勇者くんと動き出す聖都
「ねえクレイン、なんか勇者の数増えてない?」
「……うん、俺もそう思う。急いだほうが良いかもしれない」
神殿のあちこちに侵入し、リョカから、どこかに行くときは持って行きなと学園に置かれていたカメラと呼ばれる道具で証拠を撮影して回っていると、そこの忍び込んだ部屋の一角でふと神殿内の人の気配の割合が勇者に傾いていることに気が付いた。
「クレイン、魔狩りの勇者のこと見張ってくれてたよね、怪我の具合はどう?」
「……もうほぼ回復してる。俺もあまり強くやってないから結構早かったみたい」
「これヤバいかな。あいつら、どこに行こうとしてると思う?」
「当然――」
俺もクレインもその身に潜む圧をさらに強める。
ここの勇者たちがどこに行くかなんてわかり切ったことだ。この間の世界を揺るがすほどの脅威――リョカ=ジブリッド。
「すぐにミーシャのところに行こう。集まりきる前に大聖女とも協力してこの騒ぎを止めないと――っ」
「――っ」
俺とクレインは同じ瞬間に近くの窓から飛退いた。
何かが飛んでくる気配――の前に俺たちにぶつけられた戦闘圧。突然窓ガラスが割れ、部屋に小包が投げ込まれた。
俺とクレインで身を隠しつつ、すぐに外の様子をうかがうのだけれど、すでに人影はなく、俺たちは投げ込まれた包みに目をやった。
そして俺は鼻を鳴らしながら屈んで包みに近づく。
「匂い……は、なんだこれ、無理やり消されたような感じ? 危険物――ぽくもない。クレインはどう思う?」
「……開けてもいいんじゃないかな? これもしかしてだけれど――いや、今はいいや。俺が開けるよ」
そう言ってクレインは包みを雑に開けてくれるのだけれど、中には手紙が2通入っており、その一通をクレインが読み上げる。
「聖都に向かう100ほどの勇者、聖騎士、その他。気を付けたし――随分短い手紙で。いつからこんな素っ気なくなったんだか」
「クレイン?」
「ああごめんごめん」
クレインには手紙の主が誰だかわかっているような素振りがあり、俺は首を傾げるのだけれど、彼はいつも通りのさわやかな笑顔で俺の頭を撫でてくれる。
「ここに戦力を集める気みたいだね。もう一通を読むね――緊急につき、こちらは私たちが相手をします。少し数を減らすので、そちらは主要の魔狩りの勇者含めた戦力を削ってもらえれば幸いです。なるほどね」
「誰?」
「ああうん、合流してからでいいんじゃないかな? しかしこっちはこっちで随分と強気になったな。うかうかしてられないなぁ」
「――?」
クレインが微笑みを浮かべると、しゃがんでいる俺に手を伸ばした。
「とりあえずこのことをミーシャ様に報告しよう」
「うんっ、それじゃあいつも通り、その他いろんなことは任せた。俺はとりあえず勢いよく突っ込むよ」
「ミーシャ様とガイル師に似てきたんじゃない?」
「じゃあ間違ってないねっ」
「違いない」
俺とクレインは部屋を飛び出し、ミーシャの気配に脚を進ませていくのだった。




