魔王ちゃんとかの者の視線を遮って
「で、どういうことよ」
教室そのままに、僕は重箱から料理を小皿に分け、集まった面々に小皿を配っているとアヤメちゃんが椅子に立てた膝に肘をついて聞いてきた。
「まずはアヤメちゃん、加護は世界の現象と連動している。これは間違いないね?」
「……ええ、女神が加護であり、加護が世界よ」
「つまり繋がりがあるってことだよね?」
「うん」
「アヤメちゃんさ、刑事ドラマとか見たことない? 逆探知って言葉があるんだけれど――」
「それを人が成せるなんて思わねえだろ」
「それで何年シラヌイに苦しめられましたかぁ?」
アヤメちゃんが苦々しい顔を浮かべるのだけれど、すぐに肩を竦ませため息をついた。
そもそも女神さまたちは言葉での情報規制はしいているくせに、世界と密接に繋がっている加護に関してはノーガードだ。
人がそこに届くはずはない。異能力も何もない私の世界ならそれが通じるかもしれないが、その加護の欠片を扱う力を持った人々が基本的なこの世界ではそうもいかない。
その力の一片を扱っているのに、そのものに届かないはずなどない。
要は驕っているのだ。
もちろん強い力を持った女神さまたちがそう思ってしまうのは当然かもだけれど、すごく根本的な話をすると――女神さまは別に強くはない。
「……リョカお前、今何考えてる?」
「――女神さまたちは可愛いなぁって」
「ここまでの実力者が女神の傍についたことはなかったからね、リョカちゃんにはさぞ僕たちがか弱く見えているだろうねぇ」
「僕は絶対に勝てませんし、それはつまり強者なのでは?」
「勇者がゾッとするようなこと言うなよ。つまりお前、自分が強者だって言ってんじゃねえか。まあお前の言うこともわかるな、女神は別に強くねぇ」
「……濁してたんだけど?」
「今さら濁すなよ。アヤメとクオンはともかく、他の女神じゃそもそも戦闘にすらならねえだろ」
「前提に女神さまたちは一部を除いて戦うのが仕事じゃないからね」
ガイルが女神さまたちを見渡すと自身の腕に目を落とし、集中しだした。
いやこれは――。
「以前ミーシャがやってたからな、感覚は何となくわかる」
「俺と初めてあった時ね」
ガイルが信仰――否、勇者というギフトに意識を込めている。
それはおよそ少し前にミーシャが無理やり神獣様の下に魂を、加護を潜り込ませた時のことだ。
今考えたら、あれは相当な問題行為だった。
でも今ならあれを言語化できる。
魂が加護であるのなら、その加護を通して別の加護に干渉するなんて容易い。
スキルという加護の欠片が干渉しあっているのに、加護と加護が干渉できないなんてことはあり得ない。
故に届く――。
「お――? あ~ね……とりあえず俺に加護くれね?」
「ランドに直談判すんな!」
「あらら、ランド、びっくりしてひっくり返ちゃってるよ」
「とまあ、原理はこんな感じ。ね? 誰でも出来るってわけだ。ここまで出来ればあとは女神さまが司っている加護に接続するだけ――あら不思議、視界も世界の謎も何もかも手に入るわけだ。コラそこ! アンデルセンとミルド、無駄な実験はやめなさい」
金色炎の勇者を真似て、同じようなことをしようとする無王と魂壊を止め、僕は女神さまたちに目を向けた。
「で、どうして僕があのホムンクルスにわざわざ女神さまからの干渉を受けない仕様にしたかというとだね、一応あれは僕の世界でしか動かない。だから僕のゲームのNPCを務めてもらうんだけれど……正直、中身を見てもらいたくない人がいるんだよねぇ」
1つ――喉に小骨が刺さったがごとくの違和感を抱えていた。
エンギとの戦いでその可能性に気が付いてしまった。
どうして知っていたのだろうか、こうして一緒に行動を共にするようになって、奴がそれを漏らすなんてことはまずありえない。
他の人物、それを知る人物はそもそもあいつが奪った。
その部下に話を聞いた? それも時間軸が合わない。そうでなければ彼は王都から出ていない。
「……まるで誰かがすでにあたしたちの視界を奪っているように聞こえるね」
「はい、そう言ってますね」
「リョカ、それはまずいことなんだが――いったいどこの大馬鹿者がそんなこと仕出かしてんのか、か弱い俺たちに教えてくれないかしら」
「アヤメちゃん、それにアンデルセン」
「俺? なんだ――」
「バルバトロスの居場所、なんでバレてた?」
「……ああそういうことか。なるほど奴か、あり得ん話ではない」
途端に、女神さま一同の視線が三女様――運命神・ヴィヴィラ様の方角に向けられた。
「加護と密接したどころか、加護そのものが詰まっている女神さまの体、これほど接続しやすいものはないよね」




