魔王ちゃんと叡智に授ける電子の知識
「おらぁ!」
「全力じゃないですかぁやだぁ!」
「拙者実はもう寝たいでござるよ! 修行中に援軍と突然言われて追い出され、そのまま寝ずに強行軍で間に合わせたでござるから、そろそろ休みたいでござる!」
「オルタ、そんな不健康な生活しちゃだめだよ。睡眠はちゃんととらないと――というわけでタクト、変わって」
「いやですぜい! ここの最前線で応援してやるですぜい! 気張っていけ!」
久々にそろったオタクセを眺めながら、ガイルが最初から聖剣や僕の福音を使用して全力全開で勇者とその剣に殴り掛かるのを呆れていると、隣にひょいと座る叡智に女神さまに意識をやる。
「それでセルネのあれはどういうことでしょうか?」
「お前はこういう時に真っ先に湧くわね」
「知らない知識でしたので」
まあ気になるだろうとは思っていたから、テルネちゃん用に言語化はしている。ただ理解できるかはちょっとわからないために、そこはアヤメちゃんに補ってもらおう。
「え~っとですね、これも世界渡りの応用ですね」
「と、いいますと?」
「正直、確信はないのでおよそそうだろうっていう仮説になっちゃうんですが、セルネくんは僕の信仰を使っている。でも私自身はあっちの人間です、信仰もあっちに沿ったものになる。これが前提」
「ええ、それはわかります。それがどうしてスキル改変に、それどころかセルネの信仰が違うものになるのですか? セルネはこちらの人間です」
「前にアヤメちゃんも言っていたんですが、私の世界では月と獣って親和性が高いんですよ。月に獣の信仰があるくらいには私の世界では有名なお話があるんです。で、僕も当然月を想うとそれを思い出します。このせいでセルネくんに獣っぽい月の信仰が流れます」
「そのお話も気になりますね、あとで教えてください」
「はい、後でソフィアがいる時にでも――それで、ここからが仮説になるんですが、多分セルネくん、もし私の世界で勇者のギフトを持っていたら。が適応されています」
「……なぜ?」
「本来ならありえないことですが、向こうにいた僕がギフトを持っている。この結論があるから、世界も僕とつながりの深いセルネくんのギフトを向こうの情報ごと取り込んだからだと思われます」
「なるほど、それでセルネのギフトが変わったわけですね」
というか、多分ミーシャもとっくに――。
僕の影響力はすごいなぁ。
「お前の周りの人間が変に力をつけるのもわかるわ。多分お前の信仰に影響された全員に適応されてるでしょ」
「……およそ」
「そういうことですか。ソフィア然り、ミーシャさん然り、ジンギ然り、それとランファもですね」
元々だけれど、ソフィアとジンギくんも影響を受けていた。だからあの子たちのギフト、というかスキルは少し変わったものになっていたんだと思う。
今回はセルネくんのように僕からの信仰でギフトを運用しているから、わかりやすく変化しただけなのだろう。
影響力をもっと考えて行動しなければと自戒するのだけれど、そんな僕を見ていたテルネちゃんが何か聞きたそうにしていた。
「ところで、そのりーじょんこーどとはなんですか?」
「ああ、リージョンコード――所謂、その場所に適した内容に変える。というものですね」
「――?」
僕はテルネちゃんを抱き上げて膝に乗せると、両手にルナちゃんを模倣したぬいぐるみとテルネちゃんを模倣したぬいぐるみを作り出した。
「ある国がルナちゃんを絶対神である書物を作りました」
「――? ええ」
「それを全国で売りに出します。けれどある国ではテルネちゃんが絶対神です、その国にルナちゃんが絶対神であるという書物を出してはいさかいが起きるかもしれません。どうしますか?」
「どうって……内容を変える。ですか?」
「はい、その絶対神をテルネちゃんに変えて売ります。これがリージョンコード、地域性の高い文化、情報を取り込んで販売する。というものです」
「なるほど」
「まあわかりやすく言うとですけれどね。本来はもっと規格とかの話になるのですけれど、それはこっちには必要ないですからね」
「電子機器の話だからな。こっちでは再生できるけれど、あっちでは再生できない。だから再生するためにあっちに合わせた規格で販売しよう。ってだけなんだけれどね」
「販売規制の話をわかりやすくって言っても、こっちでは基本的に生ものですからね」
「そうそう、必要がないのよね」
僕とアヤメちゃんでうんうん頷いていると、テルネちゃんが小さく膨れており、僕はそっと頭を差し出すのだった。




