孤海の大聖女様と一人ぼっちの大海
「……」
ああ、本当に嫌になる。
大聖女として力のない私も、それを認めて拗ねている私も、味方でいてくれる相手に八つ当たりしてしまう私にもほとほと愛想が尽きた。
きっと私は、ここに立つ資格などなかったのだろう。
どうして私だったのか、いつもいつも考えてしまう。
このサンディリーデという国では月神様の我儘で聖女という存在が少ない。というよりいなかった。
けれどそれを突如現れたケダモノの聖女――今でこそ神獣様の聖女と呼ばれている彼女だけれど、元々は月神様の聖女であった。
どうして今さら――。
聞いた背景にはあのジブリッドの魔王が関係しているようだけれど、あれほどの才ある聖女、どうしてもっと早く世界に出せなかったのか。
やはり月神様という女神さまは人の世界を勘違いしている。
私は1人になった私室で、見慣れた床の目を目に映しながら部屋にある事務机に脚を進ませ、私が大聖女である唯一の関りに手を伸ばす。
それは潮の香りのする海との繋がり――海中の植物? が石になり、その欠片をペンダントにしたものだ。
私はそれをぎゅっと握り胸に抱く。
私が聖女である唯一の証明。
「私は、この国の人間でありながら月神様に見初められなかった聖女。だからそれを憐れんで、私に力を与えてくれた――」
そう、そもそも私は聖女になんてなれる素質なんてなかったのだろう。そうじゃなければ私は、このサンディリーデという国の出である私は月神様に見初められるはずだ。
でもそうじゃなかった。
月神様はケダモノの聖女を見初められるくらいには世界を見ていたはずなのに、私に才能がなかったから私を選びはしなかった。
だけれどそれを引っ張り上げてくれた。
だからこそ私は聖女でい続けられる。
潮騒が聞こえる。私が最も落ち着く時間――フワと抱きしめられるような感覚に、私は身を委ねる。
《ああミリア、可哀想なミリア――》
光の届かない神域で、吐き出される命の息吹を気泡に変えて私はおちていく。
誰もいない。けれどほのかに感じる命の居場所。
体を覆う水はすべての思考を解かしていき、この大海の一部になる。
《ミリア、ミリア……私だけの信者、私だけの聖女、私だけの――》
「……はい、私だけの、女神様」
手を伸ばせばそこに在る。
私が望めばいつだって包み込んでくれる。
《ねえミリア、ミリアは私を1人にしないよね?》
「はい――」
私の背中に抱き着いて、頬に伸びてくる手に私の手を重ね、私は頷く。
初めから、私と彼女は2人きりでしかないんだ。
《ああミリア、私の可愛い聖女――ずっとずっと、私だけの……ルナにもヒナリアにも、誰にも渡さない》
「――はい、アンディルース様」




