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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
56章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、振り返り彩雪月花。

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魔王ちゃんと母の試練を受けた者

「オルタっ!」



「タクトっ!」



 ガシッと抱き合う2人を僕は学園の教室で眺めており、男同士の軽いノリに頬を綻ばせているなう。



 昨日ミーシャたちが帰ってきて、そのままいつもの集まりで宴会のような食事会を終え、こうして今日は学園に来ているのだけれど、流石に昨日の今日でミーシャとルナちゃんを登校させるのも申し訳なかったから今日は休んでもらい、今教室にはいない。



 しかしセルネくんとクレインくんは普通に登校しており、オルタくんとタクトくんの抱擁を、うんうんと頷きながら見守っていた。



 しかし……はて、なにか違和感が――。



「あれ? オルタくん太った?」



「リョカ様、オルタは元々太っているですぜい」



「え、いやそうじゃなくて」



 昨日の戦闘を見ていなかったタクトくんはその変化に気が付いておらず、頼みの綱のセルネくんとクレインくんは、タクトくんから体を離したオルタくんのお腹をトトトトト。と連打していた。



 昨日はブレイドみたいな形をしていたくせに、今日は普段から見慣れているオルタくんに戻っていた。



「やっぱりオルタのお腹はこれじゃないと」



「これこそ不健康そうで健康なお腹だよっ」



 オルタくんのお腹を堪能している2人だったけれど、そのオルタくんが笑みを浮かべ、セルネくんとクレインくんの頭を鷲づかみにして僕に目をくれた。



「あいだだだだ」



「いたいいたいいたい」



「リョカ様、これも一応百華でござるよ」



「う~んと……所謂パンプアップかなぁ?」



「ぱん?」



 オルタくんが首を傾げると、僕の隣でウトウトしていたアヤメちゃんが、オルタくんの変化に目を覚ましたのか興味深そうに話に入ってきた。



「パンプアップって血液とか水分が筋肉にたまって大きくなることでしょ? でもこいつ、明らかに筋肉量が増えてたわよ」



「いや、というか――」



 僕はそっとオルタくんの体に触れるのだけれど……どうにもこの感じ、私が向こうにいた時の話になるのだけれど、筋肉のつき方がこう、あれだ、あれみたい。



「力士みたいな筋肉のつけ方してるな」



「マジか、どれどれ――」



 僕とアヤメちゃんの2人でオルタくんのお腹を触っていると、当の本人は照れたように頭を掻いており、僕は謝罪を1つ。



「っと、ごめんごめん。筋肉を脂肪で覆っているってこと」



「ほんとだ。俺、結構相撲好きだったから見てたんだけれど、そんな感じするわね。また妙な強化を」



「百華ってことは加護の直接使用だな。うんでオルタくんの加護はお母さまと同じってことでメル様――血管を凍結させて絞って無理やり筋肉を表に出してる? いや、もっと概念的な絞り方だなこれ」



「あ~……贅肉を終わらせて、ただの肉塊に筋肉から始めさせているな」



「また無茶なことを」



 一瞬で能力を丸裸にされたことでオルタくんが苦笑いを浮かべたのだけれど、すぐに遠くを見つめ、瞳から光が失せて口を開いた。



「……こんな無茶、無茶に入らないでござるよ。むしろこれをしなければ死んでいたでござる」



「うん、本当に、うちの母がごめんね」



 どんだけきつい修業をしたんだと慄くのだけれど、よく考えたらあの人、まだ10にも満たないロリリョカちゃんを魔物が生息している森に高所から突き落とし、生き残って帰ってきなさいとかって無茶ぶりをしたお母さまだったことを思い出す。



 やはり今度ちゃんとお母さまに文句を言おうと僕は心に決めたのだった。

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