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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
56章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、振り返り彩雪月花。

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聖女ちゃんと満天の月

「……」



 目を開けて、体を起こした。

 朝に一度起きたのだけれど、リョカとアヤメに今日は学園を休んでゆっくりしておけと言われ、所謂二度寝をしたのだけれど、普段……というか二度寝の経験が記憶を探ってもなく、どうやって寝ようかと目をつぶって考えている内にいつのまにか寝ていたらしく、部屋に置かれているリョカが作った時計に目をやると、起きてから3時間ほど経っており、起きるにしては遅いし、二度寝にしては寝なさすぎなのかすらの判断もできない。



 起こした体で首を動かして部屋を見渡すのだけれど、部屋に置いてある姿見が目に入り、だるい体を起き上がらせて引きずって、鏡で自身の体を見るのだけれど……。



「……ひどいわね」



 髪はボサボサ、目つきも普段より悪く、二度寝の際に着替え途中だったからか、パジャマを着なおすのも面倒で、適当な服を掴んで着ていたのだけれど、それはアヤメがふざけて三角座りをして襟に膝をもってきて、巨乳。とかって遊んでブカブカになったTシャツを着て寝たのだけれど、そのTシャツの襟口は片方の肩にずり落ちており、一体どんな寝方をしたのかと頭が痛くなる。



 それに下を穿くのも面倒で下着しか穿いておらず、リョカのTシャツだからかあたしには大きくて、Tシャツの裾がちょうど下着を隠してくれており、まあいいかと頬をかく。



 あたしは重い足取りで部屋から出て、普段リョカと一緒に食事をとるダイニングへと向かう。

 あたしとリョカの部屋も随分と様変わりした。

 学園の寮だから最初は別々だったのだけれど、リョカが色々と作れるようになってから、あたしが部屋のキッチンを爆発させたこととルナとアヤメがやってきたのをきっかけにあたしたちの部屋はとんでもリフォームされており、今では4人で一緒に住んでおり、部屋もそれぞれある。

 けれど食事をする場所とキッチンとお風呂は1つで、基本的にあたしたちは一緒になることが多い部屋だ。



 そんなダイニングに足を運ぶと、どういうわけかいい匂いがしており、あたしは扉を開けてそこに入る。



「あっ、ミーシャさんおはようございます」



「……ん、おはよ」



 そこでは月神がポニーテールを揺らしながら、制服の上からエプロンをかけて甲斐甲斐しく料理を作っていた。



「ってミーシャさん酷い格好、顔を洗ってきてくださいね」



「ん」



 ルナに言われるがまま洗面所で顔を洗い、少しさっぱりした頭で改めてダイニングの席に腰を下ろす。



「ルナも休み?」



「はい、リョカさんから休むようにと。でももう制服に着替えた後だったので、とりあえず着たままでいます」



「そう……あたしも起きていれば良かったわ。二度寝って体がだるくなるのね」



「アヤメに聞かせてあげたい言葉です。さっぱり目のご飯にしておいてよかったです。食べられます、よね?」



 この月神に上目遣いで尋ねられて、食べられませんなどとは言えまい。

 あたしは微笑みを返すと、朝食を食べる旨をルナに伝えた。



 よかったと話すルナが上機嫌に朝食を皿に盛る。

 リョカは比較的にどんな時でもしっかりとしたものを食べさせようとしてくる。朝食はパンよりもお米派で、おかゆの時もあるけれど、基本的には米と主菜副菜の一汁三菜、といったかしら、それを徹底している。

 けれどルナはスープとサラダ、食べられるなら。と、柔らかい小さめのパンを用意してくれている。それと一応あたしが食べられるかを気にしながら、自分のところにあるオムレツを半分にしており、こちらを窺っていた。



「卵はあんたが食べなさい。あたしはこれで十分よ」



「美味しくできましたよ?」



 正面に座るルナが合わせた手を口の前に立てて首を傾げながら、褒めてほしいとでもいうような甘えた顔を向けてくる。

 本当にこの月神は、挙動が銀色に似てきた。



 あたしはルナを撫でながら一口オムレツをもらって、美味しいとこの子に伝えて朝食を食べ始める。



「ミーシャさんは今日どのように過ごしますか? だらだらする。は苦手ですよね?」



「ええ、このままだと体が腐りそう。どうしようかしら、特にやることもないのよね」



 するとルナが見てわかるほどそわそわし始めたから、目線をやってみる。すると観念したのか、途端に瞳を輝かせ、キッチンまで脚を進ませ、そこから木編みのバスケットを持ってきた。



「良かったらピクニック、行きませんか?」



「……あたし、気を遣われてる?」



「ん~――」



 すると人差し指を唇に添えて顔を逸らして考え込みながら、可愛らしい鳴き声を上げているルナが、すぐにあたしに目を向け咲いたような笑顔をこちらに向けると、首を横に振った。



「この間、ミーシャさんとせっかく2人きりで過ごせると思ったのに、邪魔が入ってしまったので、リベンジを。と」



 そう言うことにしておこう。そう言うことなのだろう。

 あたしは肩を竦め、妹らしく甘えん坊オーラ増し増しなルナに頷き返す。



「それじゃあお願いするわ。着替え……どうしようかしら、この格好楽なのよね」



「そんな格好じゃお外に出しません。わたくしが選んでいいですか?」



「……ルナに?」



「嫌そうですね」



 ルナはリョカよりも華やかな衣装を好んでいる。もちろん派手な意味の華やかさではなく、落ち着いた感じの静かな服装だ。

 リョカみたいな男装に近い格好ならあたしもまだ耐えられるけれど、ルナは多分、女の子らしい服を選ぶだろう。



 すると小さく膨れていたルナがあたしの手を取って真っ直ぐに見上げてきた。



「お姉ちゃんが可愛く着飾っている姿を見たいです」



「……」



 誰に影響を受けたのか一目でわかるおねだりの仕方に、あたしはため息をついた。



「わかったわかった、それもあんたに任せるわ」



「やったっお揃いコーデですっ」



 何か勝手に決まったみたいだけれど、もうここは諦めるしかないだろう。

 本当に、この子たちには随分と甘くなったな。と、あたしは朝食を再開するのだった。

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