった。
そりゃあ女神さまが人に罰を与えることはしないだろう。けれどそれにしたってもう少し恨み節の1つでも言葉になるはずなのに、フィムちゃんはミルドに関して何も提言していない。
ミルドが現役の時に何かあったのだろうかと神獣様を頼っているのだけれど、そのアヤメちゃんが頭を掻いていた。
「すまん知らん」
「え? なんで――あっ、またお出かけ中でした?」
「いや違う。エクリプスエイドの時もそうなんだけれど、フィムって実は隠し事が多いのよ」
「そうなんですか?」
素直な女神さまだと思うのだけれど、別の面があるのだろうか。
「ほら前にグエングリッターにいた時、俺とルナが言ってたわよね、フィムはよく寝るって」
「そういえば――ん?」
「おかしいでしょ? あいつ別に眠るのが好きなわけじゃないのよ」
僕たちが出会ってからの話になるけれど、フィムちゃんが眠そうにしているのはみたことがない。
うちに泊まった時もたくさん遊んで、夜になったら一般的な時間に眠りについた。
つまり女神さまたちの前では眠っていたというわけだ。
狸寝入り? それとも眠ってしまうほど忙しくしていた?
「そういやぁ、特にあいつが眠っているって印象が強かったのは、確かにミルドが魔王になる前で、極星として活躍していた時だったわね」
「……ミルドってどんな極星だったんですか?」
「ギルド『星に瞬く正義の秤』今のキョウカんところの前身みたいなもんだ。ミルドはそこのギルドマスターとして、女神に仇成す不穏分子を討伐していたのよ」
「は?」
まったくイメージがわかない。
いやあいつ魔王だぞ。それにやっていたことが女神さまたちを守護するギルド――待って待って。じゃあ何か、あいつ実は正義の味方だったのか? なんであんな拗れてるんだ?
「言いたいことはわかる。でもね、俺が最初のころにミルドに抱いた印象は、お前やフェルミナに近かったわよ」
「敬虔なる信徒?」
「最初はね。まああの頃からあんな感じで様子はおかしかったし、フィムとの距離も確かに近かったわ。自信家だし、ナルシストだし――でも女神に敬愛を確かにもっていたわ。あんなにフィムのことが大好きとは思わなかったけれど」
果然わからなくなってきた。
魂壊の魔王は何で魔王になって、なんで星神様に仇を成し、そしてあんなことを引き起こしたのか。
「300年程前か。アリシアがやらかす前に活躍してて、その数十年後にアリシアがやらかしてミルドが魔王になって」
「ん~? アリシアちゃんの後にミルドが魔王になったの?」
「ああ、だからこっちはてんやわんやよ」
「ん~……」
『リョカ』
僕が考え込んでいると、またどこからか声が聞こえる。
これは――メル様か。
『あの男も哀れなのです――』
『いやお前突然割って入ってきて何しれっと混ざってるのよ』
『……リョカ、あなたにはそういう感覚が薄いかもしれませんが、魔王になるというのは一筋縄ではいきません。それがましてや意図的ともなると並大抵の感情では足りないのです』
『意図的って――』
『ミルド=エルバース、あの男はいつも間が抜けている。いつも想定外を起こす……賢い部類ではあるのですが、ことフィムに関してはどういうわけか――いえ、から回ってしまい、そしてやらかすのです』
『いうてお前、やらかしが本当にデカいのよ。わざとじゃないけどごめんね~。って言う段階はとっくに過ぎ去ってるのよ』
『ええ、そうですね。でも彼にはそれしかなかった。それを選ぶしかなかった。それを選んでどうなるのかの見通しが甘かった。本当にこれだけなのですよ』
『魔王になるべきじゃないって言うのはよくわかりました』
『まあ、そういうわけです。これからもやらかすでしょうが、その時は力になってあげてくださいね』
『あっはい』
『では私は――』
『いやお前言うだけ言って何しに――おいちょっと!』
メル様の気配が消え、僕とアヤメちゃんは顔を見合わすのだった。




